LANカード(ランカード)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
LANカード(ランカード)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
ランカード (ランカード)
英語表記
LAN card (ランカード)
用語解説
LANカードとは、コンピュータをネットワークに接続するために必要なハードウェア部品である。正式名称は「ネットワークインターフェースカード(Network Interface Card)」であり、略して「NIC(ニック)」や「イーサネットカード」とも呼ばれる。LANは「Local Area Network」の略で、限られた範囲のネットワークを指す。LANカードの最も基本的な役割は、コンピュータ内部のデジタル信号を、ネットワークケーブルを介して送受信できる電気信号、あるいは光信号に変換することにある。これにより、コンピュータはインターネットや社内ネットワークなどの他のデバイスとデータをやり取りできるようになる。
かつてはデスクトップPCの拡張スロットに別途増設する部品というイメージが強かったが、現在ではほとんどのコンピュータ、特にノートPCや多くのデスクトップPCのマザーボードに最初からLAN機能が内蔵されており、単体のカードとして意識されることは少なくなっている。しかし、内蔵されている機能も本質的にはLANカードと同じ働きをしており、より高速な通信速度が必要な場合や、無線LAN機能を追加したい場合などには、別途LANカードを増設することもある。
LANカードは、コンピュータがネットワーク上で通信するための「窓口」となる重要な役割を担う。その動作は、データの送受信という基本的な機能にとどまらず、様々な技術的な側面を含んでいる。
まず、データの送受信について説明する。コンピュータ内部で生成されたデジタルデータは、そのままではネットワークケーブルを流れることはできない。LANカードは、このデジタルデータをケーブルの種類(主にツイストペアケーブルや光ファイバー)に応じた電気信号や光信号に変換する役割を果たす。そして、受信した電気信号や光信号を再びデジタルデータに戻し、コンピュータのCPUやメモリが扱える形式にする。この変換処理は高速に行われ、データが途切れることなくスムーズに通信できるように設計されている。
データのやり取りには「パケット」という単位が用いられる。大きなデータは、LANカードによって小さなパケットに分割され、それぞれに送信元と宛先のアドレス情報が付与される。これらのパケットがネットワーク上を流れ、宛先のLANカードで受信された後、再び元のデータに再構成される。このパケット化の処理もLANカードが担う重要な機能の一つだ。
LANカードには、それぞれ「MACアドレス(Media Access Control address)」と呼ばれる物理アドレスが工場出荷時に割り当てられている。これは世界中で一意の識別子であり、ネットワーク上で各デバイスを特定するために使われる。IPアドレスが論理的なアドレスであるのに対し、MACアドレスはハードウェアに紐付いた物理的なアドレスであり、データリンク層での通信において非常に重要な役割を果たす。このMACアドレスを利用して、ネットワーク上の特定の機器へ確実にデータを届けることができる。
また、LANカードは単体で動作するのではなく、コンピュータのOS(オペレーティングシステム)と連携して機能する。この連携を可能にするのが「デバイスドライバー」というソフトウェアだ。ドライバーは、OSがLANカードを認識し、その機能を適切に制御するための「翻訳者」のような役割を果たす。新しいLANカードを増設した場合や、OSを再インストールした場合には、多くの場合、このドライバーをインストールする必要がある。
有線LANカードの代表的な接続ポートは、ツイストペアケーブルを用いる「RJ-45コネクタ」である。このコネクタを通じて、イーサネット規格に準拠した通信が行われる。通信速度は、10Mbps(メガビット毎秒)の昔の規格から、100Mbps、1Gbps(ギガビット毎秒)が一般的となり、最近では2.5Gbps、5Gbps、10Gbpsといったより高速な規格も普及し始めている。サーバー用途やデータセンターでは、25Gbps、40Gbps、100Gbpsといったさらに高速なLANカードも利用されている。速度が速いほど、大容量のデータを短時間で送受信できるため、用途に応じて適切な速度のLANカードを選ぶことが重要だ。
光ファイバーケーブルを使用するタイプのLANカードもあり、これは主に長距離伝送やノイズに強い環境が求められる場面で利用される。光ファイバー用のLANカードには、SFP(Small Form-Factor Pluggable)やSFP+などのモジュールを装着できるポートが搭載されており、LCやSCといった異なるコネクタ形状に対応する。
有線LANカードだけでなく、無線LAN(Wi-Fi)に対応したLANカードも存在する。これはアンテナを介して無線で電波を送受信し、ケーブルを使わずにネットワークに接続することを可能にする。無線LANカードは、IEEE 802.11という国際標準規格に基づいており、802.11a/b/g/n/ac/axといった世代が進むごとに通信速度や安定性が向上している。デスクトップPC用の拡張カードタイプや、ノートPCに内蔵されるM.2などの小型モジュール、手軽に利用できるUSB接続タイプなど、様々な形態がある。
LANカードの接続インターフェースとしては、デスクトップPCではマザーボードの「PCI Express(PCIe)」スロットに差し込むタイプが主流である。USB接続タイプは、手軽に既存のPCにネットワーク機能を追加したり、無線LAN機能を持たせたりする際に用いられる。
また、LANカードには付加的な機能を持つものもある。「Wake-on-LAN(WoL)」は、ネットワーク経由でコンピュータに起動信号を送ることで、遠隔地からコンピュータを起動させる機能だ。これはサーバーの管理や省電力に役立つ。また、「ジャンボフレーム」対応のLANカードは、一度に送れるパケットの最大サイズを大きくすることで、ネットワークの効率を高めることができる。さらに、「PoE(Power over Ethernet)」対応のLANカードでは、LANケーブルを通じてデータ通信と同時に電力供給も可能となり、IP電話やネットワークカメラなどの設置を簡素化できる。
システムエンジニアを目指す上では、LANカードが単なる「ケーブルを繋ぐ部品」ではなく、物理層からデータリンク層にかけての重要な役割を担い、コンピュータとネットワークを円滑に結びつけるための多様な技術が詰まったコンポーネントであることを理解することが不可欠である。通信速度、接続方式、付加機能などを考慮して、目的に合ったLANカードを選択し、適切に設定する知識は、ネットワーク構築やトラブルシューティングにおいて大いに役立つだろう。