【ITニュース解説】Book review - From No to How - How to Get Buy-In and Lead Change
2025年09月06日に「Dev.to」が公開したITニュース「Book review - From No to How - How to Get Buy-In and Lead Change」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
エンジニアが良いアイデアを提案しても「No」と言われる状況を打破する方法を紹介。ソフトウェア開発の考え方を応用し、アイデアの価値を分析したり協力者を見つけたりすることで「どうすれば実現できるか」の議論に導く。周囲の賛同を得て変革を主導するスキルを学べる。(118字)
ITニュース解説
システムエンジニアとして優れた技術力を身につけることは非常に重要だ。しかし、実際の現場では、技術力と同じくらい「アイデアを提案し、周囲の賛同を得て、実現に導く力」が求められる場面が数多く存在する。せっかく業務改善につながる素晴らしいアイデアを思いついても、上司や同僚に提案した際に「前例がない」「今のやり方で問題ない」といった否定的な反応で一蹴されてしまった経験はないだろうか。このような状況は、多くのエンジニアが直面する課題である。こうした「ノー」という壁を乗り越え、どうすれば「どうすればそのアイデアを実現できるか」という建設的な対話へと転換できるかが、エンジニアとしての価値をさらに高める鍵となる。
この課題を解決するための一つの考え方として、システム開発のプロセスである「ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)」を応用する方法がある。SDLCは、要件定義、設計、開発、テストといった一連の流れを体系化したものであり、エンジニアにとっては馴染み深い考え方だ。この論理的なプロセスを、自身のアイデアを推進するためにも活用することができる。具体的には、「計画」「分析」「設計」というステップに分けて、アイデアを具体化し、説得力を持たせる準備を進めていく。
最初のステップは「計画」である。システム開発でプロジェクトの全体像を描くように、アイデア実現のための土台を固める段階だ。まず重要なのは、一人で全てを背負わないことだ。自分のアイデアに共感し、協力してくれそうな仲間を1人から3人ほど見つけることから始める。日頃から変化に対して前向きな姿勢を持っている同僚や、課題意識を共有できる先輩などが候補になるだろう。仲間がいることで、アイデアを客観的に見直す機会が生まれ、精神的な支えにもなる。次に、そのアイデアの魅力を短時間で簡潔に伝えるための準備をする。これは「エレベーターピッチ」とも呼ばれ、忙しい相手にも興味を持ってもらうための重要なスキルだ。何を解決し、どのような価値があるのかを凝縮して語れるようにしておくことで、最初の関門を突破しやすくなる。
次のステップは「分析」だ。システム開発における要件分析と同様に、アイデアを深く掘り下げ、その価値と実現性を客観的な事実で裏付ける段階である。ここで最も重要なのは、アイデアがもたらす「価値」を具体的に示すことだ。例えば「このツールを導入すれば、毎日の定型作業が1時間短縮できる」や「サーバー構成を見直すことで、月々の運用コストを10%削減できる」といった、数値に基づいた具体的なメリットを提示する必要がある。抽象的な理想論だけでは、周囲を納得させることは難しい。その価値を効果的に伝えるために、簡単な試作品やデモ画面といった「概念実証(Proof of Concept)」や、図やグラフを用いたプレゼンテーション資料を作成することも有効だ。実際に動くものや視覚的な資料は、言葉だけの説明よりもはるかに強い説得力を持つ。また、「なぜこのアイデアが必要なのか」という根本的な問いを突き詰めることも欠かせない。「なぜ」を5回繰り返す「5 Whys」のような手法を用いて、現在抱えている問題の根本原因を特定し、自分のアイデアがその根本原因を解決するための最適な手段であることを論理的に説明できるように準備する。
最後のステップは「設計」だ。システム設計で具体的な実装方法を考えるように、アイデアを実現するための具体的な計画を描く段階である。このアイデアを実行に移すためには、どのような技術やスキルが必要か、誰がどのような役割を担うのか、どのくらいの時間や予算が必要になるのか、といった具体的なリソースを洗い出す。この設計が具体的であればあるほど、アイデアが単なる思いつきや空想ではなく、実現可能な計画であることが伝わる。必要なスキルを持つメンバーをリストアップしたり、大まかなスケジュール案を作成したりすることで、提案の信頼性は格段に向上する。
このように、SDLCの考え方を応用し、計画、分析、設計というステップを丁寧に踏むことで、アイデアは単なる思いつきから、説得力のある具体的な提案へと昇華する。優れたエンジニアになるためには、プログラミングやインフラの技術を磨くだけでなく、自分の考えを論理的に整理し、周囲を巻き込みながら物事を前に進めるソフトスキルも不可欠だ。まずは信頼できる身近な人に自分のアイデアを話してみるなど、小さな一歩から始めてみることが、変化を主導できるエンジニアへの道につながるだろう。