【ITニュース解説】Migrating to React Native's new architecture
2025年09月17日に「Reddit /r/programming」が公開したITニュース「Migrating to React Native's new architecture」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
React Nativeというスマホアプリ開発の仕組みが、新しい設計方法(アーキテクチャ)へ移行する。これは、アプリの動作を速くしたり、開発をもっと効率的にしたりするのが目的だ。これによって、より快適で使いやすいアプリが作れるようになることが期待されている。
ITニュース解説
React Nativeは、Web開発で一般的に使われるJavaScriptというプログラミング言語と、Reactというフレームワークの知識を活用して、iOSとAndroidの両方のスマートフォンアプリを一度に開発できる、非常に人気のある開発ツールだ。通常、iOSアプリはAppleが提供するSwiftやObjective-C、AndroidアプリはGoogleが提供するJavaやKotlinといったそれぞれの環境固有の言語で開発される。しかし、React Nativeを使うと、一つのJavaScriptコードベースから両方のプラットフォームに対応するアプリを開発できるため、開発の手間と時間を大幅に削減できるという大きなメリットがある。システムエンジニアを目指す初心者にとっても、Web開発の知識をモバイルアプリ開発に応用できるため、比較的学習しやすいフレームワークと言えるだろう。
しかし、これまでのReact Nativeのアーキテクチャ(内部構造)には、その特性上、いくつかの課題が存在していた。特に重要なのが「Bridge(ブリッジ)」と呼ばれる通信メカニズムだ。React Nativeで開発されたアプリは、大きく分けて二つの異なる環境で動作している。一つはJavaScriptコードが実行される「JavaScriptスレッド」で、アプリケーションのロジックや状態管理を担当する。もう一つは、実際のユーザーインターフェース(UI)の描画や、スマートフォンのカメラ、GPSといったネイティブ機能へのアクセスを処理する「ネイティブスレッド」だ。従来のアーキテクチャでは、これら二つのスレッドが直接情報をやり取りすることはできず、必ずBridgeという中間層を介していた。JavaScriptスレッドからネイティブ機能を使いたい場合や、ネイティブスレッドにUIの更新を伝えたい場合、すべての情報はJSON形式のメッセージに変換され、このBridgeを通じて非同期に(時間のずれを伴って)やり取りされていたのだ。このメッセージの変換(シリアライズとデシリアライズ)と転送にはオーバーヘッドが発生し、特に大量のデータをやり取りする場合や、非常に高速なUIの更新が求められる場面では、アプリのパフォーマンスが低下する原因となることがあった。これにより、アプリの起動が遅くなったり、UIの操作中にわずかな遅延やカクつきが発生するなど、ユーザー体験に影響を与える可能性があった。
このような課題を根本的に解決し、React Nativeの性能と開発体験を飛躍的に向上させるために、全く新しい「新しいアーキテクチャ」が導入された。この新しいアーキテクチャは、主に「JSI(JavaScript Interface)」、「TurboModules(ターボモジュール)」、「CodeGen(コードジェン)」、そして「Fabric(ファブリック)」という四つの主要な技術要素で構成されている。
まず、Bridgeの役割を大きく変えるのが「JSI」だ。JSIは、JavaScriptエンジンとネイティブコードがC++の層を介して直接通信できる仕組みを提供する。これにより、従来のBridgeのようにJSON形式のメッセージを介した非同期通信ではなく、JavaScriptコードからネイティブコードの関数をまるでJavaScriptの関数を呼び出すかのように、同期的に直接呼び出せるようになる。この直接的な通信により、メッセージの変換や転送にかかるオーバーヘッドが劇的に削減され、より高速で応答性の高いアプリケーションの実現が可能となる。ネイティブ機能へのアクセスもよりスムーズになり、複雑な処理も効率的に実行できるようになるのだ。
