GPRS(ジーピーアールエス)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

GPRS(ジーピーアールエス)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

ジーピーアールエス (ジーピーエス)

英語表記

GPRS (ジーピーアールエス)

用語解説

GPRSは、General Packet Radio Serviceの略称であり、第2世代移動通信システム(2G)であるGSM(Global System for Mobile Communications)のデータ通信機能を拡張した技術である。これは、2Gと第3世代移動通信システム(3G)の間に位置することから、「2.5G」とも称され、携帯電話におけるパケット通信を本格的に導入した画期的なシステムとして知られている。GPRSの導入により、モバイル端末でのインターネット接続や電子メールの利用がより身近なものとなり、現在のスマートフォンによる高速データ通信の礎を築いた重要な技術である。従来のGSMのデータ通信が回線交換方式で、接続時間に応じて課金されるアナログモデムのようなものであったのに対し、GPRSはパケット交換方式を採用し、データ量に応じた従量課金と常時接続性を実現した点が最大の特徴である。

GPRSの技術的な詳細について掘り下げると、その核心は「パケット交換方式」への移行にある。従来の回線交換方式では、データ通信を行う際に通信経路を占有し続け、データの送受信がない間もその回線を確保する必要があった。これは音声通話には適しているものの、断続的にデータをやり取りするインターネット通信には非効率であった。これに対し、GPRSはデータを小さな塊であるパケットに分割し、それぞれ独立してネットワーク上を流す。これにより、必要な時にのみネットワークリソースが割り当てられ、複数のユーザーが同じ無線チャネルを共有できるようになり、ネットワーク資源を効率的に利用することが可能になった。

このパケット交換方式の導入は、ユーザーにとって「常時接続」という大きなメリットをもたらした。GPRS対応の端末は、一度ネットワークに登録されると、基本的に常にネットワークに接続されている状態となり、インターネットにアクセスするたびに接続確立の手順を踏む必要がなくなった。これは、電子メールの自動受信や、メッセンジャーアプリなどでのリアルタイムなやり取りを可能にする上で不可欠な機能であった。また、課金体系も接続時間に応じた課金から、実際に送受信したデータ量に応じた「従量課金」へと変化した。これにより、ユーザーは常時接続状態であっても、無駄な料金を心配することなく、安心してモバイルデータ通信を利用できるようになった。

GPRSの通信速度は、複数のタイムスロットを束ねて利用する「マルチスロットクラス」という技術によって向上された。理論上の最大速度は、複数のスロットを組み合わせることで最大で約115.2kbps(上り下り合わせて最大171.2kbpsと表記されることもある)に達した。これは現在の高速通信と比較すると限定的ではあるが、当時のモバイル環境においては画期的な速度であり、Webブラウジングや簡易なファイルの送受信には十分な性能を提供した。

GPRSは、既存のGSMネットワークのインフラを最大限に活用して導入された点も特筆すべきである。GSM網にSGSN(Serving GPRS Support Node)とGGSN(Gateway GPRS Support Node)という新しいネットワーク要素を追加・改修することで、迅速かつ比較的低コストでの展開が可能となった。SGSNはユーザーの移動管理や認証、無線区間でのパケットルーティングを担当し、GGSNはGPRSネットワークと外部のIPネットワーク(例えばインターネット)との接続点として機能し、IPアドレスの割り当てやパケットの送受信を管理した。これらのサポートノードは、GPRSネットワークの円滑な運用を支える基幹要素である。

GPRSはその後、EGPRS(Enhanced GPRS)、通称EDGE(Enhanced Data rates for GSM Evolution)へと進化を遂げた。EDGEは、GPRSの基盤技術を活かしつつ、変調方式を効率化することで、通信速度を最大で約384kbps(理論値)まで向上させた。これにより、2.75Gとも呼ばれるようになり、3Gへの移行期間において、より多くのモバイルデータ通信のニーズに応える役割を果たした。

GPRSがもたらした最大の功績は、モバイルデータ通信の利用モデルそのものを変革した点にある。常時接続と従量課金は、携帯電話を単なる音声通話ツールから、いつでもどこでも情報にアクセスできるパーソナルな情報端末へと進化させるための重要なステップであった。これにより、モバイルバンキング、位置情報サービス、簡易なストリーミングサービスなど、後のモバイルアプリケーションの発展に不可欠な環境が整備された。現在のLTEや5Gといった超高速・大容量のモバイルブロードバンドサービスは、GPRSが築き上げたパケット交換ネットワークの基盤の上に成り立っており、その歴史的意義は非常に大きい。GPRSは、現代のモバイルインターネット社会を構築する上での、まさしく重要な橋渡し役であったと言えるだろう。

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