【ITニュース解説】Why Amazon Is Quietly Killing VMs in Favor of Firecracker
2025年09月18日に「Medium」が公開したITニュース「Why Amazon Is Quietly Killing VMs in Favor of Firecracker」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
Amazonは、EC2の基盤だった仮想マシン(VM)を、より軽量で高速に動く新しい技術Firecrackerへ移行している。これは、サーバーの効率を上げ、コストを削減するためだ。
ITニュース解説
システムエンジニアを目指す皆さんにとって、クラウドコンピューティングは避けて通れないテーマである。その中心に君臨するAmazon Web Services(AWS)が、これまで基盤としてきた技術から、より新しい技術へと舵を切ろうとしている。それが、仮想マシン(VM)から「Firecracker」への移行である。この変化は、クラウドが今後どのように進化していくのかを示唆する重要な動きだ。
まず、AWSの土台を築き上げてきた仮想マシン、そしてそれを使ったサービスであるEC2(Elastic Compute Cloud)について理解しよう。仮想マシンは、一台の物理的なコンピューターの中に、あたかも複数の独立したコンピューターが存在するかのように見せかける技術だ。それぞれの仮想マシンは、自身のオペレーティングシステム(WindowsやLinuxなど)を持ち、他の仮想マシンとは隔離された環境で動作する。これにより、一つの強力な物理サーバーのリソースを複数のユーザーやアプリケーションで効率的に共有できる。例えば、ある仮想マシンで問題が発生しても、他の仮想マシンには影響が及ばないといった「隔離性」が大きなメリットだった。また、必要に応じて仮想マシンを簡単に作成したり削除したりできる「柔軟性」も、クラウドサービスの普及を後押しした。
しかし、仮想マシンにはデメリットも存在する。それぞれの仮想マシンが完全なオペレーティングシステムを起動するため、起動に時間がかかる。また、それぞれの仮想マシンが独自のカーネル(オペレーティングシステムの核となる部分)や必要なライブラリなどを持つため、使用するメモリやストレージといったリソースの消費量も比較的大きい。さらに、複数の仮想マシンを管理し、物理ハードウェアと仮想マシンの間の橋渡しをする「ハイパーバイザー」と呼ばれるソフトウェア自体も、一定のオーバーヘッド(余分な処理やリソース消費)を伴う。
このような仮想マシンの課題に対し、新たな解決策として注目されたのが「コンテナ」だ。代表的なものにDockerがある。コンテナは、仮想マシンとは異なり、物理サーバーのオペレーティングシステムのカーネルを共有する。その上で、アプリケーションとその実行に必要なライブラリや設定だけをパッケージ化して実行する。これにより、仮想マシンに比べて圧倒的に起動が速く、リソース消費も少ないというメリットがある。アプリケーションをより軽量に、より効率的に実行できるため、開発者はコンテナを活用して、開発環境と本番環境の差異をなくしたり、マイクロサービスアーキテクチャを実現したりするようになった。
しかし、コンテナにも弱点がある。それは、仮想マシンほどの強力な隔離性がないことだ。複数のコンテナが同じオペレーティングシステムカーネルを共有しているため、もしカーネルに脆弱性があった場合、すべてのコンテナに影響が及ぶ可能性がある。クラウド環境で、異なるユーザーのコンテナを同じ物理サーバー上で実行する際には、このセキュリティ上の懸念が大きな課題となる。
クラウドの世界では、さらに「サーバーレスコンピューティング」という考え方が普及し始めた。AWS Lambdaに代表されるこのサービスは、開発者がサーバーの管理を一切意識することなく、コードの実行だけに集中できる。例えば、ウェブサイトへのアクセスがあったときだけコードが実行され、その実行時間やリソース消費に応じて課金される。このサーバーレス環境では、コードがリクエストに応じて「瞬時に」起動し、「柔軟に」スケール(規模を拡大・縮小)し、「安全に」隔離されている必要がある。従来の仮想マシンでは起動時間が長すぎて瞬時の実行には向かず、コンテナではセキュリティの隔離性が十分ではなかった。
そこでAmazonが開発したのが「Firecracker」である。Firecrackerは、仮想マシンとコンテナのそれぞれの利点を組み合わせることを目指した新しい仮想化技術だ。具体的には、Firecrackerは「MicroVM(マイクロ仮想マシン)」と呼ばれる、非常に軽量で高速に起動する仮想マシンを作成する。このMicroVMは、従来の仮想マシンと異なり、アプリケーションの実行に必要最低限のハードウェア(CPU、メモリ、ネットワーク、ストレージ)のエミュレーション(模倣)しか行わない。つまり、ゲストOSが動作するための最小限の環境を提供する。
Firecrackerは、Linuxカーネルに組み込まれている「KVM(Kernel-based Virtual Machine)」という仮想化技術を基盤としている。KVMは、Linuxカーネル自体をハイパーバイザーとして機能させ、仮想マシンの実行を高速化する。FirecrackerはこのKVMを効率的に利用することで、従来の仮想マシンでは考えられないほどの高速起動を実現している。MicroVMの起動時間は、ミリ秒単位で計測されるほどだ。
これにより、Firecrackerは仮想マシンが持つ「強力な隔離性」と、コンテナが持つ「軽量性」および「高速起動」という、これまで両立が難しかった要素を同時に実現した。各MicroVMは、それぞれ独立したLinuxカーネルを持つため、セキュリティが大幅に強化される。もしあるMicroVMが攻撃されたとしても、他のMicroVMや物理サーバー本体には影響が及ばない。これは、複数のユーザーのワークロードを同じ物理サーバー上で安全に実行するための、非常に重要な機能である。
現在、FirecrackerはAWSの主要なサーバーレスサービスであるLambdaや、コンテナ実行環境であるAWS Fargateの基盤技術として活用されている。これらのサービスでは、ユーザーが意識することなく、Firecrackerが提供するMicroVM上でコンテナや関数が実行されているのだ。これにより、LambdaやFargateは、リクエストに応じてコードを瞬時に起動し、必要に応じて何千、何万ものインスタンスに柔軟にスケールさせることが可能になっている。
ニュース記事のタイトルにある「VMを静かに殺している」という表現は、AmazonがEC2のような従来の仮想マシンサービスを完全に廃止するという意味ではない。むしろ、高速で軽量、かつ強力な隔離が必要とされる新しい種類のワークロード、特にサーバーレスやコンテナベースの環境において、従来の重い仮想マシンではなくFirecrackerのようなより最適な技術に置き換えていくという戦略を示している。これは、クラウドインフラストラクチャが、より効率的で安全、そしてスケーラブルな方向へと進化している証拠である。
システムエンジニアを目指す皆さんにとって、このような基盤技術の進化を理解することは非常に重要だ。クラウドのサービスが提供する機能の裏側には、常にこのような新しい技術が息づいている。Firecrackerの登場は、クラウド環境におけるリソースの利用効率、セキュリティ、そしてスケーラビリティの基準を大きく引き上げる画期的な一歩だと言えるだろう。