【ITニュース解説】To buy or to build - that is the question for a CAD manager
2025年09月20日に「Dev.to」が公開したITニュース「To buy or to build - that is the question for a CAD manager」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
CADツールは自社開発か購入か。以前は購入が推奨されたが、AIツールによりソフトウェア開発・保守コストが低下。これにより自社開発の魅力が増し、迅速なプロトタイプ作成やライセンス費用削減の可能性が出てきた。
ITニュース解説
ソフトウェアを自社で開発するか、それとも既製品を購入して利用するかという選択は、IT業界で常に議論される大きなテーマだ。特に、半導体企業で電子回路の設計に使われるCAD(Computer Aided Design)ツールや、より専門的なEDA(Electronic Design Automation)ツールといったソフトウェア群の導入・運用を担うCADマネージャーにとって、この判断は企業の競争力に直結するため非常に重要である。
自社でツールを開発する「Build」アプローチには、いくつかの大きなメリットがある。まず、競合他社が利用できない、自社独自のツールを手にできるため、企業の競争優位性を確立できる。また、必要な機能を自由に実装し、不要な機能は省くなど、ツールの全機能を完全に制御できる点が魅力だ。ツールのサポート期間や廃止時期も自社で決定できるため、長期的な戦略に合わせた柔軟な運用が可能になる。さらに、既製品のライセンス契約更新時に発生しがちな、予期せぬ費用増加(Sticker Shock)を回避できる利点もある。
しかし、自社開発には多くの困難が伴うことも忘れてはならない。最初の動作可能なプロトタイプを作る労力と比較して、それを実際に使える製品レベルにまで磨き上げ、さらに長期にわたってサポートし続けるには、実に10倍以上のリソースが必要となることが一般的だ。魅力的なプロトタイプ開発は楽しいものだが、徹底的なテスト、詳細なドキュメント作成、そして利用者のトレーニングといった、製品化に不可欠な作業の労力は過小評価されがちである。自社開発したツールは、そのすべてがチームにとって恒久的なサポート負担となる。もし、そのツールを最初に開発したエンジニアが会社を辞めてしまったら、バグ修正や新しい機能の追加、さらには連携する他のツールの進化への対応は極めて困難になるだろう。専門のEDAツール企業は、このような開発・サポートコストを多くの顧客に分散できるため、単一企業が抱える負担とは根本的に異なるのだ。
これらの課題を考慮すると、これまで多くのCADマネージャーは、「自社がEDAツールを販売するベンダーでない限り、必要なツールは可能な限り購入すべきだ」という結論に至っていた。これは、コストとリスクを総合的に判断した結果、合理的だと考えられてきた。ただし、自社の「秘伝のタレ」とも言える独自のノウハウと密接に関わるツールや、市場にまだ存在しない全く新しいツールが必要な場合は、自社開発がやむを得ない選択肢となることもあった。
しかし、この長年の常識が今、AIアシストツールの急速な進化によって大きく変わりつつある。CursorやCopilotのようなAIツールは、コーディング作業を強力に支援し、ソフトウェア開発全体のコストを大幅に低下させている。このコスト削減効果は、開発後の長期的なサポートにも波及すると考えられる。特に、大規模言語モデル(LLM)は、単体テストの自動生成やドキュメント作成において高い能力を発揮する。また、ソースコードが手元にあれば、古くて不十分なマニュアルを読み解く代わりに、チャットウィンドウでAIに直接質問することで、ツールの挙動や使い方を理解できるようになるかもしれない。これは、ドキュメント作成や維持の負担を劇的に軽減する可能性を秘めている。
この新しい考え方を裏付ける具体的な事例として、筆者は自身の経験を挙げている。それは、半導体製品に使用される知的財産(IP)ブロックの管理を行うIPLM(Intellectual Property Lifecycle Management)ツールの導入に関わった経験だ。IPLMツールは、社内外のIPブロックを追跡し、それらの登録、検索、製品リリースや監査のためのAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)を提供するものだ。市場には高価な商用IPLMツールも存在するが、既存のワークフローに統合するためには多大な労力が必要となることが課題だった。実際、筆者のチームの経験豊富なエンジニアが商用ツールの設定に数ヶ月を要し、ベンダーのサポート担当者との密な連携が不可欠だったという。このような状況で、専門的なオープンソースのIPLMツールが見当たらないことから、筆者はPythonとMySQLデータベースを用いて基本的なIPLMシステムのプロトタイプを自社で構築することを決断した。開発プロセスでは、アーキテクチャ定義、要件明確化の後、Cursor AIのようなコードアシストツールを積極的に活用してコーディングを進め、テストと機能の微調整を繰り返した。この一連の作業は、MySQLデータベース設定やGitHubリポジトリの準備、CI/CD(継続的インテグレーション・継続的デリバリー)アクションのデバッグを含めても、わずか約1週間で完了したという。筆者はこの経験から、AIアシストツールを活用することで、自社開発プロトタイプを製品レベルに引き上げるのに必要な労力が、商用ツールの導入・設定にかかる労力よりも少なく、ライセンス費用も節約できる可能性を見出している。