Webエンジニア向けプログラミング解説動画をYouTubeで配信中!
▶ チャンネル登録はこちら

【ITニュース解説】Building a Privacy-First Code Formatter: My Architecture Decisions

2025年09月27日に「Dev.to」が公開したITニュース「Building a Privacy-First Code Formatter: My Architecture Decisions」について初心者にもわかりやすく解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

多くのコード整形ツールはコードをサーバーへ送るため、プライバシーリスクがあった。そこでブラウザ内で全ての処理を完結させ、サーバーにデータを送らない新方式を開発。機密性の高いコードも安全に整形できる、プライバシー重視のシステムだ。

ITニュース解説

この記事は、開発者が日々利用する「コードフォーマッター」というツールが抱えるプライバシーの問題と、それを解決するための新しい技術的なアプローチについて解説している。システムエンジニアを目指す初心者にとって、コードフォーマッターはプログラムのコードを自動的に整え、読みやすくする便利なツールとして認識されていることだろう。しかし、その便利なツールの裏側で、どのような情報のやり取りが行われ、どのようなリスクが存在するのかを知ることは、セキュリティ意識の高いエンジニアになる上で非常に重要である。

まず、コードフォーマッターが何をするツールかについて簡単に説明する。これは、プログラマーが書いたソースコードのインデント(字下げ)や空白、改行などを統一し、決められたルールに基づいてコードの見た目を整形するソフトウェアである。これにより、コードの可読性が高まり、チームでの開発において全員が同じスタイルでコードを理解しやすくなる。結果として、バグの発見が容易になったり、開発効率が向上したりするメリットがあるため、多くの開発現場で広く活用されている。

しかし、筆者がこの記事で問題提起しているのは、現在主流となっている多くのコードフォーマッターが、ユーザーが入力したソースコードをインターネット経由で一度、そのツールの提供元の「サーバー」に送信してから、整形処理を行っている点にある。皆さんが業務で書いているコードは、企業秘密や独自の技術、すなわち「プロプライエタリコード」と呼ばれる外部に漏らしてはいけない機密情報を含んでいる場合が非常に多い。このような機密性の高いコードを、外部の第三者が管理するサーバーに送信するということは、その第三者を信頼して大切な情報を預ける行為に他ならない。もしそのサーバーがサイバー攻撃を受けたり、運営者に悪意があったりした場合、皆さんのコードが漏洩したり、不正に利用されたりするリスクがある。筆者は、この点が開発者にとって見過ごせない大きなセキュリティ上の懸念であると述べている。

このような既存のフォーマッターが抱える課題に対し、筆者は「Formatic」という新しいコードフォーマッターの開発を進めており、その根本的な解決策として「クライアントサイドファースト」というアプローチを提案している。クライアントサイドとは、簡単に言えば、ユーザーが利用しているWebブラウザや、個人のPC上で処理が完結することを指す。これに対し、サーバーサイドとは、インターネットの向こう側にある、サービス提供者が管理するサーバーで処理が行われることを意味する。Formaticは、このクライアントサイドファーストの考え方に基づき、コードの整形処理をすべて皆さんのWebブラウザ内で完結させる。これにより、皆さんの大切なコードがインターネットを通じて外部のサーバーに送信されることが一切なくなるため、コードのプライバシーとセキュリティが最大限に保護されることになる。

この「クライアントサイドファースト」を実現するための具体的な技術として、筆者は現在のMVP(Minimum Viable Product:最小限の機能を持つ製品)版のアーキテクチャで「Web Worker」という技術を活用している。Web Workerとは、Webブラウザ上でJavaScriptなどのスクリプトを、ブラウザのメインの処理とは「別の裏側」で実行するための仕組みである。通常のJavaScriptの処理は、画面表示などに関わるメインスレッドで動作するため、重い処理を行うとブラウザが一時的に固まったり、動作が遅くなったりすることがある。しかし、Web Workerを利用すれば、コードの整形のような計算負荷の高い処理を、メインの処理とは独立してバックグラウンドで実行できるため、ブラウザの快適な操作性を保ちながら、効率的に処理を進めることが可能になる。FormaticのMVP版では、「ユーザーが入力したコードがWeb Workerに渡され、Web Workerが整形処理を実行し、整形済みのコードがユーザーに返される」という非常にシンプルな流れで動作する。この処理の過程で、外部のサーバーとの通信は一切発生しない。つまり、「サーバーとの往復」が全くないため、情報漏洩のリスクも完全に排除されることになる。

さらにFormaticは、コードをサーバーに送らないという基本方針に加え、その他の面でもプライバシーと透明性を重視している。例えば、もし将来的にコード整形以外の機能で、外部のサービスと連携する必要が生じたとしても、ユーザーのコードそのものを直接サーバーに送信するのではなく、「セキュアトークンプロキシ」のような仕組みを利用する方針である。セキュアトークンプロキシとは、コードのようなデータの中身を直接送信する代わりに、安全な一時的な認証情報(トークン)だけを代理でやり取りすることで、データ本体の漏洩リスクを防ぐ技術である。これにより、いかなる状況においても、ユーザーの機密コードが外部サーバーに流出する心配がない。また、Formaticは「オープンアーキテクチャ」を採用している。これは、システムの設計や内部の仕組みが公開されており、誰でもその動作原理や実装内容を確認できることを意味する。このような透明性の高さは、本当にコードがサーバーに送信されていないのか、セキュリティ上の問題がないかなどを、開発者コミュニティ全体で検証し、信頼性を高める上で非常に重要な要素となる。

筆者は、このようなクライアントサイドで処理を完結させるアプローチが、将来の「開発者ツール」の主流になる可能性を探っている。もし多くの開発者ツールが、ブラウザ内で安全に動作するようになれば、開発者はプライバシーやセキュリティの懸念を抱くことなく、より自由に、そして安心してツールを利用できるようになるだろう。

記事の最後に、筆者は開発者コミュニティに向けて、この新しいアーキテクチャをどのように改善できるか、どのようなセキュリティ上の懸念に取り組むべきか、共同作業に興味のある人はいないか、そして、プライバシーを重視したオープンソースのコードフォーマッターに貢献したい人はいるか、という問いかけをしている。これは、このプロジェクトが個人の取り組みに留まらず、より多くの開発者の知見と協力を得て、さらに進化していくことを目指していることを示唆している。実際に、MVP版のFormaticは「formatic.xyz」というWebサイトで試すことができ、そのビジョンを実際に体験できる。

システムエンジニアを目指す皆さんにとって、コードフォーマッターのような身近なツールの技術的な仕組みと、そこに潜むセキュリティ・プライバシーの重要性は、今後のキャリアを考える上で非常に重要な視点を提供する。コードの見た目を整えるという一見シンプルな機能の裏側には、このような深い技術的な判断と、ユーザーのプライバシーに対する倫理的な配慮があることを理解することは、より信頼されるソフトウェア開発者になるための第一歩と言える。

関連コンテンツ

関連IT用語