【ITニュース解説】Microservices Security: From Fundamentals to Advanced Patterns

2025年09月09日に「Dev.to」が公開したITニュース「Microservices Security: From Fundamentals to Advanced Patterns」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

マイクロサービスは柔軟だが攻撃対象が増えセキュリティが複雑化する。「最小権限」や「多層防御」を基本とし、「決して信頼せず、常に検証する」ゼロトラストの考え方が重要。通信の暗号化やサービスメッシュなどを活用し、サービス間の連携を安全に保つ必要がある。

ITニュース解説

大規模で一体的なシステム(モノリシックアーキテクチャ)を、機能ごとに独立した小さなサービスの集合体(マイクロサービスアーキテクチャ)に分割する開発手法が広く採用されている。この手法は開発の柔軟性を高める一方で、セキュリティ上の課題を増大させる。モノリシックなシステムでは保護すべき対象がアプリケーション、データベース、外部APIなど少数に限定されていたが、マイクロサービスではサービスごとに通信経路やデータベースが存在するため、攻撃を受ける可能性のある箇所(アタックサーフェス)が飛躍的に増加する。しかし、サービスが独立していることで、一つのサービスが侵害されても被害をその範囲に限定できるという利点もある。この複雑な環境で堅牢なセキュリティを実現するには、いくつかの基本原則を理解する必要がある。

セキュリティ設計の根幹をなすのは、「最小権限の原則」「多層防御」「自動化」の三つである。最小権限の原則とは、各サービスに対して、その役割を果たすために必要最小限のアクセス権だけを与える考え方だ。例えば、注文を管理するサービスには注文データへのアクセス権のみを与え、決済情報には一切触れさせないようにする。これにより、万が一注文サービスが攻撃者に乗っ取られても、決済情報への被害拡大を防ぐことができる。次に多層防御とは、単一のセキュリティ対策に依存せず、複数の防御策を重ねて配置するアプローチである。ネットワークレベルでのアクセス制御、サービスレベルでの認証・認可、データそのものの暗号化など、異なる階層で対策を講じることで、一つの防御が破られても次の防御策が攻撃の進行を食い止める。そして自動化は、マイクロサービスのように構成要素が多く複雑なシステムにおいて、人為的なミスを減らし、一貫したセキュリティ設定を維持するために不可欠である。設定をコードとして管理するIaC(Infrastructure as Code)などの技術を用い、セキュリティポリシーの適用や脆弱性の修正(パッチ適用)を自動化することで、迅速かつ正確な対応が可能になる。

優れたセキュリティ体制は、単に攻撃を防ぐ技術だけでなく、脅威の特定からインシデント後の復旧までを見据えた包括的な活動によって構築される。この考え方は、米国立標準技術研究所(NIST)が提唱する「特定」「防御」「検知」「対応」「復旧」の五つの機能に整理されている。「特定」は、自社のシステムにどのような資産があり、どのような脅威に晒されているかを把握する段階である。「防御」は、特定されたリスクに対して、暗号化やアクセス制御といった具体的な保護メカニズムを実装する段階を指す。しかし、完璧な防御は存在しないため、侵入や異常をいち早く見つけ出す「検知」の仕組みが重要となる。そして、インシデントが検知された際には、あらかじめ定められた手順に従って被害を最小限に抑えるための「対応」を行い、最終的にシステムを正常な状態に戻す「復旧」作業へと移行する。復旧後にはインシデントの原因を分析し、再発防止策を講じることで、セキュリティレベルを継続的に向上させていく。

このような包括的なアプローチを実践する上で、現代的なセキュリティモデルである「ゼロトラスト」が重要な指針となる。従来のセキュリティは、社内ネットワークのような「境界の内側」は安全とみなし、外部からのアクセスのみを厳しく制限する考え方が主流だった。しかし、一度境界内部に侵入されると無防備になる弱点があった。ゼロトラストはこれを改め、「決して信頼せず、常に検証する」という原則に立つ。つまり、たとえ内部ネットワークからのアクセスであっても、すべてのリクエストが正当なものであるかを毎回検証するのである。これにより、万が一攻撃者が内部に侵入したとしても、その活動を大幅に制限し、被害の拡大を防ぐことが可能となる。

これらの原則やモデルを具現化するためには、具体的な技術的対策が必要である。まず基本となるのが、ソフトウェアの脆弱性を修正するパッチ適用を迅速かつ継続的に行うことだ。次に、通信相手が本物であることを確認する「認証」と、その相手に何をする権限があるかを制御する「認可」は、アクセス管理の要である。マイクロサービス環境では、認証情報を埋め込んだJWT(JSON Web Token)というデジタルトークンをリクエストに含め、各サービスがそれを検証することで、分散した環境でも効率的に認可を判断する手法が一般的である。また、データ保護も極めて重要であり、サービス間の通信経路上でデータが盗聴されるのを防ぐ「通信中のデータ暗号化(TLS/mTLS)」と、データベースなどに保存されているデータが漏洩しても中身を読まれないようにする「保存データの暗号化」の両方が必要となる。さらに、システムの動作状況をログ、メトリクス、トレースといった情報から継続的に監視する「オブザーバビリティ(可観測性)」を確保することで、セキュリティ上の異常な振る舞いを早期に検知できる。そして、これらの複雑なセキュリティ対策を各サービスに個別に実装する負担を軽減する技術として「サービスメッシュ」がある。これは、サービス間のすべての通信を管理する専用のインフラ層であり、通信の暗号化、認証、アクセス制御といったセキュリティ機能をアプリケーションコードから分離し、一元的に適用することができる。

結論として、マイクロサービスのセキュリティは、単一の特効薬に頼るのではなく、基本原則に基づいた設計思想を持ち、ゼロトラストの考え方を採用しながら、認証・認可、暗号化、監視、そしてサービスメッシュといった複数の技術的対策を組み合わせて多層的に構築することが不可欠なのである。

【ITニュース解説】Microservices Security: From Fundamentals to Advanced Patterns | いっしー@Webエンジニア