VoIP(ボイスオーバーインターネットプロトコル)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
VoIP(ボイスオーバーインターネットプロトコル)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
ボイスオーバーインターネットプロトコル (ボイスオーバーインターネットプロトコル)
英語表記
VoIP (ボイスオーバーインターネットプロトコル)
用語解説
VoIP(Voice over Internet Protocol)とは、インターネットプロトコルを用いて音声データを伝送する技術の総称である。従来の電話網が電話回線という専用の回線を使用して音声を伝達していたのに対し、VoIPはインターネット上で利用されるデータ通信の技術を応用し、音声をデータパケットに変換して送受信する。これにより、コンピュータネットワーク、特にインターネットを通じて電話をかけることが可能となり、「IP電話」や「インターネット電話」とも呼ばれる。
この技術の登場は、電話通信のあり方を大きく変革した。従来の電話通信が、通話開始から終了まで特定の回線を占有する「回線交換方式」であったのに対し、VoIPはインターネットで一般的な「パケット交換方式」を採用する。音声はデジタルデータに変換され、小さなパケット(データのかたまり)に分割され、それぞれが独立してネットワーク上を流れる。受信側でこれらのパケットが再び音声データとして組み立てられ、再生される仕組みだ。これにより、データ通信と音声通信を同じネットワーク基盤上で統合的に扱うことが可能になり、通信インフラの効率化やコスト削減に大きく寄与している。
VoIPの基本的な動作原理は、まず発信者の声というアナログ信号をデジタル信号に変換することから始まる。このデジタル化された音声データは、そのままではデータ量が大きすぎるため、効率的な伝送のために圧縮される。この圧縮と伸長を行うのが「コーデック(Codec)」と呼ばれる技術であり、G.711やG.729といった様々な標準が存在する。圧縮された音声データは、IPネットワーク上でリアルタイムに伝送するために、「RTP(Real-time Transport Protocol)」と呼ばれるプロトコルによってパケットに分割される。これらのRTPパケットは、さらに「UDP(User Datagram Protocol)」や「IP(Internet Protocol)」のヘッダが付加され、宛先IPアドレスに基づいてネットワーク上を転送される。
受信側では、送られてきたIPパケットからUDPヘッダとRTPヘッダが取り除かれ、元の音声データが抽出される。これらのパケットは到着順序が乱れることがあるため、必要に応じて並び替えられ、失われたパケットがあれば一定の範囲内で補間されることもある。そして、コーデックによって圧縮されたデータが伸長(復元)され、最終的にアナログ音声信号へと変換されて、受話器やスピーカーから出力される。この一連のプロセスは、通話が途切れることなく、ほぼリアルタイムで進行することが求められる。
VoIPシステムを構築する上では、いくつかの主要なプロトコルが利用される。最も重要なのは、通話の開始、終了、転送といった呼(コール)の制御を行う「SIP(Session Initiation Protocol)」である。SIPはテキストベースで実装されており、Web技術との親和性が高く、柔軟なサービス開発を可能にする。SIP以前には「H.323」という標準も存在したが、現在はSIPがVoIPの呼制御の主流となっている。RTPは前述の通り音声データのリアルタイム伝送を担当し、その補助としてRTPの品質監視や制御情報交換を行う「RTCP(RTP Control Protocol)」が使われる。
VoIPを実現するための主要なコンポーネントには、IP電話機や、PCやスマートフォンにインストールして利用するソフトフォン、さらには従来の電話網(PSTN)とVoIP網を接続するための「VoIPゲートウェイ」がある。企業内での利用では、従来のPBX(構内交換機)の機能にVoIP技術を組み合わせた「IP-PBX」が導入されることが一般的であり、近年ではクラウド上でPBX機能を提供する「クラウドPBX」も普及している。これらの中核をなすのが、SIPプロキシサーバーやレジストラーサーバーといった、ユーザー登録や呼ルーティングを行うサーバー群である。また、ネットワークアドレス変換(NAT)環境下でのVoIP通信を可能にするために、「STUN(Session Traversal Utilities for NAT)」や「TURN(Traversal Using Relays around NAT)」、そしてそれらを統合する「ICE(Interactive Connectivity Establishment)」といったNATトラバーサル技術も重要な役割を果たす。
VoIPの最大の利点は、通信コストの削減である。特に長距離通話や国際通話において、従来の電話網を利用するよりもはるかに安価、あるいは無料で通話できるケースが多い。これは、既存のデータネットワークを有効活用できるため、専用回線の維持費用が不要になるためだ。また、VoIPは柔軟な拡張性も持つ。ユーザーの増減に合わせた回線数の調整が容易であり、物理的な配線工事が不要な場合も多い。音声とデータのネットワークを統合することで、管理の手間やコストも削減できる。さらに、プレゼンス情報(相手の在席状況)の表示、ボイスメールのメール転送、Web会議システムとの連携など、単なる通話機能にとどまらない多様な付加サービスやユニファイドコミュニケーションを実現できる点も大きな魅力である。場所を選ばずにインターネット接続があればどこからでもオフィス電話番号で発着信できるなど、働き方の多様化にも貢献している。
しかし、VoIPには課題も存在する。最大の課題は、ネットワーク品質への依存度が高いことだ。パケットの遅延(レイテンシ)、パケットが到達する時間間隔のばらつき(ジッタ)、パケットの損失(パケットロス)が発生すると、通話品質が著しく劣化する。音声が途切れたり、エコーが発生したり、聞き取りにくくなったりする原因となるため、安定した通信品質を保証する「QoS(Quality of Service)」の仕組みが不可欠となる。また、VoIPはデータネットワークを利用するため、サイバーセキュリティの脅威に常にさらされている。盗聴、改ざん、サービス妨害(DDoS)攻撃などから通信を保護するための対策が重要だ。さらに、停電時にはIP電話機が利用できなくなる可能性があるため、電源供給の冗長化やバックアップ手段の検討も必要となる。緊急通報サービス(例:日本の110番、119番)との連携も、発信元の位置情報を正確に特定することが難しいため、法的な整備や技術的な対応が求められる。これらの課題を適切に管理し、克服することで、VoIPはより信頼性の高い通信インフラとしてその価値を最大限に発揮できる。