【ITニュース解説】CVE-2025-5086: Dassault Systèmes DELMIA Apriso Deserialization of Untrusted Data Vulnerability
2025年09月12日に「Dev.to」が公開したITニュース「CVE-2025-5086: Dassault Systèmes DELMIA Apriso Deserialization of Untrusted Data Vulnerability」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
Dassault SystèmesのDELMIA Aprisoに、信頼できないデータを処理する際の脆弱性(CVE-2025-5086)が見つかった。これは遠隔から不正なプログラムを実行される危険がある。ベンダーの指示に従い対策を講じるか、製品利用を中止する必要がある。
ITニュース解説
今回のニュース記事で取り上げられているのは、「CVE-2025-5086」という識別番号を持つセキュリティ上の脆弱性についてである。このCVE番号は、ソフトウェアやシステムに見つかったセキュリティの欠陥を世界中で一意に識別するために使われる共通のIDだ。この番号が割り振られるということは、その脆弱性が広範囲に影響を及ぼす可能性があり、対応が求められる重要な問題であることを示している。
この脆弱性の正式名称は「Dassault Systèmes DELMIA Apriso Deserialization of Untrusted Data Vulnerability」という。これを理解するために、いくつかの専門用語を詳しく見ていく必要がある。
まず、「Dassault Systèmes(ダッソー・システムズ)」は、フランスに本社を置く大手ソフトウェア企業である。彼らは主に製造業向けの高度なソフトウェアソリューションを提供しており、製品設計、生産管理、シミュレーションなど、企業の生産活動の基盤となるシステムを開発している。 そのDassault Systèmesが提供する製品の一つが、「DELMIA Apriso(デルミア・アプリソ)」だ。これは、製造実行システム(MES)や製造オペレーション管理(MOM)と呼ばれるカテゴリに属するソフトウェアで、工場の生産ラインの効率化、品質管理、在庫の最適化、作業員の管理といった、製造プロセス全体のデジタル化と統合を支援する重要な役割を担っている。多くのグローバル企業で採用されており、そのシステムが停止したり、セキュリティが侵害されたりすれば、企業の生産活動に甚大な影響が出かねない。
次に、この脆弱性の種類である「Deserialization of Untrusted Data(信頼できないデータの非シリアル化)」について解説する。 コンピュータプログラムがデータを扱う際、あるいはネットワークを通じて別のプログラムやシステムにデータを送受信したり、ファイルに保存したりする際には、データを特定の形式に変換することがよくある。この変換プロセスを「シリアル化(Serialization)」と呼ぶ。例えば、プログラム内で複雑な構造を持つデータを、通信に適した一連のバイト列や、ファイルに書き込みやすいテキスト形式(JSONやXMLなど)に変換する作業だ。これにより、データは効率的に扱われる。 そして、シリアル化されたデータを受け取った側が、そのバイト列やテキスト形式のデータを、元のプログラムが理解できるようなオブジェクトの形に戻すプロセスを「非シリアル化(Deserialization)」と呼ぶ。例えるなら、宅配便で送るために複雑な形の品物を箱に詰めてシンプルな塊にするのがシリアル化、箱から出して元の状態に戻すのが非シリアル化、というイメージだ。
今回の脆弱性の核心は、「信頼できないデータ」を非シリアル化してしまうという点にある。通常、システムは自身が生成したデータや、明確に信頼できるソースから来たデータのみを非シリアル化することを想定している。しかし、もし外部の、特に攻撃者が意図的に細工した悪意のあるデータがシステムに送られ、それが何のチェックもなしに非シリアル化されてしまったら、どうなるだろうか。 この非シリアル化の過程で、攻撃者が埋め込んだ不正な命令やコードが、あたかも正規のプログラムの一部であるかのようにシステムによって解釈され、実行されてしまう可能性があるのだ。これが「Deserialization of Untrusted Data」脆弱性の原理であり、DELMIA Aprisoにこの問題が存在していることが確認された、というのが今回のニュースの内容である。
この脆弱性がもたらす最も危険な結果は、「Remote Code Execution(RCE: リモートからのコード実行)」である。RCEとは、攻撃者がネットワークを通じて、遠隔地から対象のコンピュータシステム上で任意のプログラムコードを勝手に実行できてしまう状態を指す。これは、セキュリティ上の脅威の中でも特に深刻なものとして位置づけられている。 RCEが可能になるということは、攻撃者がDELMIA Aprisoが稼働しているサーバーやシステムを、ほとんど完全に制御できる状態になることを意味する。具体的には、システム内の機密情報(顧客データ、製品設計図、生産計画など)を盗み出したり、システムのデータを改ざんしたり、最悪の場合、システムを破壊して機能停止に追い込んだりすることも可能になる。さらに、不正なプログラム(マルウェア)をインストールして、そのシステムを足がかりに企業の他のネットワークやシステムへと攻撃を広げる可能性もある。ニュース記事では、この脆弱性がランサムウェアキャンペーンで利用されたかどうかは「不明」とされているが、RCEの能力があれば、ランサムウェアを仕掛けることも技術的には可能となるため、極めて高いリスクを伴う。
このような状況は、DELMIA Aprisoを使用している製造業の企業にとって、事業継続に直接関わる重大な脅威となる。生産ラインの停止、企業秘密の漏洩、ブランドイメージの失墜など、多大な損害が発生する恐れがあるため、迅速かつ適切な対策が不可欠だ。
この脆弱性に対する推奨される対応策は、ニュース記事で明確に示されている。最も基本的な対策は、「Apply mitigations per vendor instructions(ベンダーの指示に従って緩和策を適用する)」ことだ。Dassault Systèmes社は、この脆弱性に関する公式のセキュリティアドバイザリ(勧告)を公開しており、そこには具体的な対策(例えば、ソフトウェアのアップデート、設定変更、パッチの適用など)が記載されているはずだ。企業はこれらの指示に速やかに従い、システムを安全な状態に保つ必要がある。
また、DELMIA Aprisoがクラウドサービスとして利用されている場合、「follow applicable BOD 22-01 guidance for cloud services(該当するBOD 22-01ガイダンスに従う)」という指示も出ている。BOD 22-01は、主に米国政府機関向けに発行されたサイバーセキュリティに関する指令だが、これはクラウド環境におけるセキュリティ対策のベストプラクティスを示唆していると解釈できる。具体的には、クラウドインフラの適切な設定、アクセス制御の厳格化、継続的な監視といった対策が考えられる。
そして、万が一ベンダーから有効な緩和策が提供されない、あるいは適用が不可能な状況である場合には、「discontinue use of the product if mitigations are unavailable(緩和策が利用できない場合は製品の使用を中止する)」という最終手段も提示されている。これは、リスクを回避するために、その製品の利用そのものを停止するという、企業にとって非常に重大な決断を意味する。通常、これは最後の選択肢として考慮される。
この脆弱性は、2025年9月11日に情報が公開され、2025年10月2日までに何らかの対策を講じることが求められている。システムエンジニアを目指す者として、このようなセキュリティ脆弱性の情報が公開された際には、その内容を正確に理解し、自身の担当するシステムや、将来関わる可能性のあるシステムにどのような影響があるのかを迅速に判断し、適切な対策を計画・実行できる能力が非常に重要となる。情報セキュリティは、現代のITシステム開発・運用において避けて通れない要素であり、常に最新の脅威と対策について学び続ける意識が求められる。