【ITニュース解説】#DAY 3: The Cloud Brain

2025年09月09日に「Dev.to」が公開したITニュース「#DAY 3: The Cloud Brain」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

クラウド型SIEM「Splunk Cloud」の導入手順を解説。クラウド環境を準備し、データ転送用の認証情報を生成。サンプルデータをアップロードして取り込み、簡単な検索で分析できることを確認する。データを送るだけでなく、格納場所(インデックス)の確認が重要だ。(117文字)

出典: #DAY 3: The Cloud Brain | Dev.to公開日:

ITニュース解説

現代の企業システムは、自社内で物理的にサーバーを管理する「オンプレミス」環境と、インターネット経経由でサービスを利用する「クラウド」環境を組み合わせて構築されることが一般的である。このようなハイブリッド環境では、システムやアプリケーションが様々な場所に分散するため、それらから生成される膨大な量のログデータを一元的に管理し、分析する必要性が高まっている。特にサイバーセキュリティの分野では、システム全体からログを収集し、攻撃の兆候や異常な振る舞いを迅速に検知・対応することが不可欠である。この課題を解決するための仕組みが「SIEM(Security Information and Event Management)」と呼ばれるシステムだ。SIEMは、ファイアウォール、サーバー、アプリケーションなど、多種多様なIT機器からログ情報をリアルタイムで収集・集約し、それらを横断的に分析することで、セキュリティインシデントの早期発見や原因調査を支援する。今回解説する記事は、このSIEMをクラウドサービスとして利用する「Splunk Cloud」を導入し、オンプレミス環境からデータを収集して分析するまでの一連のプロセスを具体的に示したものである。

まず、クラウド上にSIEM環境を構築することから始まる。記事では、クラウドSIEMの代表的なサービスであるSplunk Cloudの無料トライアルにサインアップしている。クラウドサービスを利用する最大の利点は、自前でサーバーを用意したり、ソフトウェアをインストールしたりする必要がなく、すぐに高機能なSIEM環境を利用開始できる点にある。これにより、インフラの構築や管理にかかる手間を大幅に削減し、本来の目的であるデータ分析に集中することができる。次に重要なステップは、オンプレミス環境にあるデータソースとクラウド上のSIEMを安全に接続し、データを送信するための準備である。クラウド上のシステムが、どこからともなく送られてくるデータを無条件に受け入れてしまうと、セキュリティ上の大きなリスクとなる。そこで、データの送信元が正規のものであることを証明するための認証の仕組みが必要になる。記事では、「フォワーダークレデンシャル」という認証情報を作成している。これは、データを収集してSplunk Cloudに転送する「ユニバーサルフォワーダー」という専用プログラムが使用する、一種の鍵のようなものである。フォワーダーはこのクレデンシャルを使ってSplunk Cloudに自身を認証させ、信頼された通信経路上で安全にデータを送信する。これにより、第三者によるデータの盗聴や改ざんを防ぎ、データの完全性を保証することができる。

安全な通信路が確保できたら、実際にデータをSIEMに取り込む「オンボーディング」という作業を行う。記事では、Splunkが提供しているチュートリアル用のサンプルデータ(Webサーバーのアクセスログが含まれたファイル)をアップロードし、データ取り込み機能が正常に動作するかを検証している。データがSIEMに取り込まれる際、それは「インデックス」と呼ばれる場所に格納される。インデックスは、データを効率的に管理・検索するための、データベースにおけるテーブルのような役割を果たす。例えば、「Webサーバーのログ」「認証システムのログ」のように、データの種類や出所に応じてインデックスを分けることで、分析時に必要なデータだけを素早く探し出すことが可能になる。この記事で興味深いのは、データが意図した場所に格納されたかを確認するプロセスである。当初、アップロードしたデータはtutorialという名前のインデックスに格納されると想定していたが、検索してもデータが見つからなかった。調査を進めると、実際にはmainというデフォルトのインデックスに格納されていたことが判明する。このことは、データをSIEMに送るだけでなく、データが「どこに」「どのように」格納されたかを正確に把握することが、分析を行う上で極めて重要であることを示している。| eventcount summarize=false index=* のようなコマンドは、存在する全てのインデックスとその中に含まれるイベント数を一覧表示するため、データ全体の状況を把握し、このような問題を発見するのに役立つ。

データが正しく取り込まれ、その格納場所も確認できたら、いよいよSIEMの真価が発揮されるデータ検索と分析のフェーズに入る。記事では、まずindex=_internal | head 10という検索クエリを実行している。_internalインデックスはSplunkシステム自体の動作ログが記録される場所であり、このクエリはシステムが正常に稼働しているかを確認するための基本的なチェックである。次に、実際に取り込んだWebアクセスログを対象とした、より実践的な分析が行われる。index=main sourcetype=access_combined_wcookie | stats count by statusというクエリがその例だ。このクエリは、「mainインデックスにあり、access_combined_wcookieという種類(sourcetype)のWebアクセスログを対象に、HTTPステータスコード(status)ごとの件数を集計せよ」という命令である。この結果を見ることで、例えば正常なアクセス(ステータス200)が何件、ページが見つからないエラー(ステータス404)が何件あったかを瞬時に把握できる。これは、Webサイトの基本的な健全性(ヘルスチェック)を確認する上で非常に有効な情報であり、エラーが異常に多ければ、システムに何らかの問題が発生している可能性を示唆する。このように、SIEMは単なるログの保管庫ではなく、膨大なデータの中から意味のある知見を引き出し、システムの監視やセキュリティインシデントの調査を支援する強力な分析ツールなのである。この記事で示された一連のプロセスは、クラウドとオンプレミスが連携する現代のIT環境において、データを収集し、その格納場所を理解し、そして価値ある情報として分析するという、システムエンジニアにとって基本的ながらも非常に重要なスキルを学ぶ上で良い手本となる。