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IEEE 802.3an(アイ・イー・イー・イー・ハチマルニ・テン・サン・エイ・エヌ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

IEEE 802.3an(アイ・イー・イー・イー・ハチマルニ・テン・サン・エイ・エヌ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

アイ・イー・イー・イー・はちまるにい・てんさん・えーえぬ (アイイーイーイーハチマルニイテンサンエイエヌ)

英語表記

IEEE 802.3an (アイ・イー・イー・イー・ハチマルニ・テン・サン・エイ・エヌ)

用語解説

IEEE 802.3anは、オフィスやデータセンターなどで広く普及しているツイストペアケーブルを使用して、10ギガビット毎秒(10Gbps)の通信速度を実現するためのイーサネット規格である。この規格は一般的に「10GBASE-T」という名称で知られている。2006年に標準化され、それまで高速通信の主流であった光ファイバーケーブルに代わる、より低コストで導入しやすい選択肢として登場した。イーサネットはコンピュータネットワークの基盤技術であり、その速度は10Mbps、100Mbps、1Gbpsと進化してきた。IEEE 802.3anは、この進化の延長線上にあり、既存の1Gbpsイーサネット(1000BASE-T)の10倍の帯域幅を提供する。この規格の最大の特長は、多くの建物に既に敷設されているメタル線の配線インフラを、一定の条件下で活用できる点にある。これにより、ネットワーク機器の交換だけで高速化が図れる場合があり、大規模な配線工事を必要とせずにネットワークのアップグレードが可能となる。特に、サーバーとストレージ間の通信や、多数のクライアントを収容する企業の基幹ネットワークなど、大量のデータを扱う環境においてその価値を発揮する。

IEEE 802.3an、すなわち10GBASE-Tの詳細を理解するには、その技術的背景と要件を知る必要がある。この規格が10Gbpsという高速通信をツイストペアケーブルで実現するためには、いくつかの重要な技術が採用されている。まず、使用されるケーブルには特定の性能が求められる。規格上、最大100メートルの伝送距離を保証するためには、カテゴリ6A(CAT6A)以上の性能を持つケーブルの使用が推奨される。既存の配線で広く使われているカテゴリ6(CAT6)ケーブルも使用可能であるが、その場合は伝送距離が最大55メートル程度に制限される。これは、10GBASE-Tが使用する周波数帯域が非常に広く、ケーブルの品質やノイズ耐性が通信の安定性に直接影響するためである。

通信方式には、4対8芯のツイストペアケーブルを全て同時に送受信に利用する全二重通信が採用されている。各ペアが2.5Gbps相当のデータを伝送し、4ペアを合計することで10Gbpsの通信速度を達成する仕組みだ。この高速伝送を実現する核となる技術の一つが、PAM-16(Pulse Amplitude Modulation 16-level)と呼ばれるパルス振幅変調方式である。従来のイーサネットが用いていた、電圧の高低で0と1を表現する2値の信号とは異なり、PAM-16では16段階の異なる電圧レベルを用いて一度に4ビットの情報を表現する。これにより、信号の変調速度(シンボルレート)を抑えながら、データ転送レートを大幅に向上させることが可能となった。

しかし、高周波数帯域で多値の信号を扱うことは、ノイズの影響を非常に受けやすくなるという課題も生む。特に、隣接して束ねられた他のケーブルから漏れ出す電磁波が干渉する「エイリアンクロストーク」は、10GBASE-Tにおける最大の技術的障壁であった。この問題を克服するため、強力な誤り訂正符号(FEC: Forward Error Correction)であるLDPC(Low-Density Parity-Check code)が導入された。LDPCは、伝送中に発生したビットエラーを受信側で検出し、自動的に訂正する機能を持つ。この技術により、ノイズが多い環境下でもデータの信頼性を確保し、安定した通信を実現している。CAT6Aケーブルが推奨されるのも、シールド構造の強化などによってエイリアンクロストークへの耐性が高められているためである。

さらに、IEEE 802.3anは下位互換性も考慮して設計されている。10GBASE-Tに対応したネットワークインターフェースは、オートネゴシエーション機能により、接続先の機器が対応する最高速度を自動で判別し、10Gbpsだけでなく、1Gbps(1000BASE-T)や100Mbps(100BASE-TX)といった低速な規格での通信も可能である。この柔軟性により、既存のネットワーク環境に10GBASE-T対応機器を段階的に導入していくことができ、スムーズな移行を支援する。これらの技術的特徴により、IEEE 802.3anは、光ファイバーに匹敵する性能を、より汎用性が高く扱いやすいツイストペアケーブルで実現し、現代の高速ネットワークインフラの普及に大きく貢献している規格なのである。

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