【ITニュース解説】Building a DREX on Stellar Testnet: Tokenizing the Digital Real in Rust
2026年10月31日に「Dev.to」が公開したITニュース「Building a DREX on Stellar Testnet: Tokenizing the Digital Real in Rust」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
ブラジルの中央銀行デジタル通貨DREXを、Stellar Testnet上でRust言語とSorobanスマートコントラクトで試作した。中央銀行の権限や送金制御を実装し、高速・低コスト・安全に動作することを証明した。プログラム可能な国家発行通貨の実現可能性を示す。
ITニュース解説
ブラジル中央銀行が発表したDREX(デジタルレアル)は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の一種である。CBDCとは、各国の中央銀行が発行する法定通貨のデジタル版であり、現金の利便性とデジタル決済の効率性を兼ね備えることを目指している。多くの開発者がDREXの公式開発キット(SDK)を待つ中、ある開発者は独自にそのプロトタイプを構築した。彼は20年以上にわたるブロックチェーンインフラ構築の経験を活かし、Stellarテストネット上でSorobanスマートコントラクトをRust言語で記述し、機能的なDREXトークンを試作したのである。この挑戦の目的は、規制が整う前に、プログラマブルなCBDCが低コストかつ高スループットな分散型台帳上で動作することを証明することだった。
彼がDREXのプロトタイプにStellarとSorobanを選んだのには、明確な理由がある。DREXの参照アーキテクチャにはHyperledger Besuが使われているが、彼はStellarの最終性(ファイナリティ)とコストプロファイルが、小売向けのCBDCにより適しているという仮説を検証したかったのだ。Stellarの優れたパフォーマンスは無視できない。トランザクションの決済には約5秒しかかからず、手数料も約0.00001ドルと非常に低い。また、Stellarネットワークはこれまでも混雑することなく、毎日数百万件の操作を処理してきた実績がある。
StellarのスマートコントラクトプラットフォームであるSorobanは、Rust言語で記述できるため、DREXが求めるプログラマビリティを実現できた。具体的には、口座凍結、コンプライアンスフック、供給量制御といった機能が、Stellarの高速性を損なうことなく実現可能であった。Rust言語の採用は、特に重要な決定であった。Rustが持つメモリ安全性とゼロコスト抽象化という特性は、国家の通貨を扱う上で非常に重要である。例えば、たった一つのオーバーフローバグが架空の通貨を勝手に作り出してしまうような事態を防ぐことができるためだ。
彼はプロトタイプを三つのスマートコントラクトを中心に構築した。一つ目は「トークンコントラクト」であり、これがデジタルレアルそのものを表現する。二つ目は「パーミッションレジストリ」で、中央銀行が発行者としての権限をシミュレートする役割を担う。そして三つ目は「送金制御モジュール」で、KYC(顧客確認)のようなホワイトリスト方式を強制し、承認されたユーザーのみが送金できるように制御する。
Real Digitalトークンの実装において、中心となる「発行(mint)」機能は、トークンの新規作成を管理する。この機能の重要な設計判断は、中央銀行のような管理者のみが通貨を発行できるという厳格な認証メカニズムを導入したことである。具体的には、require_auth()という認証呼び出しと、管理者であることを確認するチェックを組み合わせた。これは、現実のDREXにおいてブラジル中央銀行のみが通貨を発行できるという権限モデルを明示的に模倣したものであり、分散型の発行を許さない仕組みである。
コンプライアンスを強化するため、彼は送金機能に特別なラッパーを追加した。このラッパーは、送金元と送金先が共にパーミッションレジストリに登録されている(つまりホワイトリストに載っている)ことを検証する。これは、DREXの仲介モデルを反映している。DREXでは、承認された金融機関のみが直接トークンを操作できる仕組みであり、一般ユーザーが直接中央銀行とやり取りするのではなく、金融機関を介して通貨を利用する形が想定されている。長年のデジタルフォレンジックの経験から、彼は全ての状態変更がイベントを発行すべきだと考えていた。監査可能性は追跡可能なCBDCの要点であるため、イベント発行は必須の機能として実装された。これにより、全ての取引履歴が明確に記録され、後から検証可能となる。
開発されたプロトタイプは、Soroban CLIツールを使ってStellarテストネットにデプロイされた。WASMへのコンパイル、最適化、デプロイ、初期化といった一連のパイプラインは2分以内に完了した。最適化されたWASMバイナリのサイズは、soroban contract optimizeを実行した後で8.2 KBという非常に小さいものだった。
その後、彼はホワイトリストに登録されたテストアカウント間で1,000件の連続した送金処理をスクリプトで実行し、パフォーマンスを測定した。結果は彼の仮説を裏付けるものだった。平均確認時間は5.1秒であり、1,000件全ての送金にかかった合計トランザクションコストは、XLM(Stellarのネイティブ通貨)換算で1セント未満であった。
コンプライアンス層の堅牢性を検証するため、ホワイトリストに登録されていないアドレスへの送金を試みた。これらの試みは全て、明確なエラーコードと共に正しく拒否された。この機能は非常に重要である。なぜなら、DREXの規制フレームワークは、リバーシビリティ(取引の取り消し可能性)とアクセス制御に大きく依存しており、パブリックなDeFi(分散型金融)のような無許可の自由とは異なるからだ。
特に驚くべき発見は、ストレージ効率の高さであった。Sorobanのインスタンスストレージとパーシステントストレージという二つのストレージ層を意図的に使い分けることで、彼は状態維持コスト(ステートレントコスト)を最小限に抑えることができた。このストレージ効率は、DREXのような国家規模での運用を考えた場合に極めて重要となる要素である。彼は、このコストプロファイルこそが、小売向けCBDCを実用可能にするものであり、Hyperledger Besuをベースとした代替案がスループットの経済性で苦戦する可能性に対して、Stellar/Sorobanが優位性を持つと主張している。
今回のプロトタイプ構築の成功は、プログラマブルな国家のデジタル通貨が、StellarのSoroban上で高速に、安価に、そして監査可能に動作することを示している。これは、真剣に評価すべき魅力的な選択肢であると言えるだろう。もしCBDCやトークン化技術を探求しているのであれば、公式な標準が確定してしまう前に、Sorobanのスターターテンプレートを使って独自の実験を始めてみることを勧めている。