IIOP(アイアイオーピー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

IIOP(アイアイオーピー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

インターネット・インテリジェント・オブジェクト・プロトコル (インターネットインテリジェントオブジェクトプロトコル)

英語表記

IIOP (アイアイオーピー)

用語解説

IIOPは、Internet Inter-ORB Protocolの略称であり、ネットワーク上に分散した異なるコンピュータ上で動作するプログラム同士が通信を行うための通信プロトコルである。このプロトコルは、オブジェクト指向技術の標準化団体であるObject Management Group (OMG) によって策定されたCORBA (Common Object Request Broker Architecture) という仕様の核心部分をなしている。IIOPの主な目的は、特定のプログラミング言語やオペレーティングシステム(OS)に依存しない、高い相互運用性を実現することにある。これにより、例えばJavaで開発されたクライアントアプリケーションが、ネットワークを介してC++で開発されたサーバーアプリケーションの機能(メソッド)を、あたかも自身のコンピュータ内にあるオブジェクトを呼び出すかのように透過的に利用することが可能になる。この仕組みは、遠隔手続き呼び出し(RPC: Remote Procedure Call)の一種と位置づけられる。IIOPは、インターネットの標準プロトコルであるTCP/IP上で動作するように設計されており、これにより広域ネットワーク環境でも安定した通信を実現する。

IIOPとCORBAの仕組みを理解する上で重要な構成要素がいくつか存在する。まず、ORB (Object Request Broker) は、クライアントとサーバーオブジェクトの間に位置する仲介役である。クライアントがサーバー上のオブジェクトを呼び出そうとすると、ORBがその要求を受け取り、ネットワーク通信に関する複雑な処理をすべて代行する。これには、通信相手の物理的な位置の特定、データの送受信、さらにはデータ形式の変換などが含まれる。プログラマはORBの存在により、低レベルなネットワークプログラミングを意識することなく、ビジネスロジックの実装に集中できる。

次に、IDL (Interface Definition Language) は、オブジェクトが外部に提供する機能(インターフェース)を定義するための中立的な言語である。IDLは特定のプログラミング言語の文法に依存しないため、ここで定義されたインターフェースは様々な言語に変換することが可能となる。開発者はまずIDLを用いてオブジェクトのメソッド名や引数、戻り値の型などを記述した定義ファイルを作成する。そして、IDLコンパイラというツールを使って、この定義ファイルから各プログラミング言語(Java, C++, Pythonなど)に対応したプログラムの雛形を自動生成する。

この自動生成される雛形が「スタブ」と「スケルトン」である。スタブはクライアント側に生成され、クライアントアプリケーションがリモートオブジェクトを呼び出す際の代理として機能する。クライアントがスタブのメソッドを呼び出すと、スタブは引数などのデータをIIOPで定められた共通の形式に変換(マーシャリング)し、ネットワーク経由でサーバーに送信する。一方、スケルトンはサーバー側に生成される。スケルトンはネットワークからIIOP形式のデータを受信し、それをサーバー側のプログラミング言語が解釈できる形式に変換(アンマーシャリング)した後、実際のサーバーオブジェクトのメソッドを呼び出す。メソッドの処理結果が返される際も、スケルトンからスタブへ逆のプロセスをたどる。このスタブとスケルトンの連携により、クライアントとサーバー間の言語やプラットフォームの違いが吸収され、透過的な通信が実現される。

IIOPの通信データ形式は、CDR (Common Data Representation) と呼ばれる規約に従う。これは、異なるコンピュータアーキテクチャ間でのデータ互換性を保証するためのもので、例えばエンディアン(バイトオーダ)の違いなどを吸収する役割を持つ。

また、IIOPはGIOP (General Inter-ORB Protocol) という、より抽象的なプロトコル仕様をTCP/IP上に実装したものである。GIOPはORB間通信のためのメッセージ形式やデータ表現などを定義する汎用的な規約であり、IIOPはこのGIOPを特定の通信トランスポートであるTCP/IPに適用した具体的なプロトコルと位置づけられる。

1990年代から2000年代初頭にかけて、IIOPは特に大規模なエンタープライズシステムや金融、通信といったミッションクリティカルな分野で広く採用された。しかし、近年では、より軽量でWebとの親和性が高いRESTful APIやgRPCといった技術が主流となり、新規開発でIIOPが選択される機会は減少している。それでもなお、長年にわたり安定稼働してきた多くの基幹システム(レガシーシステム)では現在もIIOPが利用され続けており、そうしたシステムの保守・運用や連携を行うシステムエンジニアにとって、IIOPの知識は依然として重要である。

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