DNS over HTTPS(ディーエヌエスオーバーエッチティーティーピーエス)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
DNS over HTTPS(ディーエヌエスオーバーエッチティーティーピーエス)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
DNS over HTTPS (ディーエヌエスオーバーエッチティーティーピーエス)
英語表記
DNS over HTTPS (ディーエヌエス・オーバー・エーチティーティーピーエス)
用語解説
インターネットを利用する際、私たちは「example.com」のようなドメイン名を使ってWebサイトにアクセスする。しかし、コンピュータはドメイン名を直接理解することはできず、「192.0.2.1」のようなIPアドレスを必要とする。このドメイン名とIPアドレスの変換を行うシステムがDNS(Domain Name System)である。従来のDNSは、インターネットが普及し始めた初期に設計されたため、通信のセキュリティやプライバシーに関する考慮が十分ではなかった。具体的には、DNSの問い合わせ(クエリ)やその応答は暗号化されずに送信されるため、通信経路の途中で第三者に盗聴されたり、改ざんされたりするリスクがあった。この問題を解決し、DNS通信のセキュリティとプライバシーを向上させるために考案されたのが、DNS over HTTPS(DoH)である。DoHは、通常のWebサイト閲覧で利用されるHTTPSプロトコルを利用してDNSクエリを送信することで、その内容を暗号化し、第三者からの傍受や改ざんから保護する技術である。
従来のDNSの仕組みでは、Webブラウザやアプリケーションが特定のドメイン名に対応するIPアドレスを知りたい場合、DNSサーバーに対して非暗号化されたUDP(User Datagram Protocol)またはTCP(Transmission Control Protocol)のポート53番を利用してクエリを送信する。この通信は暗号化されていない平文で送受信されるため、同じネットワーク上にいる悪意のあるユーザーや、インターネットサービスプロバイダ(ISP)などの第三者が、ユーザーがどのWebサイトにアクセスしようとしているのかを容易に知ることができる。例えば、特定のユーザーが頻繁に医療サイトを訪れていることや、金融機関のサイトにアクセスしていることなどが明らかになってしまう可能性がある。また、DNS応答が改ざんされるリスクもあり、ユーザーが悪意のある偽サイトに誘導されてしまう「DNSキャッシュポイズニング」や「中間者攻撃」などの脅威にさらされる可能性もあった。これにより、ユーザーの個人情報が盗まれたり、コンピュータウイルスに感染したりする危険性が高まる。
これに対し、DNS over HTTPSは、DNSクエリを通常のWebトラフィックと同じようにHTTPSプロトコルに乗せて送信する。HTTPSは、SSL/TLS(Secure Sockets Layer/Transport Layer Security)という暗号化技術を用いて通信内容を保護する仕組みであり、WebブラウザでURLが「https://」で始まるサイトにアクセスする際に使われている。DoHでは、DNSクエリがこのHTTPSで暗号化されるため、第三者が通信内容を盗聴したり、改ざんしたりすることが極めて困難になる。つまり、ユーザーがどのサイトにアクセスしようとしているかという情報が、ISPや他のネットワーク上の傍受者から保護される。さらに、DoHは通常のWebトラフィックと同じTCPポート443番を使用するため、従来のDNSトラフィック(ポート53番)とは異なり、ネットワーク上でDNSクエリであることを識別されにくくなるという利点もある。これにより、特定のDNSクエリだけをブロックするような、意図的な検閲やフィルタリングを回避しやすくなる。
DoHの導入により、ユーザーのプライバシーは大きく向上する。ISPや政府機関、あるいは悪意のある第三者が、ユーザーのDNSクエリ履歴を監視して行動パターンを分析したり、アクセスを試みているサイトに関する情報を収集したりすることが難しくなる。これは、インターネットの匿名性を高め、自由な情報アクセスを促進する上で重要な進歩である。また、セキュリティの面でも大きなメリットがある。DNS応答が暗号化されることで、悪意のあるDNSサーバーに誘導されるリスクや、DNSキャッシュが改ざんされるリスクが軽減される。これにより、ユーザーはより安全にインターネットを利用できる。
しかし、DoHにはいくつかの課題も存在する。一つは、DNS解決が少数の大手プロバイダに集中する可能性である。多くのユーザーが特定のDoHプロバイダを利用するようになると、そのプロバイダは膨大なDNSクエリ情報を集約することになり、別の形でのプライバシー懸念や、そのプロバイダが単一障害点となるリスクが生じる。また、企業ネットワークなどの管理された環境では、DNSトラフィックを監視してセキュリティポリシーを適用したり、マルウェアの活動を検知したりすることが一般的である。DoHが普及すると、DNSクエリが暗号化されてしまうため、ネットワーク管理者がこのような監視を行うことが難しくなる。これにより、企業のセキュリティ対策に影響を及ぼす可能性も指摘されている。さらに、HTTPSの暗号化や復号化にはごくわずかな処理オーバーヘッドが発生するため、理論上は従来のDNSよりも応答速度がわずかに遅くなる可能性があるが、ほとんどのユーザーにとって体感できるほどの差ではない。これらのメリットとデメリットを理解し、自身の利用環境やプライバシーに対する考え方に応じてDoHの利用を検討することが重要である。