Secure DNS(セキュアディーエヌエス)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
Secure DNS(セキュアディーエヌエス)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
セキュアDNS (セキュアディーエヌエス)
英語表記
Secure DNS (セキュアディーエヌエス)
用語解説
「Secure DNS」は、従来のDNSが抱えるセキュリティ上の脆弱性を克服し、より安全でプライベートなドメイン名解決を実現するための技術概念の総称である。インターネットにおいてドメイン名をIPアドレスに変換するDNS(Domain Name System)は、その根幹をなす非常に重要なプロトコルだが、設計当初はセキュリティを考慮したものではなかった。そのため、従来のDNS通信は暗号化されず、認証機構も持たないため、中間者攻撃による通信内容の盗聴や改ざん(キャッシュポイズニングなど)に対して脆弱であった。Secure DNSは、これらの課題を解決し、DNS通信の機密性、完全性、認証性を確保することを目的としている。
従来のDNSの仕組みは、例えばユーザーがWebブラウザで「example.com」と入力した際に、まずローカルのDNSリゾルバ(通常はISPが提供するDNSサーバー)にそのドメイン名に対応するIPアドレスを問い合わせることから始まる。この問い合わせとその応答は、一般的にUDPプロトコルを使用してポート53で行われる。この通信はプレーンテキストで行われるため、ネットワーク上の任意の地点で盗聴が可能である。悪意のある第三者は、この通信内容を傍受することで、ユーザーがどのWebサイトにアクセスしようとしているかを知ることができる。これはユーザーのプライバシーを侵害するだけでなく、ターゲット型攻撃の足がかりにもなり得る。さらに深刻な問題として、DNSリゾルバが偽の応答を受け取ってしまうキャッシュポイズニング攻撃が挙げられる。攻撃者は、正当なドメイン名に対して悪意のあるIPアドレス(例えばフィッシングサイトのIPアドレス)を返すようにDNSサーバーのキャッシュを汚染し、ユーザーを意図しないサイトへ誘導することが可能になる。このような脆弱性は、インターネット全体の信頼性を損ねる大きなリスクとなっていた。
Secure DNSは、これらのセキュリティ課題に対処するために、主に「DNSSEC (DNS Security Extensions)」「DoT (DNS over TLS)」「DoH (DNS over HTTPS)」といった複数の技術を組み合わせて利用する。それぞれの技術は異なる側面からDNSのセキュリティを強化するものであり、相互に補完し合う関係にある。
まずDNSSECは、DNSデータそのものの完全性と認証性を保証するための技術である。これは公開鍵暗号技術を利用し、DNSゾーンデータ(ドメイン名とIPアドレスの対応情報など)に電子署名を付与することで実現される。DNSSECを導入したDNSサーバーは、署名されたDNSレコードを応答する際に、その署名と公開鍵を合わせて提供する。DNSSEC対応のリゾルバは、この署名を検証することで、受け取ったDNSデータが権威あるサーバーから送られてきた正当なものであり、かつ転送中に改ざんされていないことを確認できる。これにより、キャッシュポイズニング攻撃のように偽のIPアドレスを送りつけられるリスクを大幅に低減できる。DNSSECは、DNSの応答データの信頼性を高めることで、インターネットの基盤となるDNSインフラの堅牢性を向上させる。しかし、DNSSECは通信経路の暗号化を提供するものではないため、DNSクエリや応答がネットワーク上で盗聴される可能性は残る。
次にDoT (DNS over TLS) は、DNS通信経路を暗号化するための技術である。これはWebサイトの通信を保護するHTTPSと同様に、TLS (Transport Layer Security) プロトコルをDNS通信に応用したものである。DoTを使用すると、DNSクライアント(OSやブラウザ)とDNSサーバー間のDNSクエリおよび応答が暗号化されるため、ネットワーク上の第三者がその内容を盗聴したり、改ざんしたりすることが困難になる。通常、DoTは標準のDNSポート53とは異なる専用のポート853を使用することが多い。これにより、通信内容のプライバシーが大幅に向上し、ユーザーがどのサイトにアクセスしようとしているかといった情報が第三者に知られることを防ぐ。DoTは通信経路の秘匿性を高めるが、DNSSECのようにDNSデータ自体の認証を行うわけではないため、信頼できないDNSサーバーが署名のない不正なデータを応答する可能性は残る。そのため、最高のセキュリティを実現するには、DNSSECとDoTを組み合わせて利用することが理想的である。
最後にDoH (DNS over HTTPS) は、DNSクエリをHTTPSプロトコルを介して送信する技術である。これはWebブラウジングに使われる一般的なHTTPS通信と同じポート443を使用するため、従来のDNS通信と異なり、ネットワークの監視者からは通常のWebトラフィックと区別がつきにくいという特徴がある。DoHもDoTと同様にTLSによってDNS通信を暗号化するため、通信経路における盗聴や改ざんを防ぐ効果がある。HTTPSを使用することで、既存のWebインフラストラクチャを再利用できる利点もある。DoHの主要な利点の一つは、ISPなどのネットワーク事業者がDNSクエリを検閲したり、特定サイトへのアクセスをブロックしたりするのを回避できる可能性である。また、プライバシー保護の観点からも注目されており、Google ChromeやMozilla Firefoxなどの主要なWebブラウザがDoHを標準でサポートし始めている。ただし、DoHが一般化すると、企業ネットワークなどにおいて、従来のDNS通信を監視してセキュリティ対策を行っていたシステムが機能しなくなるなどの課題も指摘されている。
これらのSecure DNS技術を導入することには多くのメリットがある。ユーザーのプライバシー保護が強化され、インターネットサービスプロバイダ(ISP)やその他の第三者がユーザーの閲覧履歴を追跡することが困難になる。キャッシュポイズニングや中間者攻撃といったDNS関連のセキュリティ脅威から保護され、より安全なWebアクセスが実現する。また、DoHのように通常のWebトラフィックに紛れる形でDNS通信を行うことで、政府によるインターネット検閲を回避し、情報への自由なアクセスを維持する助けにもなる可能性がある。
一方で、Secure DNSの普及にはいくつかの課題も存在する。DNSSECは設定と運用が複雑であり、すべてのドメインやDNSサーバーで完全に導入されているわけではない。DoTやDoHはパフォーマンスへの影響も懸念される。暗号化と復号の処理には、通常のDNS通信よりも若干のオーバーヘッドが生じるためである。また、企業ネットワークなどでは、DoHのような暗号化されたDNS通信によって、DNSフィルタリングやネットワーク監視が困難になるため、新たなセキュリティポリシーやツールの導入が必要となる場合がある。しかし、これらの課題にもかかわらず、インターネットのセキュリティとプライバシーの向上のためにはSecure DNSの導入が不可欠であるという認識が広まっている。主要なOSベンダー、ブラウザベンダー、そしてDNSプロバイダがSecure DNSへの対応を進めており、今後もその利用は拡大していくと予想される。
システムエンジニアを目指す者にとって、Secure DNSの理解は非常に重要である。セキュアなネットワークインフラの設計、構築、運用を行う上で、DNSの脆弱性とそれを克服する技術についての知識は不可欠となる。トラブルシューティング、セキュリティインシデントへの対応、そして最新のネットワーク技術トレンドを把握するためにも、DNSSEC、DoT、DoHといったSecure DNSの構成要素とその役割を深く理解することが求められる。将来的に、ほとんどのDNS通信がSecure DNSによって保護されるようになることを考えると、これらの技術への理解は、現代のITプロフェッショナルにとって必須のスキルの一つとなるだろう。