次に、「TurboModules」は、ネイティブモジュールの管理と利用方法を改善する。React Nativeでは、スマートフォンのカメラ機能や位置情報サービス、あるいはカスタムのハードウェア連携など、特定のネイティブ機能を利用するために「ネイティブモジュール」と呼ばれる部品を使用する。従来のアーキテクチャでは、アプリの起動時に必要なすべてのネイティブモジュールを読み込むことが多く、これがアプリの起動時間を長くする一因となることがあった。TurboModulesでは、アプリが特定のネイティブモジュールを必要とするその時まで読み込みを遅らせる「遅延読み込み(Lazy Loading)」が可能になる。これにより、アプリの起動時間が短縮されるだけでなく、メモリの使用量も最適化され、全体的なアプリケーションのパフォーマンスが向上する。
「CodeGen」は、JavaScriptコードとネイティブコード間のインターフェース(データのやり取りのルールや関数定義)を自動的に生成するツールだ。従来のアーキテクチャでは、JavaScript側とネイティブ側で、ネイティブモジュールが提供する機能のインターフェース(例えば、どのような名前の関数があり、どのような種類のデータを受け取り、どのような種類のデータを返すか、といった定義)を開発者が手動で記述する必要があった。これは手間がかかるだけでなく、記述ミスによるエラーを引き起こすリスクも伴っていた。CodeGenは、TypeScriptなどの型情報を持つJavaScriptコードから、ネイティブコード向けのインターフェース定義を自動的に生成するため、開発者の負担を大幅に軽減し、コードの整合性と型安全性を向上させる。これにより、異なる言語間での連携がより強固でエラーの少ないものになる。
そして、「Fabric」は、React Nativeの新しいレンダリングシステム、つまりアプリケーションの見た目(UI)を画面に描画する仕組みだ。従来のアーキテクチャでは、UIの描画もBridgeを介して非同期に行われていたため、JavaScriptスレッドが複雑な処理で忙しいときには、UIの更新が遅延し、ユーザーがアプリの動きが「カクつく」と感じることが稀にあった。Fabricでは、JavaScriptスレッドとネイティブスレッドがより密接に連携し、UIの更新プロセスを同期的に、かつ非常に効率的に行えるようになる。これにより、アニメーションやユーザーのタッチジェスチャーといった操作に対するUIの応答性が大幅に向上し、ユーザーにより滑らかで自然な操作体験が提供される。
これらの新しいアーキテクチャへの移行は、React Nativeで開発されるアプリケーションに多くの重要なメリットをもたらす。最も顕著なのは、アプリのパフォーマンスが劇的に向上することだ。アプリの起動速度が速くなり、UIの操作に対する反応がより滑らかになることで、ユーザーは格段に快適にアプリを利用できるようになる。これは、ユーザー体験(UX)の向上に直接結びつく非常に重要な要素だ。また、開発体験の改善も大きなメリットだ。JSIによる直接通信、TurboModulesによる効率的なモジュール管理、CodeGenによるインターフェースの自動生成は、開発者がより効率的に、そしてエラーを少なくして開発を進める助けとなる。さらに、新しいアーキテクチャはReact Nativeの将来的な拡張性を高め、より高性能で複雑なアプリケーションの開発を可能にする強固な基盤となるだろう。
しかしながら、新しいアーキテクチャへの移行は、特に既存のReact Nativeプロジェクトにとっては、いくつかの課題も伴う。これまでに開発された多くのカスタムネイティブモジュールや、Bridgeベースで構築された複雑な連携を持つアプリケーションでは、新しいアーキテクチャに対応するためにコードの改修が必要になることがある。また、開発者はJSIやFabricといった新しい概念やツール、移行方法について学習する必要があるため、一時的な学習コストが発生する可能性もある。そのため、多くのプロジェクトでは、一気に全てを移行するのではなく、段階的に新しいアーキテクチャに対応していく方法が推奨されており、React Nativeの開発コミュニティやチームも、移行を支援するための詳細なドキュメントやツールを提供している。
このように、React Nativeの新しいアーキテクチャは、従来のアーキテクチャが抱えていた性能と開発体験の課題を根本から解決し、フレームワーク自体を次のレベルへと進化させるための非常に重要な取り組みだ。システムエンジニアを目指す初心者にとっても、この新しいアーキテクチャの登場と移行の動向を理解することは、今後のモバイルアプリ開発のトレンドを把握し、より高性能で効率的なアプリケーションを開発するための重要な一歩となることだろう。