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SCIM(シム)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

SCIM(シム)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

システム for Cross-domain Identity Management (システム フォー クロスドメイン アイデンティティ マネジメント)

英語表記

SCIM (サイジム)

用語解説

SCIMは、Service for Cross-domain Identity Managementの略称であり、複数のクラウドサービスやアプリケーション間でユーザーのID情報を効率的かつ安全に管理するための標準化されたプロトコルだ。現代の企業活動において、従業員はさまざまなSaaS(Software as a Service)アプリケーションを利用することが一般的になっている。たとえば、メールはGoogle Workspace、顧客管理はSalesforce、社内コミュニケーションはSlack、ファイル共有はBoxといった具合だ。これらのサービスそれぞれにユーザーアカウントを作成し、管理する必要があるため、手動での作業は膨大な手間と時間がかかり、人的ミスも発生しやすいという課題があった。

この課題を解決するために登場したのがSCIMだ。SCIMの主要な目的は、ユーザーアカウントの「プロビジョニング」と「デプロビジョニング」を自動化し、標準化することにある。プロビジョニングとは、新しい従業員が入社した際に、必要なすべてのシステムにその従業員のアカウントを作成し、適切なアクセス権を付与する一連の作業を指す。一方、デプロビジョニングとは、従業員が退職したり、部署異動したりした場合に、不要になったアカウントを停止・削除し、アクセス権を剥奪する作業のことだ。これらの作業を、それぞれのサービスごとに個別に行うのではなく、SCIMという共通の仕組みを通して一元的に、そして自動的に行うことが可能になる。

SCIMは、Web上で広く利用されているRESTful APIとJSON(JavaScript Object Notation)を基盤として設計されている。RESTful APIは、Webサービス間で情報をやり取りするための技術的な方式であり、JSONはその情報を表現するための軽量なデータ形式だ。これにより、異なるベンダーが提供するサービス間でも、SCIMに準拠していれば、同じ「言語」と「形式」でユーザー情報をやり取りできるようになる。具体的には、あるシステム(例えば、IDaaS: Identity as a Service)が、SCIMプロトコルに従って「ユーザーAを作成せよ」「ユーザーBのメールアドレスを変更せよ」「ユーザーCを削除せよ」といった命令を、別のシステム(例えば、SaaSアプリケーション)に対して送ることができる。これにより、ユーザーIDの作成、読み取り、更新、削除といった一連のライフサイクル管理が自動化される。

SCIMが定義する重要な要素の一つに「スキーマ」がある。スキーマとは、ユーザー情報がどのような項目(属性)で構成されるべきかを定めたルールのようなものだ。たとえば、ユーザー名、メールアドレス、社員番号、所属部署、役職などが標準的な属性として定義されている。これにより、各サービスがそれぞれ独自の項目名でユーザー情報を扱っていたとしても、SCIMを通じてやり取りする際には標準化されたスキーマにマッピングされるため、情報の整合性が保たれやすくなる。この標準化のおかげで、システム間の連携開発が大幅に簡素化され、個別のカスタマイズにかかる時間とコストを削減できるのだ。

SCIMの導入によるメリットは多岐にわたる。まず、運用面での大きな効率化が挙げられる。手作業でのアカウント管理が不要になるため、IT管理者の負担が軽減され、より戦略的な業務に注力できるようになる。次に、セキュリティの向上だ。従業員の入社や退職、異動に伴うアカウントのプロビジョニングやデプロビジョニングが迅速かつ正確に行われることで、アクセス権の過剰付与や、退職者による不正アクセスといったリスクを効果的に低減できる。また、複数のシステム間でユーザー情報が常に同期されるため、データの一貫性が保たれ、情報に齟齬が生じることを防げる。これは、監査対応やコンプライアンス遵守の観点からも非常に重要だ。

SCIMは、特にクラウドサービスを多用する現代の企業にとって、ITインフラの根幹を支える重要な技術の一つとなっている。IDaaSを提供する主要なベンダー(Okta, Azure AD, OneLoginなど)は、SCIMを標準的な連携プロトコルとして採用しており、多くのSaaSアプリケーションもSCIMに対応することで、これらのIDaaSとの統合を容易にしている。これにより、企業はIDaaSを一元的な管理基盤として利用し、そこからSCIMを通じて必要なSaaSアプリケーションへとユーザー情報を自動的に連携させることが可能になるのだ。

SCIMと混同されがちな技術として、SSO(Single Sign-On)がある。SSOは、一度ログインすれば複数のシステムに再認証なしでアクセスできるようにする「認証」に関する技術だ。一方、SCIMは、ユーザーのアカウント自体をシステム間で作成・更新・削除するといった「ID管理(プロビジョニング)」に関する技術だ。SSOは認証の手間を省き、SCIMはアカウント管理の手間を省くという点で、両者は異なる役割を持つが、企業におけるID管理全体を最適化するためには、SCIMによるプロビジョニングとSSOによる認証を組み合わせて利用することが一般的だ。SCIMは、システムエンジニアを目指す上で、クラウド環境におけるID管理の自動化と標準化を理解するために非常に重要な概念であり、今後のITシステム開発や運用においてその知識が不可欠となるだろう。

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