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【ITニュース解説】Building an AI Game

2025年09月09日に「Dev.to」が公開したITニュース「Building an AI Game」について初心者にもわかりやすく解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

AIがお絵描きをリアルタイム判定するゲームの開発事例。AIをプレイヤーとして扱う設計で開発を効率化し、画像認識APIの呼び出し最適化とキャッシュ活用でコストを大幅削減。公平性や応答速度、障害対策といった実用上の課題と解決策を示した。(120文字)

出典: Building an AI Game | Dev.to公開日:

ITニュース解説

AI技術、特に画像の内容を理解する「画像認識AI」を、リアルタイムで進行するオンラインゲームに組み込むという挑戦的なプロジェクトが注目されている。このゲームは、複数のプレイヤーが同じ部屋に入り、出されたお題の絵を同時に描いて、その出来栄えをAIが判定し勝者を決めるというものだ。人間の創造性を機械がリアルタイムで評価するというアイデアは魅力的だが、その実現には多くの技術的な課題が存在した。

開発者が直面した主な課題は四つあった。第一に、プレイヤーが絵を描くその場でAIが素早く分析し、反応を返すための「速度」。第二に、単に正解か不正解かだけでなく、気の利いたフィードバックを返すための「品質」。第三に、プレイヤーごとに全く異なる画風や描き方を公平に評価するための「公平性」。そして最後に、AIの機能を利用するためにかかる外部サービスの利用料、いわゆるAPIコストをいかに抑えるかという問題である。これらは、AIをインタラクティブなサービスに組み込む際に共通して現れる本質的な課題だ。

これらの課題を解決するための最初のブレークスルーは、システムの構造、すなわちアーキテクチャの工夫にあった。一般的に、AI機能はゲーム本体とは別の独立したサービスとして構築されることが多い。しかし、この開発者はAIを外部の判定システムとしてではなく、ゲームルームに参加する「一人の架空のプレイヤー」として設計した。このAIプレイヤーは、他の人間プレイヤーと同様にゲームに参加し、各プレイヤーの描画状況をリアルタイムで受け取り、チャット機能を使ってコメントを返す。この設計により、既存のマルチプレイヤーゲーム用の通信基盤や音声ストリーミングの仕組みをそのままAIにも流用できた。さらに、もしAIのプログラムが停止しても、プレイヤーが回線切断から復帰するのと同じ仕組みで、自動的にゲームに再参加できるという利点も生まれた。

次に、最大の課題であったコストの削減に取り組んだ。初期の試作段階では、1ゲームあたりのコストが高額だったが、最適化を重ねることで劇的に圧縮することに成功した。このコスト削減を実現した核心技術は「キャッシュ」の活用である。プレイヤーが絵に少し線を追加したとしても、AIの認識結果、例えば「これは象の絵だ」という判定は変わらない場合が多い。そこで、一度AIが分析した画像とその結果をシステム内に一時的に保存しておき、似たような画像が送られてきた際には、再度AIに問い合わせるのではなく、保存した結果を再利用するようにした。また、プレイヤーが線を一本引くたびにAIを呼び出すのではなく、絵に意味のある変化が生じたと判断されたタイミングでだけ分析を依頼する「バッチ処理」という手法も導入した。これにより、AIへの問い合わせ回数を大幅に減らし、コストを劇的に削減できた。

AIによる判定の公平性を保つことも重要な課題だった。AIが他のプレイヤーの絵を見たり、誰が描いた絵かを知ってしまうと、判定に偏りが生じる恐れがある。この問題を解決するため、各プレイヤーの絵を分析する際には、他のプレイヤーの絵や作者といった文脈情報を一切与えず、完全に独立した状態で一枚ずつAIに渡す方式を採用した。これにより公平性は担保されたが、分析の回数が増えるためコストが上がるというトレードオフも存在した。また、勝者の判定も単純ではなかった。例えばお題が「車」の時に、プレイヤーが「自動車」と認識される絵を描いた場合も正解としなければならない。このような同義語の問題を解決するため、開発者は単純な文字列の一致判定ではなく、AI自身に判断を委ねることにした。AIに正解のお題とプレイヤーの絵からAIが推測した単語を渡し、それらが意味的に一致するかを判断させることで、より人間に近い柔軟な正誤判定を実現した。

機能面だけでなく、ユーザー体験の向上にも力が注がれた。AIを単なる判定ツールではなく、ゲームを盛り上げるキャラクターとして位置づけ、宇宙をテーマにしたゲームの雰囲気に合わせ、映画に登場するAIのような、知的で少し不気味だが魅力的な個性を持たせた。このキャラクター性が、プレイヤーにとってAIとの対話そのものを楽しみにさせる要素となった。しかし、技術的な現実として、画像認識AIの処理には1〜3秒程度の時間がかかり、これはリアルタイムゲームにおいては無視できない遅延となる。そこで、プレイヤーの描画操作は即座に画面に反映させつつ、時間のかかるAIの分析処理は裏側で並行して実行する「非同期処理」の仕組みを導入した。これにより、プレイヤーは遅延を感じることなく、スムーズにゲームをプレイできる。さらに、外部APIの利用回数制限やサービスの一時的な障害、ネットワークの切断など、オンラインサービスにはつきものの問題に最初から備える「障害を前提とした設計」も不可欠だった。

このプロジェクトは、AIをリアルタイムサービスに組み込む際の貴重な教訓を示している。プレイヤーに不信感を抱かせない「公平性」の確保、高価なAI利用コストを抑えるための「キャッシュ」の徹底、ユーザーを惹きつける「キャラクター性」の重要性、そして安定稼働のための「障害を前提とした設計」が成功の鍵であった。また、最高の品質を追求するのではなく、コストと性能の最適なバランスを見つけることが、個人開発においては特に重要であることも示された。この事例は、AI技術がゲーム開発だけでなく、教育やクリエイティブな分野においても新たな可能性を切り拓くことを予感させるものであり、これからシステム開発を志す者にとって、多くの学びを含んでいる。

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