【ITニュース解説】Building a Heart Risk Detector from Scratch with NumPy - Lessons in Overfitting & Neural Networks
2025年09月07日に「Dev.to」が公開したITニュース「Building a Heart Risk Detector from Scratch with NumPy - Lessons in Overfitting & Neural Networks」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
NumPyを使い、心臓病リスクを予測するAIモデルをゼロから構築。訓練データに過剰適合する「過学習」に直面したが、ドロップアウト等の手法で解決。ライブラリに頼らない実装は、機械学習の仕組みの理解を深める。
ITニュース解説
近年、AIや機械学習の分野で注目されるニューラルネットワークは、画像認識や自然言語処理など様々な場面で活用されている。しかし、その内部で何が行われているかを正確に理解するのは容易ではない。専門的なライブラリを使えば比較的簡単にモデルを構築できるが、その仕組みを深く学ぶためには、基本的な要素から一つずつ作り上げていく経験が非常に有益である。ここでは、心臓病のリスクを予測するAIモデルを、数値計算ライブラリであるNumPyだけを用いてゼロから構築した事例を通して、ニューラルネットワークの基礎と、多くの開発者が直面する「過学習」という課題への対処法を解説する。
このプロジェクトの目的は、年齢、性別、血圧といった臨床データを基に、その人が心臓病にかかるリスクが高いか低いかを予測する二値分類モデルを開発することであった。そのために、まず手持ちのデータを「訓練用(70%)」「検証用(15%)」「テスト用(15%)」の三つに分割した。訓練用データはモデルにパターンを学習させるために使い、検証用データは学習の進捗を確認し、モデルの性能を調整するために用いる。そして、最終的にモデルの真の実力を測るために、一度も見せたことのないテスト用データを使用する。
データをAIが処理しやすい形に整える「データ前処理」も重要な工程である。数値データは、それぞれの尺度が異なると学習がうまくいかないことがあるため、最小最大正規化という手法で全ての値を0から1の範囲に揃えた。また、「性別」のようなカテゴリデータは、コンピュータが直接計算できないため、ワンホットエンコーディングという手法で数値表現に変換した。
構築されたニューラルネットワークは、入力層、二つの中間層、そして出力層から構成される。データはまず入力層から入り、中間層で複雑な特徴を抽出する処理が行われ、最終的に出力層で心臓病のリスクが確率として計算される。この各層での計算には、ReLU関数やシグモイド関数といった活性化関数が用いられ、モデルの表現力を高めている。
開発の初期段階で直面した大きな壁が「過学習」である。過学習とは、モデルが訓練用データに過剰に適合してしまい、そのデータに含まれる細かいノイズや偶然のパターンまで記憶してしまう現象を指す。その結果、訓練用データに対する正解率は非常に高くなる一方で、未知のデータである検証用データやテスト用データに対しては全く性能が発揮できなくなる。これは、練習問題の答えを丸暗記しただけで、応用問題が全く解けない状態に似ている。
この過学習問題を解決するために、いくつかの効果的な手法が導入された。一つ目は「ドロップアウト」である。これは、学習の過程でネットワーク内の一部の神経細胞(ニューロン)をランダムに無効化する手法だ。これにより、モデルが特定のニューロンに過度に依存することを防ぎ、より汎用的な特徴を学習するよう促すことができる。二つ目は「L2正則化」で、モデルのパラメータが極端に大きな値になることを抑制する仕組みである。モデルが複雑になりすぎるのを防ぎ、より滑らかで一般的なパターンを捉える助けとなる。三つ目は「早期終了」というアプローチだ。学習を進める中で、検証用データに対する性能が改善しなくなった、あるいは悪化し始めた時点で学習を打ち切る。これにより、学習のしすぎによる過学習を未然に防ぐことができる。これらの対策を講じた結果、モデルは訓練用データだけでなく、未知のデータに対しても安定した予測性能を発揮するようになった。
このプロジェクトの特筆すべき点は、TensorFlowやPyTorchのような高レベルなライブラリに頼らず、NumPyを用いてニューラルネットワークの根幹部分を自ら実装したことにある。データが入力されてから予測値が出力されるまでの「順伝播」と、予測の誤差を基にモデルのパラメータを更新する「逆伝播」の計算を全て手作業で行った。この経験は、ライブラリが自動的に行っている計算の裏側にある数学的な原理を深く理解する上で非常に価値がある。また、学習を安定させるためのパラメータの初期化手法や、実験結果を常に同じにするための再現性の確保など、堅牢なモデル開発に不可欠な技術的知見も得られた。
この事例は、ニューラルネットワークの構築が単なるツールの操作ではなく、データの前処理からモデルの訓練、そして過学習への対策といった一連のプロセスへの深い理解が求められることを示している。ゼロから実装する経験は、AIモデルの挙動を根本から理解し、問題発生時に的確な対処を行う能力を養うための最良の訓練となるだろう。今後、より高度な最適化手法や新しい技術を取り入れてモデルをさらに改善していくことで、その理解は一層深まっていくはずだ。