vMotion(ブイモーション)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
vMotion(ブイモーション)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
ブイモーション (ブイモーション)
英語表記
vMotion (ブイモーション)
用語解説
vMotionとは、仮想化基盤を提供するVMware社が開発した独自の技術で、稼働中の仮想マシンを、サービスを停止することなく、別の物理サーバーへ移行させる機能である。この技術は、システム運用におけるダウンタイムを極限まで減らし、リソースの最適化や高可用性の向上に大きく貢献する。システムエンジニアを目指す上で、現代のITインフラでは必須の技術要素の一つと理解すべきだ。
vMotionの導入以前、従来の物理サーバー環境では、サーバーのハードウェアメンテナンス、OSのパッチ適用、ファームウェアアップデートなど、物理サーバー自体に手を加える際には、必ずそのサーバー上で稼働するアプリケーションやサービスを停止する必要があった。これは計画的なダウンタイムを意味し、ビジネスにおけるサービス提供の中断や、それに伴う機会損失、顧客満足度の低下といったリスクを伴った。また、特定の物理サーバーに負荷が集中し、他のサーバーが遊んでいるといったリソースの偏りも、効率的な運用を阻害する要因であった。仮想化技術は、一つの物理サーバー上で複数の仮想マシンを稼働させることでリソースの利用効率を高めたが、仮想マシンが特定の物理サーバーに固定されるという点は変わらなかった。そこで、仮想マシンの稼働状態を維持したまま、物理サーバー間を自由に行き来させる仕組みが求められ、vMotionがその課題を解決する技術として登場した。
vMotionの核心的な機能は、仮想マシンの状態、具体的にはメモリの内容、CPUの状態、ネットワーク接続、接続されているデバイスの状態などを、移行元から移行先の物理サーバーへ、仮想マシンが稼働している最中に転送する点にある。このプロセスは、仮想マシンのディスクファイルが保存されている共有ストレージの存在が前提となる。vMotionは仮想マシンそのものを移動させるが、仮想マシンが利用する仮想ディスクファイルは移行元と移行先の両方の物理サーバーからアクセス可能な共有ストレージ(例: SAN、NAS、vSANなど)上に配置されているため、物理的に移動させる必要がない。
vMotionの移行プロセスは以下のステップで進行する。まず、vCenter Serverという管理ツールがvMotionの指示を受け、移行元と移行先のESXiホスト間で仮想マシンの状態を同期させる準備を開始する。次に、移行元の物理サーバーは、仮想マシンのメモリの内容を移行先の物理サーバーへコピーし始める。この際、仮想マシンは引き続き稼働しており、メモリの内容は常に変化しているため、初回の全メモリコピーが完了した後も、コピー中に変更されたメモリページ(差分)を繰り返しコピーし続ける。この差分コピーのフェーズを複数回繰り返すことで、移行元と移行先のメモリ内容の差分を非常に小さくしていく。最終的に、差分が許容範囲内に収まると、仮想マシンのCPUレジスタの状態、デバイスの状態、そして最後の微細なメモリ差分が極めて短時間で転送される。この瞬間に、仮想マシンの実行は移行元から移行先へ切り替わる。この切り替えはミリ秒単位で完了し、ユーザーやアプリケーションから見ればサービスが停止したとは認識されない。移行先で仮想マシンが稼働を開始した後、ネットワークスイッチに対してARP Gratuitous(無償ARP)を送信し、仮想マシンのMACアドレスがどの物理ポートに接続されているか(どの物理サーバー上にいるか)をネットワークに通知することで、通信経路が正しく切り替わる。
vMotionを利用するための前提条件がいくつか存在する。まず、VMware vCenter Serverが環境内にデプロイされていること。vCenter ServerはvMotionを含むVMware仮想環境の集中管理を担う。次に、移行元と移行先の両方のESXiホストが同一の共有ストレージに接続されていること。これにより、仮想ディスクファイルを移動させる手間が省ける。さらに、ESXiホスト間にvMotion専用のネットワークインターフェースと、十分な帯域幅を持つネットワーク接続が確立されている必要がある。このvMotionネットワークは、仮想マシンのメモリ内容などを高速に転送するために利用され、一般的な仮想マシンの通信ネットワークとは分離して構築することが推奨される。また、移行元と移行先の物理サーバーのCPUは、VMwareが定義するCPU互換性リストに準拠しているか、EVC(Enhanced vMotion Compatibility)機能を利用してCPU機能を同等に揃える必要がある。これは、仮想マシンが特定のCPU機能に依存している場合に、移行先で問題なく稼働を継続できるようにするためである。
vMotionがもたらす具体的なメリットは多岐にわたる。最も大きなメリットは、前述の通り「サービス無停止でのメンテナンス」である。物理サーバーのハードウェア障害対応、老朽化した部品の交換、定期的なファームウェアやドライバーのアップデート、ESXiハイパーバイザー自体のバージョンアップグレードやパッチ適用などを、その上で稼働する重要なシステムを停止させることなく実行できる。これにより、計画的なダウンタイムが大幅に削減され、システムの可用性が向上する。次に、「リソースの最適化」が挙げられる。複数の物理サーバー間でリソース使用率に偏りが発生した場合、vMotionを利用して負荷の高いサーバーから低いサーバーへ仮想マシンを移動させることで、システム全体のパフォーマンスを均一化し、リソースの有効活用を促進できる。この機能は、vSphere DRS(Distributed Resource Scheduler)と連携することで、CPUやメモリの使用状況を監視し、自動的にvMotionを実行してリソースを最適化することも可能だ。また、「高可用性(HA)の向上」にも寄与する。物理サーバーに予兆故障が見られた場合、予防的にvMotionで仮想マシンを健全なサーバーへ移動させることで、潜在的なサービス停止リスクを回避できる。さらに、VMware vSphere HA(High Availability)機能と組み合わせることで、万が一物理サーバーが予期せず停止した場合でも、停止したサーバーで稼働していた仮想マシンを自動的に別の健全なサーバーで再起動させるまでの時間を短縮できる場合がある。近年では、異なるデータセンター間や、地理的に離れた場所にあるサイト間でもvMotionを実行できるLong Distance vMotionという技術も登場しており、災害対策やサイト間の負荷分散といった高度な運用にも利用されている。
注意点としては、vMotionの実行中は、vMotionネットワークを通じて大量のデータが転送されるため、ネットワーク帯域を消費するという点が挙げられる。十分な帯域幅がない場合、移行に時間がかかったり、他のネットワーク通信に影響を与えたりする可能性がある。また、非常に短時間ではあるものの、移行の瞬間にわずかなCPUオーバーヘッドが発生する可能性もゼロではないが、通常はアプリケーションレベルで感知できるほどの影響はない。セキュリティの観点からは、vMotionネットワークは重要な仮想マシンの状態を転送するため、他のネットワークトラフィックから分離し、適切なアクセス制限を設けることが重要だ。CPU互換性の要件は、異なる世代やメーカーのCPU間でのvMotionを困難にする場合があるため、事前に計画しておく必要がある。これらの考慮事項を踏まえ、適切に設計・運用することで、vMotionはITインフラの柔軟性と堅牢性を飛躍的に高める強力なツールとなる。