Webエンジニア向けプログラミング解説動画をYouTubeで配信中!
▶ チャンネル登録はこちら

【ITニュース解説】From Spaghetti to Symphony: Taming Complex PHP Applications with DDD and CQRS

2025年09月14日に「Dev.to」が公開したITニュース「From Spaghetti to Symphony: Taming Complex PHP Applications with DDD and CQRS」について初心者にもわかりやすく解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

複雑なPHPアプリのコードを整理し保守性を高めるため、DDDとCQRSという設計手法を解説。ビジネスロジックを核に4層に分割することで、コードはテストしやすく、フレームワークに依存せず、大規模開発でも効率的に作業できる。

ITニュース解説

システム開発において、アプリケーションが大規模になり、機能が増えていくと、コードが複雑になりがちだ。特にPHPのような言語で開発されたシステムでは、一つのファイルに多くの役割が詰め込まれてしまい、まるで絡み合った麺のように管理が困難になることがある。このような状態は「スパゲッティコード」と呼ばれ、新しい機能の追加や既存のバグ修正が非常に難しくなるという問題を引き起こす。例えば、ユーザー管理に関するあらゆる処理(認証、登録、メール送信など)がたった一つのコントローラーに集中し、数百行にも膨れ上がる状況を想像すると、その複雑さが理解できるだろう。

このような複雑さを解消し、将来にわたって保守しやすく、拡張しやすいコードを書くための強力な手法が「ドメイン駆動設計(Domain-Driven Design, DDD)」と「コマンドクエリ責務分離(Command Query Responsibility Segregation, CQRS)」である。これらは単なる技術的な流行語ではなく、複雑なシステムを秩序立てて構築するための設計思想とパターンだ。

DDDは、ソフトウェアの中心に「ドメイン」と呼ばれる、そのビジネス固有の知識やルールを置くことを重視する。システムが解決しようとしている問題領域そのもの、つまりビジネスロジックを最優先に考え、それをコードに直接反映させるアプローチだ。これにより、開発者はビジネスの専門家と共通の言語で会話できるようになり、システムの設計がビジネス要件から乖離することを防ぐ。DDDでは、アプリケーションの構造を明確な役割を持つ層に分割する。この記事では、アプリケーションを主に四つの層に分ける考え方が示されている。

第一の層は「ドメイン層」である。ここはアプリケーションの「魂」とも言える部分で、純粋なビジネスロジックが配置される。例えば、ユーザーの登録やパスワードのハッシュ化といった、アプリケーションの核となる処理がここに記述される。この層のコードは、特定のデータベースやウェブフレームワークに依存しないように設計されるため、非常に独立性が高い。ユーザーオブジェクトがデータベースの知識を持たず、ただユーザーとしての振る舞いだけを定義するように、純粋なビジネスの概念を表現するのだ。また、「値オブジェクト(Value Object)」という概念も重要である。これは、特定の属性のまとまり(例えば、パスワードやメールアドレス)を一つのオブジェクトとして表現するもので、その値が無効な状態にならないように厳密なルールを設けることができる。これにより、プログラムの異なる箇所で誤ったデータ形式が渡されることを防ぎ、型安全性を大幅に向上させる。例えば、パスワードが最低8文字であることを保証するような処理を値オブジェクトに含めることで、無効なパスワードがシステムに入り込むことをコンパイル段階で防げるようになる。

第二の層は「アプリケーション層」であり、ドメイン層で定義されたビジネスロジックを組み合わせて、具体的なビジネスシナリオを実行する「指揮者」のような役割を果たす。ここでは、「コマンド(Command)」と「ハンドラー(Handler)」というパターンが使われることが多い。コマンドは、システムに行わせたい操作をビジネス用語で表現したメッセージのようなもので、例えば「ユーザーを登録する」という具体的な意図をRegisterUserCommandという形で表現する。このコマンドは、どのようなユーザー名、メールアドレス、パスワード、役割で登録するかといった必要な情報のみを含み、それ自体は処理を実行しない。実際の処理は、そのコマンドを受け取る「ハンドラー」が担当する。ハンドラーは、コマンドに記述された情報を使ってドメイン層のロジックを呼び出し、データベースへの保存やイベントの発生といった一連の処理をオーケストレーションする。これにより、アプリケーション層のコードはビジネスシナリオの流れを明確に記述できるようになり、何が起こるべきかが一目でわかるようになる。

