【ITニュース解説】Secure Your APIs with Apache APISIX + SafeLine WAF

2025年09月10日に「Dev.to」が公開したITニュース「Secure Your APIs with Apache APISIX + SafeLine WAF」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

Apache APISIXはAPI処理に優れるが、SQLインジェクションやXSS等の攻撃は防げない。APISIX v3.5.0以降にSafeLine WAFを連携させると、これら悪意あるリクエストをリアルタイムで検知・ブロックし、APIの安全性を高められる。高速なAPIゲートウェイに、高度なセキュリティを手軽に追加できるオープンソースソリューションだ。

ITニュース解説

現代のITシステムにおいて、アプリケーションがインターネットを通じて外部とやり取りする際に、API(Application Programming Interface)が重要な役割を果たしている。APIは、異なるソフトウェア同士が安全かつ効率的に情報を交換するための窓口のようなものだ。しかし、この窓口をインターネットに公開すると、さまざまな種類の悪意ある攻撃にさらされるリスクが常に存在する。

Apache APISIXのようなAPIゲートウェイは、このAPIの管理と運用を非常に効率的にしてくれるツールだ。これは、APIへのアクセスを制御し、大量のリクエストを適切に各サーバーに振り分け(負荷分散)、通信経路を整理(ルーティング)したり、システムの動作状況を監視(オブザーバビリティ)したりする機能を高速かつ柔軟に提供する。しかし、APISIXは高性能な交通整理役ではあるものの、その交通(リクエスト)の中に悪意ある意図が隠されていないかを詳細に検査し、攻撃を阻止する機能は本来の役割ではない。

具体的にどのような攻撃かというと、例えば「SQLインジェクション」がある。これは、ウェブアプリケーションの入力フォームに不正なデータベース命令(SQL文)を混ぜ込み、データベースから情報を盗み出したり、改ざんしたりする攻撃だ。また、「クロスサイトスクリプティング(XSS)」は、ウェブサイトに悪意のあるスクリプトを埋め込み、サイトを訪れたユーザーのブラウザ上で実行させることで、セッション情報などを盗み出す攻撃だ。「サーバーサイドリクエストフォージェリ(SSRF)」は、サーバーに意図しないリクエストを送らせて、内部ネットワークの情報を引き出したり、外部のサービスを攻撃したりする。さらに、自動化された「ボット」による不正なアクセスや、システムに侵入して任意のコードを実行させる「リモートコード実行(RCE)」といった高度な攻撃も存在する。これらの攻撃は、APIがインターネットに公開されている限り、いつか必ず直面する可能性のある脅威である。

このようなAPIのセキュリティ上の課題を解決するために登場するのが、Webアプリケーションファイアウォール、略してWAF(ワフ)と呼ばれるセキュリティ製品だ。ニュース記事では、特にSafeLine WAFがこの役割を担うと紹介されている。SafeLine WAFは、APISIXのようなAPIゲートウェイでは防ぎきれない、上記のような様々な悪意あるリクエストを検知し、ブロックする専門のセキュリティエンジンとして機能する。APISIXのバージョン3.5.0以降では、「chaitin-waf」という特別なプラグインを利用することで、SafeLine WAFをAPIゲートウェイに直接統合し、リアルタイムで攻撃を防ぐことができるようになった。

では、WAFは具体的にどのように攻撃を防ぐのだろうか。記事に示された例を見てみよう。もし、ウェブサイトのログインフォームに「username=admin' OR '1'='1」というリクエストが送られてきた場合、APISIXはこれを単なる有効なログイン試行と認識し、バックエンドのサーバーに転送してしまう可能性がある。これは典型的なSQLインジェクションの試みで、正しく処理されると、パスワードを知らなくても認証を迂回してログインできてしまう恐れがある。しかし、SafeLine WAFがAPISIXと連携していれば、このリクエストの内容を深く分析し、「これはSQLインジェクションである」と判断する。そして、バックエンドサーバーに到達する前に、この悪意あるリクエストを即座にブロックし、攻撃者には「403 Forbidden」(アクセス拒否)のメッセージを返すのだ。

SafeLine WAFの優れた点は、単なる文字のパターンマッチング(正規表現)に頼るのではなく、「セマンティックレベル」での攻撃検知を行うことにある。これは、リクエストの文脈や意味を理解し、そのリクエストが通常の振る舞いから逸脱しているかどうかを判断する高度な技術だ。これにより、誤って正常なリクエストをブロックしてしまう「誤検知」が少なく、同時に未知の攻撃パターンにも対応できる可能性が高まる。

この強力なセキュリティシステムを構築するための統合手順は、システムエンジニアを目指す初心者にとっても比較的理解しやすい。まず、SafeLine WAFを特定のネットワークポート(例: 8000番ポート)で動作するように設定し、外部からのアクセスを受け付けられるようにする。これは、SafeLine WAFがリクエストを傍受し、分析するための準備だ。次に、Apache APISIXをDockerという仮想化技術を使って起動する。Dockerは、アプリケーションとその実行に必要なものをすべてまとめた「コンテナ」と呼ばれる単位で動かすため、環境構築が非常に簡単になる。APISIXは最新バージョン3.5.0を使用する。

SafeLine WAFとAPISIXがそれぞれ準備できたら、APISIXに対してSafeLine WAFがどこで動いているかを教えてあげる。これは、APISIXの管理用APIを使って、「chaitin-waf」プラグインの設定としてSafeLine WAFのネットワークアドレスとポート番号を登録する作業だ。これにより、APISIXは保護したいリクエストをSafeLine WAFに送り込めるようになる。最後に、APISIXが受け取る全てのリクエスト(または特定のリクエスト)に対して、「chaitin-waf」プラグインを適用するように設定する。これで、APIゲートウェイが受け取ったリクエストは、まずSafeLine WAFでセキュリティチェックを受けてから、目的のバックエンドサーバーに転送されるようになる。

この設定が完了したら、実際にテストを行う。通常のリクエストを送ってみると、問題なくバックエンドサーバーに到達し、正常な応答が返ってくる。次に、先ほど例に挙げたようなSQLインジェクションの試みを模擬したリクエストを送ってみる。すると、APISIXはリクエストをSafeLine WAFに渡し、SafeLine WAFが悪意ある内容を検知してブロックするため、「403 Forbidden」という応答が返ってくる。攻撃はバックエンドサーバーに到達することなく、APIゲートウェイの段階で食い止められるのだ。SafeLine WAFの管理画面(ダッシュボード)を確認すれば、このブロックされたイベントがきちんと記録されていることも確認できる。

このようにApache APISIXとSafeLine WAFを組み合わせることは、開発者にとって非常に多くのメリットをもたらす。APISIXが提供するAPI管理の「超高速な処理能力」と、SafeLine WAFが提供する「高度なセマンティックセキュリティエンジン」が一体となることで、SQLインジェクション、XSS、SSRF、リモートコード実行、そして悪意あるボットの活動など、多様な種類のサイバー攻撃からAPIを強力に保護できる。さらに、このソリューションは外部のクラウドサービスに依存せず、100%オープンソースとして提供されており、開発者が自由に利用し、カスタマイズできる点も大きな魅力だ。自分たちの手でセキュリティを管理し、安心してAPIを運用したいと考えるシステムエンジニアにとって、この組み合わせは非常に強力で開発者フレンドリーな選択肢となるだろう。ぜひ実際に自分で試してみて、その効果を体験することをおすすめする。