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マルチレイヤスイッチ(マルチレイヤースイッチ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

マルチレイヤスイッチ(マルチレイヤースイッチ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

マルチレイヤスイッチ (マルチレイヤスイッチ)

英語表記

Multilayer switch (マルチレイヤースイッチ)

用語解説

マルチレイヤスイッチとは、ネットワークにおいてデータ転送を行う機器の一種で、その名の通り複数の「レイヤ」(階層)の機能を併せ持つ点が特徴だ。具体的には、通常レイヤ2(データリンク層)で動作する「スイッチ」の機能と、レイヤ3(ネットワーク層)で動作する「ルータ」の機能を一台の機器に統合したものになる。システムエンジニアを目指す上で、ネットワーク機器の理解は不可欠であり、マルチレイヤスイッチは特に大規模なネットワーク環境で中心的な役割を果たすため、その概念をしっかりと把握しておく必要がある。

ネットワークにおける機器は、ISO/OSI参照モデルという7つの階層(レイヤ)に分類される役割に応じて機能が異なる。一般的なレイヤ2スイッチは、主に同じネットワークセグメント(同一のVLANやサブネット)内での通信を担当し、MACアドレスという機器固有の識別子に基づいてデータを転送する。これは、郵便局員が同じ町内での住所に基づいて手紙を配達するようなイメージだ。一方、ルータは異なるネットワークセグメント(例えば、会社の異なる部署のネットワークや、インターネットへの接続)間でデータを転送する役割を持ち、IPアドレスという論理的な住所に基づいて最適な経路を選択し、データを送り出す。これは、郵便局が異なる市町村や国へ手紙を送る際に、行き先に応じて配送センターを使い分けるようなものだ。

従来のネットワークでは、これらレイヤ2のスイッチとレイヤ3のルータは別々の機器として配置されるのが一般的だった。しかし、企業のネットワークが大規模化し、VLAN(Virtual LAN)を多用するようになったり、データセンター内でサーバー間の高速な通信が求められるようになったりすると、ルータを介したネットワーク間の通信がボトルネックとなることが増えた。ルータはソフトウェア処理に依存する部分が多く、大量のパケットを高速に処理する能力に限界があったからだ。

そこで登場したのがマルチレイヤスイッチである。この機器は、レイヤ2のMACアドレスに基づく高速なフレーム転送機能に加え、レイヤ3のIPアドレスに基づくルーティング機能を、専用のハードウェア(ASIC: Application Specific Integrated Circuit)で処理する能力を持つ。これにより、従来のルータがソフトウェアでパケットを一つ一つ処理していたのに対し、マルチレイヤスイッチは一度ルーティングの判断を下すと、その後の同じ通信フローのパケットはハードウェアの力で非常に高速に転送できるようになる。この技術は「ワイヤースピードルーティング」や「フローベースルーティング」などと呼ばれ、ネットワークのパフォーマンスを飛躍的に向上させる。

具体的な動作としては、例えば複数のVLANで構成されたネットワークにおいて、あるVLANに属する機器が別のVLANに属する機器と通信しようとする場合を考えてみよう。この通信は、異なるIPアドレスを持つネットワーク間の通信なので、本来ならルータが必要になる。マルチレイヤスイッチは、VLANインターフェースに設定されたIPアドレスを基に、この通信がどのVLAN宛てであるかを判断し、ルーティングテーブルを参照して最適な転送経路を決定する。最初のパケットが到着すると、マルチレイヤスイッチは宛先IPアドレスを解析し、ルーティング処理を行って正しいVLANへ転送する。この際、同時に通信情報(送信元・宛先IPアドレス、ポート番号など)をキャッシュに記録する。次回以降、同じ通信フローに属するパケットが到着した際には、キャッシュされた情報に基づいて専用ハードウェアが即座に転送処理を行い、ソフトウェアによる処理をバイパスすることで、高速なデータ転送を実現するのだ。これにより、VLAN間の通信において発生しがちな遅延を大幅に削減できる。

マルチレイヤスイッチの導入によるメリットは多岐にわたる。最も重要なのはその「高速性」である。ハードウェアによるルーティング処理は、ソフトウェア処理と比較して圧倒的なスピードでデータを転送できるため、ネットワーク全体のパフォーマンス向上に大きく貢献する。特に、大規模なVLAN間ルーティングが必要とされる環境では、従来のルータでは実現し得なかった高速な通信が可能になる。次に「集約性」だ。一台の機器でスイッチとルータの二つの役割をこなせるため、物理的な機器の数を減らすことができ、これにより機器の設置スペースの節約、配線の簡素化、電源消費量の削減、そしてネットワーク管理の負担軽減といった恩恵が得られる。これは結果的に「コスト削減」にもつながる。複数の機器を個別に購入・運用するよりも、一台の多機能な機器で済ませる方が、初期投資だけでなく運用コストも抑えられる場合が多い。また、機器の数が減ることで、障害発生時のトラブルシューティングも比較的容易になる可能性がある。さらに、高速な処理能力はネットワークの「低遅延」にも寄与し、リアルタイム性が求められるアプリケーションやサービスにおいて重要な要素となる。

このような特性から、マルチレイヤスイッチは、大規模な企業ネットワークの「コア層」や「ディストリビューション層」で広く利用されている。コア層では、ネットワークの中核として全ての通信を集約し、高速に捌く役割が求められ、ディストリビューション層では、複数のアクセス層スイッチから集められたトラフィックをルーティングし、コア層へと転送する役割を担う。また、データセンター内でのサーバー間通信や、仮想化環境におけるネットワークにおいても、高速なVLAN間ルーティングが不可欠となるため、マルチレイヤスイッチがその中心となることが多い。

ただし、マルチレイヤスイッチは万能ではなく、その得意分野とそうでない分野があることにも留意が必要だ。あくまでLAN内での高速ルーティングに特化しているため、インターネットへの接続に必要な高度なセキュリティ機能(ファイアウォール機能など)や、WAN(広域ネットワーク)接続に必要な複雑なルーティングプロトコル、通信キャリアとの連携機能などは、専用のルータの方が優れている場合が多い。そのため、ネットワークの設計においては、マルチレイヤスイッチと専用ルータをそれぞれの得意分野に応じて適切に使い分けることが重要となる。マルチレイヤスイッチは、特にエンタープライズやデータセンターの内部ネットワークにおいて、高速かつ効率的なIPルーティングを実現するための強力なツールであると理解しておくとよいだろう。

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