【ITニュース解説】TVL Trend Analysis & Liquidity Risk Assessment: Veda
2026年09月30日に「Dev.to」が公開したITニュース「TVL Trend Analysis & Liquidity Risk Assessment: Veda」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
「Veda」という仮想通貨の金融サービスプラットフォームのセキュリティ監査報告書が公開された。約19億ドルの資産を管理するが、流動性が特定プールに集中し、フラッシュローン、オラクル、ブリッジなどに複数の脆弱性がある。中~高リスクと評価され、セキュリティ強化と抜本的な対策が早急に求められている。
ITニュース解説
分散型金融(DeFi)の世界は、新しい技術と革新的なサービスが次々と生まれる成長著しい分野です。その中でも「Veda」というマルチチェーンのプラットフォームは、イーサリアムやその性能を向上させるためのレイヤー2(L2)ソリューション(Optimism、Arbitrum、zkSync、Polygonなど)を横断して、ユーザーの資金を効率的に運用し、高いリターンを目指す「イールドアグリゲーション」や、複数の市場間で流動性を最適に誘導する「流動性ルーティング」を提供している。現在、このVedaプロトコルには約19億ドル(約1913.3Mドル)もの膨大な資金が預け入れられており、これは「TVL(Total Value Locked)」と呼ばれ、DeFiプロジェクトの規模や信頼性を示す重要な指標の一つだ。Vedaはステーキング(資産を預けて報酬を得る)、レンディング(貸し借り)、AMM(自動マーケットメイカー)プールによる流動性提供、そして異なるブロックチェーン間での資産移動を可能にする「クロスチェーンブリッジ」など、多岐にわたるサービスを展開し、さらにはプラットフォームの運営方針を決めるための「ガバナンストークン(VEDA)」も発行している。
しかし、このような大規模なDeFiプロトコルには、その成長と利便性の裏側に潜む「リスク」も存在する。最近行われたVedaプロトコルに対するセキュリティ監査の結果、そのTVLが前年比で68%も成長している一方で、いくつかの重大な課題が浮き彫りになった。特に、L2ネットワークの手数料高騰や世界経済のリスクイベントがTVLに季節的な変動をもたらしている点、そして預け入れられた資金(流動性)の73%が、ETH-USDC、WBTC-USDC、VEDA-USDCというわずか三つのコアプールに集中しているという「流動性集中リスク」が指摘されている。これは、特定のプールに問題が生じた際に、プロトコル全体に大きな影響を与える可能性を意味する。また、万が一の市場の急変に対応するための「引き出し制限」や「サーキットブレーカー(異常な市場変動時に一時的に取引を停止する仕組み)」といったリスク管理機能が、極端な状況に対して十分に設定されていないことも明らかになった。
さらに、現在のプロトコルの設定では、いくつかの具体的な「攻撃ベクトル」が存在することも判明した。システムエンジニアを目指す方にとって、このような攻撃手法とそれに対する防御策を知ることは非常に重要だ。
一つ目は「フラッシュローンによるAMMプールの価格操作」である。フラッシュローンとは、担保なしで一瞬のうちに巨額の資金を借り入れ、同じ取引の中で返済することで利益を得る、DeFi特有の仕組みだ。攻撃者はこのフラッシュローンを利用して大量のETHやUSDCを借り入れ、VedaのAMMプール(Veda-USDCプールなど)での価格を一時的に大きく変動させることができる。これにより、ユーザーの担保が強制的に売却される「清算」を誘発したり、不正に報酬を受け取ったりした後、借りた資金を返済するという手口だ。Vedaでは「TWAP(時間加重平均価格)」という、一定期間の平均価格を参考にすることで価格操作への耐性を持たせているが、現在の30分という期間では、急速な市場の動きに対して十分に対応できず、オラクル(ブロックチェーン外の情報を取得する仕組み)が更新される前に価格が歪められてしまう危険性がある。
