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【ITニュース解説】Rogers PCB Material — an engineer’s practical guide

2025年09月12日に「Dev.to」が公開したITニュース「Rogers PCB Material — an engineer’s practical guide」について初心者にもわかりやすく解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

Rogers材料は、高周波回路向けの特殊な基板材料だ。一般的なFR-4に比べ、誘電率が安定し信号損失が少ないため、5G、レーダー、アンテナなど、高速・高周波で高い性能と安定性が求められる設計で活用される。適切な材料選定が回路の性能を左右する。

ITニュース解説

Rogers材料は、一般的なFR-4基板では対応できないような、高い周波数で動作する電子機器の心臓部を担う特殊な基板材料である。システムエンジニアとして電子機器を設計する際、基板材料の選択は、信号の性能、熱に対する強さ、そして製造のしやすさに大きく影響するため、非常に重要な最初の決定となる。特に高周波(RF、マイクロ波、ミリ波など)の分野では、信号の損失を最小限に抑え、安定した動作を実現するために、Rogers材料のような高性能なラミネート(積層板)やプリプレグ(接着シート)が選ばれる。

Rogers材料の最大の特長は、比誘電率(Dk、またはεrと表記される)が非常に安定していることだ。Dkは、信号が基板内を伝わる速度や、信号経路のインピーダンス(交流抵抗のようなもの)を決定する重要な値であり、この値が周波数や温度によって変動すると、信号が乱れたり、意図した性能が得られなかったりする。Rogers材料は、Dkが広範囲な周波数と温度で安定しており、高精度な信号伝送を可能にする。また、誘電正接(tan δ、または損失係数)が低いことも重要な特長である。誘電正接は、信号が基板材料を通過する際に失われるエネルギーの量を示すため、この値が低いほど信号の損失が少なくなる。これは、アンテナの給電線や長距離の信号経路において、特に重要な性能となる。FR-4のような一般的なエポキシ樹脂とガラス繊維の複合材料と比較すると、GHz帯のような高い周波数では、Rogers材料の方が圧倒的に低い信号損失を実現する。

Rogers材料にはいくつかの主要なシリーズがあるが、システムエンジニアがよく目にするのは「RO3000シリーズ」と「RO4000/RO4350Bシリーズ」の二つである。RO3000シリーズは、特に温度と周波数に対するDkの安定性に優れており、ミリ波レーダーや5G通信のフロントエンド部など、極めて高い精度が求められる用途で使われる。一方、RO4000/RO4350Bシリーズは、セラミックが充填された材料で、低い信号損失とDkの厳密な制御を両立しながらも、PTFE(テフロン)ベースの材料に比べて加工がしやすいという利点がある。特にRO4350Bは、性能と製造の容易さのバランスが良いため、幅広い高周波用途で利用されている。これらの材料を選ぶ際には、メーカーが公開しているDk対周波数特性のグラフや、誘電正接、材料の厚みによるDkの許容範囲などを確認することが重要だ。

電気的特性以外にも、機械的および熱的特性も基板材料選びで考慮すべき重要な要素である。Rogers材料は、FR-4に比べて熱伝導率が高い傾向があり、高出力の回路で発生する熱を効率的に放熱できる。また、ガラス転移温度(Tg)が高く、熱分解温度(Td)も高いため、はんだ付けプロセスにおける高い温度や、動作中の高温環境にも耐えることができる。Z軸方向の熱膨張係数(CTE)が低いことも特長で、これは基板のスルーホール(ビア)の信頼性に関わる。CTEが高いと、はんだ付けの熱や動作時の温度変化によってビアが破壊されるリスクがあるため、低いCTEは長期的な信頼性にとって有利となる。これらの特性は、特に自動車や航空宇宙、屋外設置の通信機器など、過酷な環境下で使われる機器において、安定した動作を保証するために不可欠である。

