【ITニュース解説】Weekend Rec Build: Hall of the Dwarven King – Web Edition

2025年09月08日に「Dev.to」が公開したITニュース「Weekend Rec Build: Hall of the Dwarven King – Web Edition」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

ある開発者が、アナログゲーム「Hall of the Dwarven King」のWeb版を個人開発。フレームワークを使わず、素のHTML/CSS/JSだけで実装し、localStorageで自動保存機能を実現。基礎技術で実用的なアプリを短期間で開発できる好例だ。(117文字)

ITニュース解説

個人開発者が週末の時間を使って、既存のボードゲームをWebブラウザ上で遊べるようにしたプロジェクトが公開された。この取り組みは、大規模なシステム開発だけでなく、個人の興味や楽しみを原動力にした小規模な開発がいかに価値あるものであるかを示している。特に、これからシステムエンジニアを目指す初心者にとって、実践的なプログラミングスキルを学ぶ上で多くのヒントが得られる事例だ。

このプロジェクトは、「Hall of the Dwarven King」という、サイコロを振って自分の王国を築き上げる一人用のボードゲームをデジタル化したものである。元々は紙のシートと鉛筆を使ってスコアや状態を記録しながら遊ぶゲームだったが、開発者はその手作業の煩わしさを解消し、ゲームの戦略的な面白さだけに集中できるようにすることを目指した。その結果、自動で進行状況を保存し、スコア計算も行ってくれる、手軽で快適なWebアプリケーションが誕生した。このWeb版は、特定のソフトウェアをインストールする必要がなく、最新のWebブラウザとソースコードさえあれば誰でもすぐに遊ぶことができる。

このWebアプリケーションの最大の特徴は、その技術構成のシンプルさにある。開発者は意図的に、現代のWeb開発で頻繁に使用されるReactやVue.jsといった「フレームワーク」や、複数のファイルを一つにまとめる「バンドラー」と呼ばれるツールを一切使用していない。代わりに、Web開発の最も基本的な技術であるHTML、CSS、そして素のJavaScript(しばしば「Vanilla JS」と呼ばれる)のみで全体を構築している。この選択は、プロジェクトの規模が比較的小さいため、複雑なツールを導入するオーバーヘッドを避け、迅速に開発を進めるための合理的な判断である。初心者にとっては、まず基本技術をしっかり固めることの重要性を示す好例と言える。

アプリケーション内部では、ゲームの進行状況に関するあらゆるデータ、例えば現在のターン数、プレイヤーが掘り進んだ深さ、所持しているゴールド、サイコロの出目、マップ上の建物の配置状況などが、すべて一つのJavaScriptオブジェクトとして一元管理されている。このようにデータを一つのまとまりとして扱うことで、プログラムの構造が単純明快になり、データの流れを追いやすくなる。これは状態管理(ステートマネジメント)と呼ばれる考え方の一つのシンプルな実装例であり、アプリケーションが複雑化しても破綻しにくい設計の基礎となる。

さらに、このゲームには自動保存機能が搭載されており、プレイヤーが途中でブラウザを閉じたり、ページを再読み込みしたりしても、続きから再開できる。この機能は、サーバー上のデータベースを使わずに実現されている。その秘密は、ブラウザに標準で備わっている「localStorage」という機能にある。localStorageは、少量のテキストデータをユーザーのコンピュータ上のブラウザ内に保存するための仕組みである。これを利用することで、前述のゲーム状態をまるごと保存し、次回アクセス時に読み込むだけで、簡単にゲームの再開機能を提供できる。サーバー構築の手間やコストをかけずにデータを永続化できるため、小規模なWebアプリケーションや個人開発で非常に重宝される技術だ。

画面の表示更新には、JavaScriptがHTMLの構造(DOM: Document Object Model)を直接操作する、命令的なアプローチが採用されている。例えば、プレイヤーが建物を配置すると、JavaScriptが新しい建物を表すHTML要素を生成し、それを指定されたマス目に挿入するという処理が直接的に記述される。近年の大規模開発では、仮想DOMという技術を用いて画面更新を効率化する宣言的なアプローチが主流だが、このゲームのような比較的シンプルなUIであれば、直接DOMを操作する方がコードが直感的で、パフォーマンス上の問題も発生しにくい。プロジェクトの要件に応じて適切な技術を選択する、というエンジニアリングの基本姿勢がここにも表れている。

技術的な側面だけでなく、ユーザーが快適に遊べるような設計上の工夫も凝らされている。例えば、サイコロを振り直す際の操作を、より直感的にクリックで選択できるようにしたり、Webブラウザの画面サイズに合わせてレイアウトが自動で調整されるレスポンシブデザインを採用したりしている。また、ルール上不可能な操作(例えば、資金が足りないのに建物を建てようとするなど)は、そもそもUI上で選択できないように制限されている。これは「ガードレール」と呼ばれ、ユーザーを混乱させることなく、スムーズなゲーム体験を提供する上で重要な設計思想である。

このプロジェクトは完成しているが、開発者はさらなる改善の可能性も示唆している。UIのアニメーション追加による視覚的なフィードバックの強化や、スマートフォンでの操作性向上などが今後の課題として挙げられている。このように、一度リリースして終わりではなく、継続的に改善を重ねていく姿勢は、ソフトウェア開発の普遍的なプロセスである。この開発事例が示す最も重要なメッセージは、プログラミングは必ずしも壮大な目標を掲げる必要はなく、「自分が好きなものを、もっと楽しく、便利にしたい」という純粋な動機から始められるということだ。週末という短い期間で、基本的な技術だけを使い、アイデアを形にする。この経験は、楽しみながら実践的なスキルを磨き、エンジニアとしての自信を育むための素晴らしい一歩となるだろう。

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