二つ目は「オラクルフィードのずれや古いデータ」の問題だ。Vedaは「Chainlink」という有名なオラクルプロバイダーからETH-USDの価格情報を受け取って、ユーザーの担保価値を評価している。もし何らかの理由でこのChainlinkの価格フィードが停止したり、情報が古くなったりした場合(例えばL2のガス代高騰で更新が滞るなど)、プロトコルは間違った価格で担保を評価し、不当な清算が発生する可能性がある。Vedaは「Band Protocol」という別のオラクルへのフォールバック(代替手段)を持っているが、これが作動するまでに2時間の遅延があり、その間にユーザーは誤った価格で資産を失う危険がある。
三つ目は「クロスチェーンブリッジの再入可能攻撃」だ。Vedaが使用するOptimismとイーサリアム間のブリッジ契約には、「checks-effects-interactions」という安全なスマートコントラクト設計パターンが適用されていない部分がある。これは、スマートコントラクトが外部のコントラクトを呼び出す際に、その呼び出し中に再び元のコントラクトが呼び出されることで、想定外の動作や資金の盗難につながる可能性がある「再入可能攻撃」の脆弱性を生む。現在の対策はOptimism側のみで、イーサリアム側には欠陥があり、クロスチェーンでの再入可能攻撃が可能となっている。
四つ目は「流動性集中によるポンピング・アンド・ダンピング」だ。前述の通り、VedaのTVLの73%が三つのコアプールに集中しているため、もし大量の資産が一斉に売り出された場合、極端な価格変動(スリッページ)が発生し、自動的な清算の連鎖が引き起こされる可能性がある。現在のサーキットブレーカーは30%の価格下落で発動するが、L2環境では短時間で50%以上の価格変動が起こることもあり、この静的な閾値では不十分である。
他にも、フラッシュローンを使って大量のVEDAトークンを一時的に取得し、その間にガバナンス投票で引き出し制限の引き下げなどの不利な変更を行う「ガバナンストークン(VEDA)のフラッシュ投票攻撃」、報酬計算の仕組みの隙を突いて不正に多量のステーキング報酬を得る「ステーキング報酬インフレ攻撃」、そして少額の引き出しリクエストを大量に送ることで、正当なユーザーの引き出しを遅延させる「引き出しキューに対するDoS攻撃」などが指摘されている。
これらのリスクを総合的に評価した結果、Vedaプロトコルのリスクスコアは10点満点中6.4点と「中〜高リスク」に分類された。特にTVLの集中度とフラッシュローン関連の攻撃ベクトルが主な要因である。
この状況を受け、専門家チームはVedaに対して優先度の高い具体的な改善策を提言している。最優先事項(P1)としては、フラッシュローンによる価格操作を防ぐため、TWAPの仕組みを30分から、Chainlink、Band、Uniswap V3といった複数の情報源から5分と1時間の加重中央値を計算する「マルチソース・アダプティブTWAP」に置き換えること、そして、単一のブロック内での価格変動が5%を超えるような大規模なスワップを自動的に中止する「価格インパクトガード」をコアプールに導入することが挙げられている。
次に優先される対策(P2)は、オラクルフィードの堅牢性を高めることだ。現在のChainlinkとBand Protocolの組み合わせに加え、「Pyth」のような低遅延のオラクルを追加し、主要なフィードが3%以上乖離するか、5分以内に更新されない場合に自動的に切り替わるようにすることで、情報の古さによるリスクを大幅に短縮できる。また、クロスチェーンブリッジについては、OpenZeppelinの「ReentrancyGuard」という安全なライブラリを使って、Optimism側だけでなくイーサリアム側でも再入可能攻撃を防ぐ仕組みを導入することが求められている。
さらに、P3以降の推奨事項として、市場のボラティリティ(価格変動の激しさ)に合わせてサーキットブレーカーの閾値を自動で調整する「動的サーキットブレーカー」や、フラッシュ投票攻撃を防ぐためにガバナンス投票のスナップショット(投票権の記録)を取引実行前のブロックで取得するよう変更すること、報酬インフレを防ぐためにアドレスごとのステーキング上限を設定すること、DoS攻撃を防ぐためにアドレスごとの引き出しレート制限を設けることなどが提案されている。
これらの対策を講じることで、Vedaのセキュリティ体制は大幅に強化され、リスクスコアは3〜6ヶ月以内に約4.5点まで低下すると見込まれている。VedaがDeFiエコシステムにおける主要な流動性ハブとしての地位を維持し、ユーザーの預け入れた約19億ドルの資産を確実に保護するためには、これらの推奨事項の迅速な実施が不可欠である。技術的な改善だけでなく、定期的な流動性分配監査のような運用監視の自動化も、将来的なリスクを早期に発見し、対処するために重要だとされている。