LPTポート(エルピーティーポート)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

LPTポート(エルピーティーポート)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

エルピーティーポート (エルピーティーポート)

英語表記

LPT port (エルピーティー ポート)

用語解説

LPTポートは、コンピュータと周辺機器を接続するためのインターフェース規格の一つである。一般的にはパラレルポートという名称で広く知られており、主にプリンターを接続するために使用されたことからプリンターポートとも呼ばれる。LPTは「Line Print Terminal」の略称に由来する。複数の信号線を同時に使用してデータを並列に送信するパラレル通信方式を採用している点が最大の特徴であり、かつてはパーソナルコンピュータにおける標準的なインターフェースとして広く普及していた。しかし、後発のUSB(Universal Serial Bus)の登場により、その役割を譲り、現在ではレガシーインターフェースとして位置づけられている。

LPTポートの技術的な核心は、パラレル通信にある。これは、8本のデータ線を同時に利用して8ビット(1バイト)のデータを一度に送信する方式である。これに対して、1本のデータ線でデータを1ビットずつ順番に送信する方式をシリアル通信と呼ぶ。理論上、同じクロック周波数であれば、パラレル通信はシリアル通信の8倍のデータを送信できるため、登場当時は高速なデータ転送方式として重宝された。このパラレル通信の仕組みから、パラレルポートという通称が定着した。LPTポートは物理的なコネクタとして、一般的にD-Sub 25ピンのメスコネクタがコンピュータ側に搭載されていた。この25本のピンには、8本のデータ線のほか、データの送受信のタイミングを制御するためのストローブ信号やACK(Acknowledge)信号、ビジー信号、エラー信号などの制御線、そしてグラウンド線が含まれており、これらが協調して動作することで安定したデータ通信を実現していた。

LPTポートの規格は、時代とともに進化を遂げてきた。初期の規格はSPP(Standard Parallel Port)と呼ばれ、データ転送はコンピュータから周辺機器への一方向通信に限定されており、転送速度も毎秒50〜150キロバイト程度であった。その後、双方向通信の需要が高まり、周辺機器からのデータ受信も可能にするための改良が加えられた。1994年にはIEEE(米国電気電子学会)によってIEEE 1284として標準化され、複数の通信モードが定義された。その代表的なものがEPP(Enhanced Parallel Port)とECP(Extended Capabilities Port)である。EPPは、プリンター以外の周辺機器、例えば外付けハードディスクやスキャナーなどとの高速な双方向通信を目的として開発された。ハードウェアレベルで制御信号のやり取りを自動化することで、ソフトウェアの介在を減らし、毎秒500キロバイトから2メガバイトの高速なデータ転送を実現した。一方、ECPは、プリンターやスキャナーの性能を最大限に引き出すことを目的としており、DMA(Direct Memory Access)転送に対応している点が大きな特徴である。DMAを利用することで、CPUを介さずにメインメモリと周辺機器が直接データ転送を行うことが可能となり、システムの負荷を軽減しつつ、EPPと同等以上の高速転送を実現した。これらの規格の登場により、LPTポートは単なるプリンター接続用ポートから、汎用的な高速インターフェースへとその役割を拡大していった。

当初の主な用途はドットインパクトプリンターやレーザープリンターの接続であったが、規格の進化に伴い、その用途は多岐にわたるようになった。前述のスキャナーや、Iomega社のZipドライブに代表されるようなリムーバブルメディアドライブの接続にも広く利用された。また、2台のコンピュータをLPTポート同士で直接ケーブル接続し、ファイル転送や簡易的なネットワーク対戦ゲームを行う「ダイレクトケーブル接続」も、LANが一般家庭に普及する前の一時期には利用されていた。さらに、その構造の単純さから、電子工作の分野でI/Oポートとして活用され、モーターやLEDの制御など、独自のデバイスを接続するためのインターフェースとしても重宝された。

しかし、2000年代に入ると、LPTポートは急速にその姿を消していくことになる。最大の要因は、USBの登場と普及である。USBは、LPTポートが抱えていた多くの課題を解決した。例えば、LPTポートのケーブルは太く、長さも数メートルに制限されていたが、USBケーブルは細く、取り回しが容易であった。また、LPTポートはコンピュータの電源が入った状態での抜き差し(ホットプラグ)を想定しておらず、機器の接続にはシステムの再起動が必要な場合があったが、USBは標準でホットプラグに対応していた。さらに、USBは高速なデータ転送速度、ポートからの電源供給能力、そして何よりもOSによる自動認識(プラグアンドプレイ)機能によって、利用者にとっての利便性を劇的に向上させた。これらの利点から、プリンターをはじめとするあらゆる周辺機器の接続インターフェースはUSBへと移行し、LPTポートは次第にコンピュータの標準装備から外れていった。

現代において、一般消費者向けのコンピュータでLPTポートを見かけることはほとんどない。しかし、その技術が完全に過去のものとなったわけではない。産業用機械の制御、古い計測機器や検査装置、POSシステム、NC工作機械など、特定の業務用途では、信頼性や既存システムとの互換性の観点から、現在でもLPTポートが現役で利用されているケースが存在する。このようなレガシーシステムを保守・運用する現場では、LPTポートに関する知識が依然として求められることがある。また、古いプリンターなどを最新のコンピュータで使用したい場合には、USBポートをLPTポートに変換する「USB-パラレル変換ケーブル」が市販されており、これを利用することでレガシーな周辺機器を延命させることも可能である。システムエンジニアとしては、最新技術だけでなく、こうしたレガシーインターフェースの仕組みや背景を理解しておくことが、幅広いシステムに対応する上で重要となるだろう。