【ITニュース解説】Why Meta Ditched Off-the-Shelf Databases and Built RocksDB: The Secret to Handling Petabytes of…

2025年09月08日に「Medium」が公開したITニュース「Why Meta Ditched Off-the-Shelf Databases and Built RocksDB: The Secret to Handling Petabytes of…」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

Metaは、一般的なデータベースでは対応できない膨大なデータを効率的に処理するため、RocksDBという独自のデータベースを開発した。これにより、ペタバイト級の大量データをスムーズに扱えるようになった。

ITニュース解説

Metaのような巨大なIT企業が、なぜ市場に出回っている既存のデータベースを使わずに、独自に「RocksDB」というシステムを開発する必要があったのか、その理由とRocksDBの仕組みについて解説する。

現代のデジタルサービスでは、膨大な量のデータを高速に処理し、常に変化するユーザーの要求に応える必要がある。Facebookを始めとするMetaのサービス群は、文字通りペタバイト級(1ペタバイトは1000テラバイト)のデータを扱っており、日夜何十億ものユーザーからの投稿、メッセージ、写真、動画といった書き込みと、それらを閲覧する読み込みが繰り返されている。

一般的なデータベース、特にリレーショナルデータベースは、データの整合性を厳密に保つことを得意としている。しかし、Metaのような規模になると、既存のデータベースにはいくつかの限界が露呈する。 一つ目の限界は「スケールアップの難しさ」だ。データベースの性能を高めるには、より高性能なCPU、大容量のメモリ、高速なストレージを搭載したサーバーに交換する「スケールアップ」が考えられる。しかし、単一のサーバーの性能には物理的な限界があり、どこかで頭打ちになる。 二つ目の限界は「スケールアウトの難しさ」である。複数のサーバーにデータを分散させて処理する「スケールアウト」は、多くのデータを扱う上で不可欠な技術だが、既存のリレーショナルデータベースでデータの整合性を保ちながら大規模な分散環境を構築するのは非常に複雑で効率が悪い。特に、全ての操作がリアルタイムで一貫していることを保証する「ACID特性」を分散環境で厳密に維持しようとすると、性能が著しく低下することが多い。 さらに、Metaのようなサービスでは、書き込みが極めて頻繁に発生し、しかもその書き込みは常に最新のデータとして利用される必要がある。同時に、過去のデータに対する読み込みも膨大だ。既存のデータベースは、このような「書き込み集中型」かつ「読み込みも多い」という特定のワークロードに対して、最適化されていない場合が多く、期待する性能や応答速度が得られないことがあった。コスト面でも、商用の高性能データベースは高価であり、Metaのような規模で利用するには膨大な費用がかかるという問題もあった。

このような背景から、Metaは自社の特定のニーズに合わせた、より効率的でスケーラブルなデータストレージソリューションを必要とした。そこで開発されたのが「RocksDB」である。RocksDBは、LSM-tree(Log-Structured Merge-tree)というデータ構造を核とした、組み込み型のKey-Valueストアだ。Key-Valueストアとは、データを「キー(鍵)」と「バリュー(値)」のペアとして保存するシンプルなデータベースの形態で、リレーショナルデータベースのように複雑なテーブル構造を持たず、高速な読み書きに適している。特に、SSD(Solid State Drive)のような高速なストレージの特性を最大限に活かすように設計されているのが大きな特徴だ。

RocksDBの心臓部であるLSM-treeは、データの書き込みと読み込みの効率を飛躍的に高める仕組みを持っている。 データが書き込まれる際、まずメモリ上に「Memtable(メンテーブル)」と呼ばれる領域に一時的に記録される。Memtableは、書き込みを非常に高速に行うことができるインメモリのデータ構造だ。これは、ディスクへの直接書き込みが遅いという課題を克服するための工夫である。 Memtableがいっぱいになると、その内容はソートされた状態でディスク上の「SSTable(Sorted String Table)」と呼ばれるファイルに書き出される。このSSTableはImmutable(不変)であり、一度書き込まれたデータは変更されない。新しいデータや更新データは、常に新しいMemtableやSSTableとして追加されていく。 ディスク上には複数のSSTableが存在するが、これらはさらに複数の「レベル」に分けられて管理される。時間が経つと、これらのSSTableは定期的に「コンパクション(マージ)」という処理によって統合・整理される。コンパクションでは、同じキーを持つ古いデータは新しいデータに置き換えられて削除され、データが圧縮され、ストレージ効率が向上する。また、バラバラに存在していたSSTableが効率的に結合されることで、データの検索性能も維持される。 データを読み込む際には、まず最も新しいデータが含まれるMemtableを探し、次にディスク上の最新のSSTable、そして古いSSTableへと順に検索していく。この多段階の検索プロセスにより、常に最新かつ正確なデータが効率的に取得できる。

RocksDBが提供する主要な利点は、その高い「スループット」と「低レイテンシ」にある。スループットとは単位時間あたりに処理できるデータの量、レイテンシとは要求から応答までの時間のことで、RocksDBはどちらも優れている。LSM-treeアーキテクチャのおかげで、大量の書き込みリクエストを高速に処理できるだけでなく、SSDの性能を最大限に引き出すことで、データアクセスにかかる時間を短縮している。さらに、コンパクションによる効率的なデータ圧縮機能は、ストレージコストの削減にも貢献する。また、RocksDBは非常に柔軟性が高く、開発者が様々なパラメータを細かく設定することで、特定のアプリケーションのワークロードに合わせて最適化できる。万が一システムがクラッシュした場合でも、「WAL(Write-Ahead Log)」という仕組みによって、データがディスクに書き込まれる前にログに記録されるため、データの損失を防ぎ、安全な復旧が可能だ。

RocksDBは、Meta社内のFacebook Messenger、Instagram、WhatsAppなど、書き込みと読み込みが膨大な主要サービスで基盤技術として活用されている。これらのサービスは、世界中のユーザーからのリアルタイムなインタラクションを支えるために、RocksDBの高い性能と信頼性を必要としている。また、RocksDBはオープンソースとして公開されているため、Metaだけでなく、Apache Cassandra、Apache Kafka Streams、TiDBなど、様々なオープンソースプロジェクトや商用データベース製品のストレージエンジンとしても採用されている。これらのシステムは、独自の機能を持ちながらも、低レベルのデータ管理層としてRocksDBを利用することで、高い性能と効率を実現している。

このように、RocksDBは既存の汎用データベースでは対応しきれない、大規模で高速なデータ処理の要求に応えるために生まれた。LSM-treeという革新的なデータ構造と、SSDに最適化された設計により、ペタバイト級のデータを効率的かつ信頼性高く扱うことを可能にし、現代のデータ集中型アプリケーションの基盤として、その価値を確立している。

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