L4スイッチ(エルフォースイッチ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
L4スイッチ(エルフォースイッチ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
レイヤー4スイッチ (レイヤーフォー スイッチ)
英語表記
L4 switch (エルフォースイッチ)
用語解説
L4スイッチとは、OSI参照モデルの第4層であるトランスポート層で動作するネットワーク機器である。主に「負荷分散(ロードバランシング)」の機能を提供し、複数のサーバーへのアクセスを効率的に振り分ける役割を担う。Webサービスやアプリケーションなど、アクセスが集中するシステムにおいて、特定のサーバーに処理能力が偏ることを防ぎ、システム全体の可用性、拡張性、性能を向上させるために不可欠な存在となっている。L4スイッチは、クライアントからのリクエストを複数の実サーバーへ適切に分散させることで、各サーバーの負荷を均一化し、サーバーダウンのリスクを低減する。これにより、ユーザーは常に安定したサービスを受けられるようになり、企業はビジネスの継続性を確保できる。
L4スイッチの「L4」とは、OSI参照モデルにおける第4層、すなわちトランスポート層を指す。一般的なネットワークスイッチがMACアドレス(L2)やIPアドレス(L3)に基づいてパケットを転送するのに対し、L4スイッチはIPアドレスだけでなく、TCPやUDPのポート番号といったトランスポート層の情報を解析してパケットの転送先を決定したり、通信を制御したりする。この機能により、L4スイッチは単純なルーティングやスイッチングを超えた高度なトラフィック管理が可能となる。
L4スイッチの最も主要な機能は負荷分散(ロードバランシング)である。これは、インターネットからの多数のリクエストを、背後に配置された複数の実サーバー(リアルサーバー)に効率良く振り分ける機能である。クライアントからのアクセスはまずL4スイッチが持つ仮想IPアドレス(VIP)に向けられる。L4スイッチはこのVIPでリクエストを受け取ると、あらかじめ設定されたアルゴリズムに従って、利用可能な実サーバーの中から最適なものを選び出し、そのサーバーにリクエストを転送する。代表的な負荷分散アルゴリズムには、リクエストを順番に振り分ける「ラウンドロビン」、最もコネクション数が少ないサーバーに振り分ける「最小コネクション数」、サーバーの処理能力に応じて重み付けを行う「重み付けラウンドロビン」などがある。
L4スイッチは、単にリクエストを振り分けるだけでなく、各実サーバーの状態を定期的に監視する「ヘルスチェック」機能も備えている。これにより、サーバーがダウンしたり、応答が遅延したりする異常を検知した場合、そのサーバーへのリクエストの振り分けを一時的に停止し、正常なサーバーのみにトラフィックを誘導できる。これにより、一部のサーバーに障害が発生してもシステム全体のサービス停止を防ぎ、高い可用性を維持できる。
また、特定のクライアントからの通信を常に同じ実サーバーに転送し続ける「セッション維持(スティッキーセッション)」機能もL4スイッチの重要な役割の一つである。Webアプリケーションでは、ログイン情報やショッピングカートの内容といったユーザーごとのセッション情報がサーバー側に保存されることが多いため、異なるサーバーにリクエストが振り分けられるとセッション情報が失われ、ユーザー体験が損なわれる可能性がある。L4スイッチは、クライアントのIPアドレスやクッキー情報などを基に、一度通信を確立したサーバーへ後続のリクエストも転送することで、セッションの一貫性を保つ。
さらに、L4スイッチはアドレス変換(NAT)の機能も持つことが多い。外部からのクライアントは仮想IPアドレス(VIP)宛に通信を行うが、L4スイッチはこれを内部の実サーバーのプライベートIPアドレスに変換して転送する。この際、サーバーからの応答パケットも同様に、L4スイッチが自身のIPアドレスからの応答としてクライアントに返すことで、サーバーの内部構成を隠蔽し、セキュリティを向上させる効果もある。
大規模なWebサービスでは、SSL/TLSによる暗号化通信が標準となっているが、この暗号化・復号処理はサーバーにとって大きな負荷となる。L4スイッチの中には「SSLオフロード」機能を持つものもあり、クライアントとのSSL/TLSハンドシェイクや暗号化・復号処理をL4スイッチ自身が代行する。これにより、実サーバーは暗号化処理の負荷から解放され、本来のアプリケーション処理に専念できるため、サーバーの性能を最大限に引き出し、全体のスループットを向上させることが可能となる。
L4スイッチの導入は、システム管理者にとって多くのメリットをもたらす。第一に、前述の通り可用性が飛躍的に向上する。単一のサーバーがダウンしても、残りのサーバーでサービスを継続できるため、サービス停止時間を最小限に抑えられる。第二に、システムの拡張性が高まる。アクセス増加に対応するためには、既存のサーバーに加えて新しいサーバーをL4スイッチ配下に追加するだけで良く、既存のシステム構成に大きな変更を加えることなく容易にキャパシティを増強できる。第三に、パフォーマンスが向上する。トラフィックが複数のサーバーに分散されることで、個々のサーバーの負荷が軽減され、応答速度が向上し、より多くの同時接続を処理できるようになる。
これらの機能とメリットから、L4スイッチは、大量のアクセスを処理するWebサーバー群、アプリケーションサーバー、データベースサーバー、VPNゲートウェイなど、多くのネットワークサービスの前段に配置され、ミッションクリティカルなシステムや大規模なサービスインフラにおいて不可欠なコンポーネントとして広く利用されている。