第三の層は「インフラストラクチャ層」である。ここは、データベースへのアクセス、外部APIとの通信、ファイルシステム操作といった、アプリケーションの外部システムとの連携に関する「汚れた仕事」を担当する部分だ。この層の重要な特徴は、ドメイン層やアプリケーション層から完全に切り離されていることである。つまり、ドメイン層やアプリケーション層は、インフラストラクチャ層がどのような技術(例えば、リレーショナルデータベースなのか、NoSQLデータベースなのか)を使っているかを知る必要がない。この分離は、アプリケーションの柔軟性を高める。例えば、将来的にデータベースの種類を変更する必要が生じた場合でも、インフラストラクチャ層の該当部分だけを書き換えればよく、ビジネスロジックを含むドメイン層やアプリケーション層には変更を加える必要がないのだ。

第四の層は「プレゼンテーション層」であり、ユーザーとのやり取りを担当する部分である。ウェブアプリケーションであれば、HTTPリクエストを受け取り、JSON形式のレスポンスを返す部分がこれにあたる。この層は、ユーザーインターフェース(UI)からの入力データをアプリケーション層のコマンドに変換し、アプリケーション層からの処理結果をユーザーに表示する形式(例えば、ウェブページやAPIレスポンス)に変換する役割を担う。DDDとCQRSのアーキテクチャでは、プレゼンテーション層のコードは可能な限り薄く、特定のUI技術(例えば、ウェブブラウザやモバイルアプリ)に特化した処理のみを行うように設計される。これにより、UIの変更がアプリケーションの核となるビジネスロジックに影響を与えることを防ぎ、コントローラーがビジネスロジックで肥大化することを防ぐ。

このようなDDDとCQRSに基づくアーキテクチャを採用することには、多くのメリットがある。まず、各層の役割が明確に分離されているため、「テストが非常に容易になる」という点がある。ビジネスロジックが集中しているドメイン層やアプリケーション層は、データベース接続やHTTPリクエストなどの外部要因なしに単体でテストできるため、高速かつ確実にコードの正しさを検証できる。次に、「フレームワークからの独立性」が向上する。ビジネスロジックが特定のフレームワーク(例えばLaravelやSymfony)に依存しないため、将来的にフレームワークを切り替える必要が生じても、そのコストを大幅に削減できる。また、「型安全性が強化される」ことも大きな利点だ。値オブジェクトを使うことで、不正な形式のデータがシステムに入り込むことをコンパイル時や実行初期段階で防ぎ、バグの発生を未然に防げる。さらに、「エラーハンドリングが明確になる」点も重要だ。特定のビジネスルール違反に対して専用の例外を定義できるため、エラーが発生した際に何が問題だったのかを容易に特定できる。最後に、システム内で起こった出来事を「イベント」として表現し、それを他のコンポーネントが購読する「イベント駆動」の考え方を導入することで、各コンポーネント間の結合度を低く保ちながら、柔軟に機能を追加・拡張できる。例えば、ユーザーが登録された際に、ウェルカムメールの送信や分析データの記録といった複数の処理を、登録処理とは独立して実行できる。

しかし、このような高度なアーキテクチャは、すべてのプロジェクトに適用すべきではない。DDDとCQRSは、ビジネスロジックが複雑で、複数の開発者が関わり、長期的な運用が想定される大規模なプロジェクトにおいて最大の効果を発揮する。もし、非常にシンプルなCRUD(作成・読み取り・更新・削除)アプリケーションや、短期間のハッカソンプロジェクトであれば、このアーキテクチャはオーバーエンジニアリングとなり、初期の学習コストと開発コストが増大するだけかもしれない。

このアーキテクチャを導入する際には、一度にすべてを書き換えるのではなく、まず一つの機能から始めて徐々に適用範囲を広げていくのが良い方法だ。また、この設計はテストのしやすさを大前提としているため、開発の初期段階からテストを書くことを強く推奨する。各層の境界を明確にし、チーム内で共有することで、コードの一貫性を保つことができる。初期には学習曲線があるかもしれないが、この投資は将来のメンテナンスコストの削減と開発効率の向上として必ず報われるだろう。これは単に「エンタープライズ」なコードを書くためではなく、自分の書くコードを尊重し、変化に強く、理解しやすい、そして長期的に価値を生み出すソフトウェアを構築するための取り組みである。複雑なシステムを構築する際に、闇雲にコードを書き続けるのではなく、明確な設計思想をもって取り組むことで、より美しいソフトウェアを構築できるだろう。

関連コンテンツ

関連IT用語