【ITニュース解説】They advised me to approach it like an engineer, so I requested the requirements.

システムエンジニアを目指す上で、「エンジニアのように考える」という言葉は非常に重要だ。それは単に最新の技術を習得することだけを指すのではなく、目の前の課題に対し、論理的かつ体系的にアプローチし、最適な解決策を導き出す思考プロセス全体を意味する。このエンジニア的思考の核心にあるのが「要求（Requirements）」という概念であり、何か新しいシステムや製品を開発する際、まず「何が求められているのか」を徹底的に理解し、明確にすることが出発点となる。

多くの人は、何かを作ろうとするとき、すぐに「どうやって作るか」という技術的な側面に目を向けがちだ。しかし、エンジニア的思考では、その前に「何を作るべきか」を深く問う。「こんな機能が欲しい」「このプロセスを自動化したい」といった顧客やユーザーからの要望は、最初は漠然としたアイデアであることがほとんどだ。もし、これらの漠然としたアイデアをそのまま開発に取りかかると、完成したものが「思っていたものと違う」という結果になったり、開発の途中で方向性が大きく変わってしまい、手戻りや無駄なコスト、時間のロスが発生したりするリスクが高まる。

このような問題を避けるために採用されるのが「要求駆動アプローチ」だ。これは、システムの開発を始める前に、顧客やユーザーの真のニーズを徹底的に掘り下げ、それを具体的な「要求」として明確に定義し、その要求を基盤として開発を進める方法である。このアプローチにより、開発チームと顧客の間で共通の理解を形成し、開発の目標を明確にできるため、手戻りを最小限に抑え、より効率的に、そして最終的に顧客が本当に必要とする、価値のあるシステムを提供できる可能性が高まる。

この要求駆動アプローチを実現するための具体的な活動が「要件定義（Requirement Engineering）」である。要件定義は、一連の専門的なプロセスで構成される。

まず「要求の抽出」を行う。これは、システムに関わる全ての関係者、つまり顧客、エンドユーザー、業務担当者などから、システムに何を期待しているのか、どのような課題を解決したいのかといった情報を収集する段階だ。インタビュー、アンケート、ワークショップ、既存ドキュメントの分析など、様々な手法を用いて、彼らの表面的な言葉だけでなく、その背景にある真の目的や願望を深く掘り下げる。この段階で、できるだけ多くの情報を集め、多角的な視点から要求を理解することが重要だ。

次に「要求の分析」に進む。収集された要求は、しばしば曖昧な表現であったり、互いに矛盾する内容を含んでいたり、優先順位が不明確であったりする。これらの情報を整理し、曖昧な点を具体化し、矛盾を解消し、優先順位を明確にする作業が必要となる。例えば、「システムは高速であること」という要求は曖昧すぎるため、「特定の検索機能は3秒以内に結果を表示すること」のように、客観的に測定可能な形で具体化する。このプロセスを通じて、要求の質を高め、理解度を深める。

そして「要求の仕様化」を行う。分析され明確になった要求は、誰が読んでも同じように理解できるように、明確な言葉で文書として記述される。この文書が「要件定義書」だ。要件定義書には、システムがどのような機能を持つべきかを示す「機能要件」と、システムの性能、セキュリティ、信頼性、ユーザビリティといった、システムの品質に関わる「非機能要件」の両方を詳細に記述する。図や表を用いて視覚的に分かりやすく表現することも多い。

「要求の検証」も極めて重要なプロセスだ。作成された要件定義書が、顧客の真のニーズを正確に反映しているか、技術的に実現可能か、法規制や社内ポリシーに適合しているか、そして開発チームが内容を十分に理解できるかなどを確認する。顧客とのレビューを通じて、内容に誤りや不足がないかを確認し、最終的な合意を得る。この段階で認識のずれを解消することで、後工程での手戻りを大幅に削減できる。

最後に「要求の管理」がある。システム開発は長期にわたることも多く、その過程で、外部環境の変化や新しい知見によって要求が変化することは避けられない。新しい要求が追加されたり、既存の要求が変更されたり、あるいは削除されたりする。これらの変更を適切に記録し、変更がシステム全体に与える影響を評価し、関係者に周知する仕組みが必要だ。要求の変更履歴を管理し、常に最新の状態を保つことで、システムが混沌と化すことを防ぎ、一貫性のある開発を維持できる。

このように、要求はシステム開発のあらゆる段階において、羅針盤のような役割を果たす。明確な要求が定義されていれば、設計フェーズでは、その要求を満たすための最適なアーキテクチャやコンポーネントを選択できる。開発フェーズでは、何を実装すべきかが明確になり、無駄な作業を省き、効率的にコードを書ける。テストフェーズでは、システムが要求通りに動作するかどうかを正確に検証できる。

エンジニアのように考えるとは、単に技術的なスキルを持つだけでなく、顧客の課題を深く理解し、その課題を解決するための最適なシステムを設計・開発するための思考法を身につけることである。要求駆動アプローチと要件定義のプロセスを理解し、実践する能力は、システムエンジニアとして成功するために不可欠なスキルとなる。この思考法を身につけることで、開発の効率性が向上し、より品質の高いシステムが実現され、最終的に顧客満足度を高めることができる。単に技術を学ぶだけでなく、顧客の真のニーズを捉え、それを具体的な形で実現するための思考プロセスを学ぶことが、優れたエンジニアへの第一歩となる。