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WBEM(ウェブエム)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

WBEM(ウェブエム)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

ウェブベースエンタープライズ管理 (ウェブベースエンタープライズカンリ)

英語表記

WBEM (ウェブエム)

用語解説

WBEM (Web-Based Enterprise Management) は、多様なベンダーのITインフラストラクチャを統一的かつ標準的な方法で管理するための技術標準群である。サーバー、ストレージ、ネットワーク機器、アプリケーションといった企業のIT資産は多岐にわたり、それぞれが異なる管理方法を持つことが一般的であった。この状況では、管理者は個々の機器やソフトウェアに応じた専用ツールを使いこなす必要があり、運用管理の複雑さや非効率性が大きな課題となっていた。WBEMは、このような課題を解決し、IT環境全体を効率的に監視、制御、自動化することを目指して策定された。

WBEMの中核となるのは、CIM (Common Information Model) と呼ばれるオブジェクト指向の情報モデルである。CIMは、管理対象となるあらゆるITリソース(例えば、CPU、メモリ、ディスク、OS、ファイルシステム、ネットワークインターフェース、プロセス、アプリケーションなど)を抽象化し、共通のクラス、プロパティ、関連付けとして定義する。これにより、ベンダーやプラットフォームの違いを超えて、管理対象の情報を統一的な形式で表現できる。例えば、どのベンダーのサーバーであっても「CPU」という概念は存在し、その「コア数」や「クロック速度」といったプロパティを持つ、というように、共通の枠組みで記述することが可能になる。このCIMがあることで、特定のベンダーの実装に依存しない汎用的な管理ツールやスクリプトを作成できるようになる。

CIMによって定義された情報は、CIMOM (CIM Object Manager) と呼ばれるサービスを通じて提供される。CIMOMは、管理対象システム上の実際の情報(例えば、OSのバージョンや現在のCPU使用率など)を取得し、CIM形式に変換して提供する役割を担う。CIMOMは、内部で「プロバイダ」と呼ばれるモジュールと連携する。プロバイダは、特定のハードウェアやソフトウェア(例えば、NICや特定のデータベース)に特化し、そのデバイスから直接情報を収集したり、設定変更を適用したりする。これにより、CIMOMはシステムの多様な管理情報を一元的に収集し、外部からの要求に応じてCIM形式で応答できる。

WBEMは、CIM情報をネットワーク経由でやり取りするための標準プロトコルも定義している。これは、HTTPまたはHTTPS上でCIM XMLと呼ばれる形式を利用する。CIM XMLは、CIMによって記述された管理情報をXML形式で表現し、Webサービス技術の一つであるSOAP (Simple Object Access Protocol) と組み合わせて利用されることが多い。これにより、ネットワーク上の任意の場所から、標準的なWebプロトコルを使って管理対象システムのCIM情報にアクセスし、管理操作を実行することが可能になる。つまり、Webブラウザや汎用的なクライアントソフトウェアから、異なるベンダーのサーバーやネットワーク機器の状態を統一的に監視したり、設定を変更したりできる基盤を提供する。

WBEMの代表的な実装例の一つに、Microsoftが提供するWMI (Windows Management Instrumentation) がある。WMIは、Windows OS上で動作するWBEMの完全な実装であり、Windows環境のあらゆるリソース(OSの設定、サービス、デバイス、ユーザー、プロセス、イベントログなど)をCIMに準拠した形式で管理できる。システム管理者は、WMIを利用することで、PowerShellスクリプトや様々な管理ツールを通じて、ローカルまたはリモートのWindowsマシンの情報を取得したり、設定を変更したり、タスクを自動化したりできる。WMIは、Windows環境における高度な管理自動化の基盤として広く利用されており、WBEMの具体的な価値を示す強力な例と言える。

WBEMを導入する主なメリットは、まずその標準化による相互運用性の高さにある。異なるベンダーの製品であっても、CIMに準拠していれば共通の管理手法を適用できるため、管理ツールの導入コストや学習コストを削減できる。次に、管理の自動化と効率化が挙げられる。定型的な監視や設定変更、障害対応のプロセスをスクリプト化し、自動実行することで、運用負荷を大幅に軽減できる。また、特定のベンダー製品に縛られないため、管理ソリューションの選択肢が広がり、ベンダーロックインのリスクを低減できる点も大きな利点である。

一方で、WBEMの実装や利用にはいくつかの考慮事項も存在する。CIMモデルが非常に広範かつ詳細であるため、その全てを理解し活用するには一定の学習コストが必要となる場合がある。また、大規模な環境において多くの管理対象から継続的に情報を収集する際には、ネットワーク帯域や管理システムの処理能力に影響を与える可能性もあるため、パフォーマンスチューニングが重要となる。セキュリティ面では、WBEMプロトコルが管理情報をやり取りする上で、通信の暗号化(HTTPSの利用)や認証・認可の仕組みを適切に設定し、不正アクセスから保護することが不可欠である。しかし、これらの課題を適切に管理することで、WBEMは現代の複雑なITインフラを効率的かつ効果的に運用するための強力な標準技術として、その価値を最大限に発揮する。

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