【ITニュース解説】You May Need an Anti-Corruption Layer
ITニュース概要
外部APIから取得したデータ構造(DTO)が、内部で利用したいデータ構造(VO)と異なる場合、Anti-Corruption Layer(ACL)が有効。ACLはDTOをVOに変換する役割を担い、不正なデータによるシステム全体への影響を防ぐ。型定義を明確にし、データ変換時のエラー処理を実装することで、コードの品質と保守性が向上する。
ITニュース解説
システム開発において、外部システムからのデータを受け取る際、そのデータの形式が必ずしも理想的とは限らない。特に、レガシーシステムや変更が難しい外部APIからのデータは、データの型が曖昧であったり、必要な情報が欠けていたりすることがある。このような状況で、そのまま外部データの形式に依存したコードを書いてしまうと、アプリケーション全体に悪影響が及ぶ可能性がある。これが「腐敗」であり、それを防ぐのが「Anti-Corruption Layer(ACL)」だ。 具体例として、あるバックエンドサービスからのレスポンスを表す`UserDTO`インターフェースを考えてみる。 ```typescript interface UserDTO { user_name?: string // optional... really user_age?: string // API sends age as string email_address?: string // legit or naw? created_at?: number // a string date... meh } ``` この例では、全てのプロパティがオプショナル(`?`)であり、`user_age`は文字列型、`created_at`は数値型(実際には日付文字列を表していると思われる)となっている。このような型定義に基づいてアプリケーションを構築すると、至る所でデータの存在チェックや型変換が必要になり、コードが複雑化し、保守性が低下する。 ACLは、このような問題を解決するために導入される。ACLは、外部システムから受け取ったデータ(この例では`UserDTO`)を、アプリケーション内部で利用するデータ形式(Value Object: VO)に変換する役割を担う。VOは、アプリケーションのドメインロジックに最適化された型であり、必要なプロパティが必須であり、適切な型で定義されている。 ACLの実装は、オブジェクト指向プログラミング(OOP)と関数型プログラミング(FP)で異なるアプローチをとる。OOPでは、ACLは通常、クラスとして実装される。このクラスは、`DTO`を`VO`に変換するメソッドと、`VO`を`DTO`に変換するメソッドを提供する。`DTO`から`VO`への変換は、データの検証や変換に失敗する可能性があるため、エラーハンドリングが必要となる。一方、`VO`から`DTO`への変換は、通常、失敗することはない。 ```typescript class UserMapper { toDomain(dto: UserDTO) => Result<User, MappingError> toDTO(user: User) => UserDTO } ``` FPでは、ACLは型と関数の組み合わせとして実装される。`DTO`と`VO`に対応する型を定義し、`DTO`から`VO`への変換を行う関数と、`VO`から`DTO`への変換を行う関数を定義する。`DTO`から`VO`への変換関数は、`Result`型などを利用して、変換の成功または失敗を明示的に表現することが推奨される。 ACLを導入することで、アプリケーションは外部データの形式に依存せず、自身のドメインロジックに集中できる。また、外部データの形式が変更された場合でも、ACLの実装を変更するだけで、アプリケーション全体への影響を最小限に抑えることができる。 ACLの実装においては、以下の点に注意する必要がある。 * **VOの定義:** VOは、アプリケーションのドメインロジックに合致するように、慎重に定義する必要がある。 * **エラーハンドリング:** `DTO`から`VO`への変換が失敗した場合のエラーハンドリングを適切に行う必要がある。 * **データの検証:** `DTO`から`VO`への変換時に、データの検証を行うことで、不正なデータがアプリケーション内部に侵入するのを防ぐことができる。ZodやArkTypeといったライブラリを使用すると、より効率的にデータ検証を実装できる。 * **部分的なデータの許容:** 外部APIから提供されるデータが不完全な場合、VOの型を安易にオプショナルにせず、Discriminated Unionsなどを活用して、データの状態を明確に表現することが重要になる。 ACLは、外部システムとの連携において、アプリケーションの品質を維持するための重要なパターンである。特に、変更が難しい外部APIを利用する場合や、レガシーシステムとの連携を行う場合には、ACLの導入を検討する価値がある。