Rawデバイスマッピング(ローデバイスマッピング)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
Rawデバイスマッピング(ローデバイスマッピング)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
ローデバイスマッピング (ローデバイスマッピング)
英語表記
Raw device mapping (ローデバイスマッピング)
用語解説
Rawデバイスマッピングは、仮想化環境において、仮想マシンが物理ストレージデバイスに直接アクセスする技術である。通常の仮想ディスクファイルを経由するのではなく、ハイパーバイザーが物理ストレージの論理ユニット番号(LUN)や物理ディスクそのものを、ゲストOSに直接提示する仕組みだ。これにより、ゲストOSはあたかも物理マシン上で動作しているかのように、ストレージとやり取りできるようになる。これは、特に高いI/Oパフォーマンスを要求するアプリケーションや、特定のストレージ要件を持つシステムで利用されることが多い。
詳細について説明する。仮想化環境における一般的なストレージアクセス方法は、仮想マシンが仮想ディスクファイル(例えばVMDKファイルやVHDXファイル)にデータを書き込み、ハイパーバイザーがその仮想ディスクファイルをホストOSのファイルシステム上に保存し、さらにホストOSが物理ストレージに書き込むという多層的な構造を採る。この方式では、ホストOSのファイルシステムがキャッシュやアクセス制御、スナップショットなどの管理を行うため、柔軟性が高いというメリットがある。しかし、ファイルシステム層が介在することで、どうしてもI/O処理にオーバーヘッドが発生し、パフォーマンスがわずかに低下する可能性がある。
Rawデバイスマッピングでは、この仮想ディスクファイルとホストOSのファイルシステム層をスキップする。ハイパーバイザーは、物理ストレージコントローラが認識するLUN(Logical Unit Number、ストレージの論理的な区画を示すID)や物理ディスクパーティションそのものを、直接ゲストOSに割り当てる。ゲストOSは、割り当てられたLUNを自身のストレージデバイスとして認識し、その上に独自のファイルシステム(NTFS, ext4など)を構築したり、Rawデータとして直接利用したりする。このとき、ハイパーバイザーは、物理ストレージへのアクセス要求を、仮想ディスクファイルのように変換することなく、ほぼ直接的にストレージコントローラへ転送する。これをパススルー方式と呼ぶこともある。
Rawデバイスマッピングの主なメリットは、まずパフォーマンスの向上にある。ホストOSのファイルシステム層が省略されるため、I/O処理のオーバーヘッドが削減され、特にデータベースシステムのように大量かつ高速なディスクI/Oを必要とするアプリケーションにおいて、より高いスループットと低いレイテンシを実現できる可能性がある。この直接アクセスにより、物理環境に近いI/O性能が期待できる。
次に、特定のアプリケーション要件を満たせる点がある。一部のエンタープライズアプリケーションやクラスタリングソフトウェア(例えばOracle Real Application Clusters (RAC)など)は、物理ストレージへの直接アクセスを前提とした設計になっている場合がある。仮想ディスクファイルを経由したアクセスでは正しく動作しない、あるいはサポートされないケースが存在するが、Rawデバイスマッピングを使用することで、これらのアプリケーションを仮想環境上で動作させることが可能になる。また、ストレージアレイが提供する高度な機能、例えばハードウェアレベルのスナップショットやレプリケーション、重複排除といった機能を、ゲストOS側から直接、あるいはより効率的に利用できる場合がある。これは、仮想化ソフトウェアのストレージ管理機能に依存せず、既存のストレージインフラストラクチャを最大限に活用したい場合に有効だ。
一方で、Rawデバイスマッピングにはいくつかのデメリットと注意点が存在する。最も顕著なのは、管理の複雑性が増すことである。仮想ディスクファイルは単一のファイルとして扱えるため、バックアップ、リストア、クローン作成、ライブマイグレーション(vMotionのような、実行中の仮想マシンを別の物理ホストに移動する機能)といった仮想化基盤が提供する管理操作が比較的容易だ。しかし、RawデバイスマッピングされたLUNは、物理ストレージと密接に紐付けられるため、これらの操作が制限されたり、特別な手順が必要になったりする場合がある。例えば、スナップショット機能が利用できない、あるいはライブマイグレーションが制約を受けるといったケースがある。
また、ポータビリティが低下する点も挙げられる。特定の物理ストレージデバイスに直接依存するため、異なるストレージシステムを持つ別のホストや、異なる仮想化プラットフォームへ仮想マシンを移行する際に、再構成や特別な準備が必要となる場合が多く、柔軟な運用が難しくなる。これは、仮想ディスクファイルのように簡単にコピーして別の環境で起動するといった運用が難しいことを意味する。
セキュリティとデータ保護に関しても注意が必要だ。ゲストOSが物理ストレージに直接アクセスするため、ゲストOS内部での誤った操作や設定ミスが、物理ストレージ上のデータに直接的な影響を与え、場合によってはデータ破壊につながるリスクが高まる。ハイパーバイザーが提供するストレージレベルの保護機能やアクセス制御の一部が機能しなくなる可能性もある。特に、複数の仮想マシンが同じLUNにRawマッピングされると、データ破損の危険性があるため、ストレージレベルでの排他制御が必須となる。これは、各仮想マシンがデータの整合性を保つための協調動作が必要となることを意味する。
さらに、Rawデバイスマッピングの実装方法は、使用するハイパーバイザー(VMware vSphere, Microsoft Hyper-V, KVMなど)によって異なる。それぞれのハイパーバイザーが提供するドキュメントやベストプラクティスを十分に理解し、正しく設定することが不可欠である。これらの複雑性から、特別な要件がない限り、通常の仮想ディスクファイルを使用することが推奨されることが多い。Rawデバイスマッピングは、そのメリットがデメリットを上回る特定のユースケースにおいて、慎重に検討・導入されるべき高度な機能と言える。