【ITニュース解説】How does Slack handle millions of messages?
2025年09月27日に「Medium」が公開したITニュース「How does Slack handle millions of messages?」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
ビジネス向けメッセージングプラットフォームSlackは、日々数百万ものメッセージを処理している。この記事では、Slackがいかにして大量のメッセージを効率的かつ安定してさばいているか、その裏側にある技術的な仕組みやアーキテクチャについて解説する。
ITニュース解説
Slackは、世界中のプロフェッショナルな現場で日常的に使われているメッセージングプラットフォームであり、数百万、数千万という膨大な量のメッセージを毎日、リアルタイムで処理している。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、このような大規模サービスが裏側でどのように動いているのか理解することは、将来のキャリアにおいて非常に役立つ知識となるだろう。ここでは、Slackが膨大なメッセージをどのように効率的かつ安定して処理しているのか、その技術的な仕組みについて解説する。
まず、Slackのようなサービスが直面する最大の課題は、「スケーラビリティ」と「可用性」だ。スケーラビリティとは、ユーザー数やメッセージ量が増加しても、システムが性能を維持しながら対応できる能力を指す。可用性とは、システムが常に利用可能であり、障害が発生してもサービスが停止しないようにする能力のことである。数多くのユーザーが同時にメッセージを送受信し、過去のメッセージを検索する状況を考えると、これら二つの要素はサービスの品質を左右する非常に重要な要素となる。
Slackのような大規模システムでは、一般的に「マイクロサービスアーキテクチャ」が採用されている。これは、一つの巨大なアプリケーションとして構築するのではなく、メッセージの送受信、ファイルの共有、ユーザー管理、通知といった個々の機能を独立した小さなサービス(マイクロサービス)に分割して開発・運用する手法だ。各マイクロサービスは特定の役割に特化し、互いにAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を通じて連携する。このアーキテクチャの利点は、特定の機能に問題が発生してもシステム全体に影響が及ぶのを最小限に抑えられること、そして特定のサービスだけをスケールアウト(サーバー台数を増やすことで処理能力を向上させること)しやすい点にある。
メッセージが送信される際の流れを考えてみよう。ユーザーがSlackクライアント(PCアプリやスマホアプリ)からメッセージを送信すると、そのリクエストはまず「APIゲートウェイ」と呼ばれるシステムのエントリポイントに到達する。APIゲートウェイは、外部からのリクエストを受け付け、適切なマイクロサービスにルーティングする役割を担う。メッセージ送信のリクエストは、メッセージを処理する専用のマイクロサービスに送られる。
このメッセージ処理マイクロサービスは、受け取ったメッセージを「メッセージキュー」と呼ばれる仕組みに格納する。メッセージキューは、大量のデータやリクエストを一時的に保存し、後から順次処理するためのバッファとして機能する。これにより、一時的に大量のメッセージが集中しても、システムがパンクすることなく、メッセージを確実に受け取り、後続の処理に渡すことができる。もし直接データベースに書き込もうとすると、データベースへの負荷が急増し、処理が遅延したり、最悪の場合サービスが停止したりする可能性があるため、メッセージキューはシステムの安定稼働に不可欠な要素と言える。代表的なメッセージキューにはApache Kafkaのようなものがある。
メッセージキューに格納されたメッセージは、別のマイクロサービスによって順番に取り出され、永続的な保存先である「データベース」に書き込まれる。Slackでは、過去のメッセージをいつでも検索できるように、全てのメッセージを確実に保存する必要がある。データベースの種類としては、リレーショナルデータベース(RDB)やNoSQLデータベースが利用されることが多い。RDBはデータの整合性を保つのに優れている一方、NoSQLデータベースは大量のデータを高速に読み書きすることや、水平方向へのスケール(シャーディングなど)が容易であるという特性を持つ。Slackのようなシステムでは、メッセージデータが膨大になるため、データを複数のデータベースサーバーに分散して保存する「シャーディング」という手法がよく用いられる。シャーディングにより、一つのデータベースサーバーにかかる負荷を分散し、データの読み書き性能を向上させることが可能になる。
メッセージがデータベースに保存された後、そのメッセージは関連するユーザーに配信される必要がある。リアルタイムでのメッセージ配信には、「WebSocket」のような技術が使われる。WebSocketは、サーバーとクライアント間で一度接続を確立すると、その後は双方向でリアルタイムにデータをやり取りできるプロトコルだ。これにより、新しいメッセージが届いた瞬間に、関連するチャンネルに参加しているユーザーのSlackクライアントにプッシュ配信される。また、ユーザーがオフラインだった場合には、プッシュ通知サービス(Apple Push Notification ServiceやFirebase Cloud Messagingなど)を通じてデバイスに通知が送られ、次にオンラインになった際にメッセージが同期される仕組みが機能する。
検索機能もSlackの重要な要素の一つだ。過去の膨大なメッセージの中から特定のキーワードを含むものを素早く見つけ出すためには、通常のデータベース検索では性能が不足する。そこで、「全文検索エンジン」が利用される。Elasticsearchなどがその代表例で、メッセージデータはデータベースに保存されると同時に、全文検索エンジンにもインデックス化(検索しやすいように整理・登録)される。これにより、ユーザーが検索クエリを入力すると、全文検索エンジンが高速に該当するメッセージを特定し、結果を返すことができる。
システムの安定性とパフォーマンスをさらに高めるために、「キャッシング」も多用される。頻繁にアクセスされるデータ(例えば、ユーザーのプロフィール情報やよく使われる絵文字リストなど)を一時的に高速なメモリ上に保存しておくことで、データベースへのアクセス回数を減らし、レスポンス速度を向上させる。
これら全てのインフラストラクチャは、Amazon Web Services (AWS) や Google Cloud Platform (GCP) といった「クラウドサービス」上に構築されていることが多い。クラウドサービスを利用することで、必要な時に必要なだけサーバーリソースを柔軟に増減させることができ、システムの運用コストを最適化しながら、高いスケーラビリティと可用性を実現できる。負荷分散装置(ロードバランサー)は、複数のサーバーにリクエストを均等に振り分け、特定のサーバーに負荷が集中するのを防ぐことで、システム全体の安定稼働に貢献する。
Slackが数百万のメッセージを処理できるのは、このようにマイクロサービスアーキテクチャ、メッセージキュー、分散データベース、リアルタイム通信技術、全文検索エンジン、キャッシング、クラウドインフラといった様々な先進的な技術要素を組み合わせ、それぞれの強みを最大限に活かした複雑かつ堅牢なシステムが裏側で稼働しているためだ。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、これらの技術要素がどのように連携し、大規模サービスを支えているのかを理解することは、将来のシステム設計や開発に大いに役立つだろう。