Rogers材料とFR-4の具体的な違いをまとめると、まず「信号損失」の面では、GHz帯以上の周波数ではRogers材料が圧倒的に低い損失を示す。次に「Dkの安定性」では、Rogers材料は周波数や温度、水分吸収によるDkの変化が非常に小さく、安定したインピーダンスと予測可能なRF特性を提供する。対してFR-4は、周波数や水分含有量によってDkが変動しやすい。最後に「加工性とコスト」の面では、一部のRogers材料(RO4350Bなど)は一般的なFR-4の製造ラインで加工できるように設計されており、PTFEベースの材料に比べて加工はしやすい。しかし、FR-4と比較すると、Rogers材料は一般的に高価である。そのため、材料選択は、ブランドの好みではなく、設計に必要な電気的性能に基づいて行うべきである。

設計と製造の段階では、選定したRogers材料と厚みを製造業者に正確に伝えることが必須だ。例えば、「RO4350B、0.031インチ厚」といった具体的な指定が必要となる。また、目標とするインピーダンス(Z0)を実現するための推奨される積層構成(スタックアップ)も確認し、指示する必要がある。製造時には、基板の品質を検証するために、インピーダンス測定用のテストクーポンを製造パネルに含めることを依頼し、出荷時にその測定結果を受け取ることが推奨される。ビアの処理や表面仕上げについても、高周波設計では特定のプロセスが推奨される場合があるため、製造業者が選択したRogers材料と互換性のある標準的なビアめっきプロセスを使用しているかを確認することが重要だ。

Rogers材料が特に適している用途は多岐にわたる。例えば、低損失と安定した位相特性が求められるアンテナやその給電線、広帯域で予測可能な特性が要求されるRF/マイクロ波フィルターやインピーダンス整合回路、Dkの安定性と低分散(信号の広がり)が重要な自動車レーダーや5Gミリ波通信モジュール、そして環境安定性と低損失が不可欠な通信、衛星、防衛分野の高性能マイクロ波モジュールなどが挙げられる。これらのアプリケーションでは、Rogers材料の持つ優れた電気的・熱的特性が、製品の信頼性と性能を決定づける。

製品の信頼性を確保するためには、設計後の検証が欠かせない。ラボでは、テストクーポンを使用してVNA(ベクトルネットワークアナライザ)やインピーダンス測定治具でDk値やインピーダンスを測定し、供給業者の報告値と比較する。また、実際の基板上の代表的な信号経路(トレース)の挿入損失を、対象とする周波数帯域全体で測定する。さらに、はんだ付けプロセスによる影響を確認するため、小さな部品を実装したアセンブリを実際のはんだリフロープロファイルに通し、材料の剥離(デラミネーション)がないか、表面仕上げに問題がないかなどを確認する。これらの測定結果と検証の記録は、将来の生産ロットの品質管理において重要な基準となる。

最後に、調達とコストについても理解しておくべきだ。Rogers材料は一般的なFR-4に比べて高価であり、コア材やプリプレグには最小注文量がある場合もある。初めてRogers材料を使用する際には、まず少量の試作発注を行い、テストクーポンを含めて電気的性能を検証することが賢明である。これにより、本格的な量産に移る前にリスクを最小限に抑えることができる。また、サプライチェーンの安定性が重要なプロジェクトでは、リードタイム(発注から納品までの期間)や代替となる材料グレードについても事前に確認しておくことが、予期せぬ材料不足のリスクを避ける上で重要となる。

結論として、設計が予測可能なインピーダンス、低いRF損失、そして温度や湿度の変化に対して安定した動作を必要とする場合、Rogers材料は技術的に非常に適切な選択肢となる。メーカーのデータシートや特性評価ツールを積極的に活用し、インピーダンス測定用クーポンを要求し、小規模な検証ビルドを実施し、コストとRF性能のバランスを慎重に考慮することが成功への鍵となる。このアプローチにより、デバッグ時間の短縮や、RFおよびマイクロ波製品の初回生産での高い歩留まり達成に繋がるだろう。

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