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【ITニュース解説】PCB FR-4 Material — an engineer’s practical guide

2025年09月09日に「Dev.to」が公開したITニュース「PCB FR-4 Material — an engineer’s practical guide」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

電子回路基板の代表的材料FR-4は、実は単一の素材ではなく、製品により電気信号の伝わり方や熱への強さが異なる。特に高速な信号を扱う設計ではこの違いが性能に直結するため、設計者は詳細な仕様を確認し、適切な材料を指定する必要がある。

ITニュース解説

電子機器の心臓部には、電子部品が実装された「プリント基板(PCB)」が必ず存在している。この基板は、部品同士を電気的に接続し、回路を成立させるための土台となる極めて重要な部品である。普段我々が目にする多くの電子機器に使われているプリント基板のほとんどは、「FR-4」と呼ばれる材料から作られている。FR-4は、その優れたコストパフォーマンスと加工のしやすさから、電子機器製造における標準的な基材としての地位を確立している。しかし、システムエンジニアを目指す上で、このFR-4を単なる「基板材料」として捉えるだけでは不十分である。一見同じように見えるFR-4にも様々な種類があり、その特性の違いがシステムの性能や信頼性に直接的な影響を及ぼすことを理解する必要がある。

FR-4とは、ガラス繊維を布状に織ったものにエポキシ樹脂を染み込ませて固めた、ガラス繊維強化エポキシ樹脂積層板を指す規格グレードの名称である。名称の「FR」は"Flame Retardant"の略で、難燃性を持つことを示している。この材料が広く普及している理由は、電気的な絶縁性に優れ、機械的強度が高く、コストも比較的安価であるためだ。しかし、最も重要な点は、FR-4が単一の仕様で定義された材料ではないということである。これは、特定の化学式で表されるような物質ではなく、特性の異なる様々な材料を含んだ「材料のクラス(分類)」と理解するのが正しい。製造メーカーによって、使用するガラス繊維の織り方のスタイル、エポキシ樹脂の化学的組成、基板表面に形成される銅箔の粗さなどが異なり、これらのわずかな違いが、完成した基板の電気的・熱的特性に大きな差異を生む原因となる。したがって、あるメーカーのデータシートに記載されているFR-4の特性が、別のメーカーのFR-4にそのまま当てはまるわけではない。設計を行う際は、単に「FR-4」と指定するのではなく、どのメーカーのどの品番の材料を使うのかを意識することが不可欠となる。

システムの性能、特に高速な信号を扱う回路において、FR-4の電気的特性は設計の根幹をなす要素となる。注目すべき特性は主に二つある。一つは「誘電率(Dk)」である。誘電率は、基板材料の中を電気信号が伝わる速度や、信号経路の特性インピーダンス(交流における抵抗のようなもの)を決定する重要なパラメータだ。この値が設計時の想定と異なると、信号の伝達タイミングにズレが生じたり、信号が反射して波形が乱れたりする原因となり、システムの誤動作を引き起こす。もう一つの重要な特性は「損失タンジェント(Df)」で、信号が基板を伝播する際にどれだけエネルギーを失うか、つまり信号がどれだけ減衰するかを示す指標である。一般的なFR-4では、この値が比較的高いため、数百MHzを超えるような高周波信号を扱う場合、その損失は無視できないレベルになる。したがって、高速なデータ通信や無線通信機能を備えたシステムの開発では、使用するFR-4の誘電率と損失タンジェントの値を正確に把握しておくことが極めて重要になる。

システムの長期的な信頼性を確保するためには、電気的特性だけでなく、熱や物理的なストレスに対する耐久性も考慮しなければならない。ここで重要になるのが「ガラス転移温度(Tg)」である。これは、基板が熱によって硬いガラス状態から柔らかいゴム状に変化し始める温度を指す。電子部品を基板にはんだ付けするリフロー工程では、基板は高温に晒される。もし使用するFR-4のTgが低いと、この熱で基板が変形し、製造不良や将来的な故障の原因となる。また、高温環境で動作する機器においても、Tgの高い材料を選ぶことが信頼性確保の鍵となる。もう一つ重要なのが「熱膨張係数(CTE)」で、温度変化によって材料がどの程度膨張・収縮するかを示す値だ。特に基板の厚さ方向の膨張は、部品を接続するために設けられたスルーホール(基板を貫通するメッキ穴)にストレスをかけ、繰り返される温度変化によって断線を引き起こすことがある。

FR-4は非常に汎用性が高く、一般的なデジタル回路や電源回路など多くのアプリケーションにおいて十分な性能とコストメリットを提供する。しかし、マイクロ波やミリ波といったギガヘルツ帯の非常に高い周波数を扱うRF回路では、FR-4の持つ誘電損失の大きさや特性のばらつきが性能を著しく低下させる要因となる。このような場合、Rogers社製品に代表されるような、低損失で特性が安定した特殊な基板材料が検討される。これらの材料はFR-4に比べて非常に高価であるため、設計者はシステムの要求性能とコストのバランスを考慮し、材料を慎重に判断する必要がある。

設計通りの性能を持つ基板を確実に手に入れるためには、製造メーカーに対して具体的な仕様を伝えることが不可欠である。単に「FR-4」とだけ指定するのではなく、使用したい材料のメーカー名と正確な品番、目標とするインピーダンスの値、必要なガラス転移温度(Tg)などを明確に指示する必要がある。そして、製造された基板が指定通りの特性を持つかを確認するため、「テストクーポン」と呼ばれる評価用の小片を作成するよう依頼することが推奨される。このひと手間が高品質なシステム開発の礎となる。

FR-4は現代の電子機器を支える基盤技術であるが、それを単一の材料としてではなく、多様な特性を持つ材料ファミリーとして捉える視点が求められる。ハードウェアの物理的な特性を深く知ることは、ソフトウェアだけでは解決できない問題を未然に防ぎ、システム全体のパフォーマンスを最大限に引き出すための強力な武器となるだろう。

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