【ITニュース解説】The Bug That Took Me 3 Days to Fix (And the Lesson It Left Behind)

2025年09月05日に「Medium」が公開したITニュース「The Bug That Took Me 3 Days to Fix (And the Lesson It Left Behind)」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

ある開発者が3日間も悩まされたバグの原因は、たった一つのセミコロンの欠落だった。この経験は、熟練者でも些細なミスでつまずく可能性を示唆する。プログラミングでは、基本に忠実で細部まで注意深く確認することが極めて重要である。

ITニュース解説

ソフトウェア開発の世界では、時にたった一つの文字が原因で、システム全体が停止してしまうことがある。今回は、ある開発者が3日間もの時間を費やして解決した一つのバグと、そこから得られた貴重な教訓について解説する。この事例は、システムエンジニアを目指す上で非常に重要な示唆に富んでいる。

ある開発者が、外部のAPIからデータを取得し、それを画面に表示するという、ごく一般的な機能の開発を担当していた。開発は順調に進み、自身のコンピューター、いわゆる「ローカル環境」では、すべての機能が設計通りに完璧に動作することを確認した。しかし、そのプログラムを不特定多数のユーザーが利用する公開用のサーバー、つまり「本番環境」へ移行したところ、予期せぬ問題が発生した。データが正しく表示されず、画面のレイアウトも崩れてしまったのである。

問題解決、すなわちデバッグのプロセスが始まった。まず開発者が疑ったのは、ローカル環境と本番環境の設定の違いだ。環境ごとに異なる設定値を管理することはよくあるため、これが原因である可能性は高いと考えられた。しかし、設定ファイルなどを注意深く確認したが、問題は見つからなかった。次に疑ったのは、データの取得元であるAPIの応答内容が、環境によって異なる可能性だ。これもまた、開発用と本番用でAPIの挙動が違うケースがあるためだ。しかし、専用のツールを使ってAPIの応答を直接確認したところ、ローカル環境でも本番環境でも全く同じデータが返ってきていることがわかり、これも原因ではないと判断された。

これらの調査から、問題は環境設定や外部要因ではなく、自分自身が書いたプログラムコードの内部に潜んでいることが確実となった。開発者は、プログラムの動作記録である「ログ」をコードの各所に仕込み、データがどのように処理され、変化していくのかを追跡した。その結果、本番環境でのみ、データの処理途中で値が失われ、未定義の状態になっていることが判明した。これにより、問題箇所はフロントエンド、特にAPIから受け取ったデータを加工するJavaScriptのコード部分に絞り込まれた。しかし、そのコードの処理ロジックを何度見直しても、論理的な誤りは見当たらない。同僚にもコードレビューを依頼したが、誰も明確な原因を指摘することはできなかった。時間だけが過ぎ、問題は完全に手詰まりの状態に陥った。

デバッグ開始から3日目、開発者は原点に立ち返り、問題のコードを先入観なく、一行ずつ、さらには一文字ずつ丁寧に見直すことにした。そしてついに、長らく潜んでいたバグの原因を発見する。原因は、JavaScriptのオブジェクトを定義する際の、最後の要素の後ろに付けられた余分なカンマであった。具体的には「{ a: 1, b: 2, }」という記述の、最後の「,」が問題を引き起こしていた。

この「末尾カンマ」と呼ばれる記述は、比較的新しいJavaScriptの仕様では文法的に正しいものとして認められている。そのため、開発者のローカル環境で使われていた最新のWebブラウザは、このコードを問題なく解釈し、実行できていた。ところが、本番環境では、コードをインターネット経由で高速に配信するために、ファイルサイズを小さく圧縮したり、古いブラウザでも動作するように変換したりする「ビルド」という処理が行われていた。この処理を担当するビルドツールが、この末尾カンマの構文に対応していなかったのだ。その結果、ビルドツールがこれを構文エラーと判断し、JavaScriptファイルの生成に失敗、もしくは不完全なファイルを生成してしまっていた。これが、本番環境でのみプログラムの実行が途中で停止していた本当の理由だった。余分なカンマを一つ削除するだけで、3日間も開発者を悩ませた問題は嘘のように解決した。

この経験から得られた教訓は、エンジニアにとって極めて重要である。第一に、開発環境と本番環境の一貫性を保つことの大切さだ。今回のように、手元の環境では問題なく動作しても、ビルドプロセスや実行されるブラウザのバージョンが異なる本番環境では、予期せぬエラーが発生することがある。可能な限り両者の環境を近づける努力が必要となる。第二に、コードの品質を自動的にチェックするツールの活用だ。ESLintに代表される「リンター」と呼ばれるツールを導入していれば、このような構文上の問題をコードを書いている段階で自動的に検出し、警告してくれる。これにより、バグが生まれる前の段階で問題を未然に防ぐことができたはずだ。そして最後に、どんな些細なことでも原因になりうるという謙虚な姿勢と、基礎知識の重要性である。「こんな単純なミスのはずがない」という思い込みは、問題発見を遅らせる最大の敵となる。プログラミング言語の仕様や、関連するツールの挙動といった基礎的な知識が、最終的に複雑な問題を解決する鍵となることを、この事例は教えている。

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