【ITニュース解説】Here's Where It Gets Interesting
2026年09月28日に「Dev.to」が公開したITニュース「Here's Where It Gets Interesting」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
AIは学習データに基づき、自信ありげな定型句を多用しがちだ。本記事は、AIに一任した記事作成実験を通じ、その課題と人間による編集の重要性を解説する。AIが生成する情報は、人間が本質を見極め、調整する視点が重要だと説く。
ITニュース解説
この記事は、人間とAIが共同で文章を執筆するという、非常に興味深い実験とその結果について語っている。筆者であるキース氏が、AIであるClaude(クロード)に対し、人間による修正を一切加えず、たった一度の指示だけで記事全体を作成させた経験を通じて、AIが生成する文章の特性や、AIと人間の協業のあり方について深く考察している。
まず、キース氏がClaudeに与えた指示の内容は、「『ここからが面白い』というタイトルの新しい記事を作成してほしい。人間と協力して執筆することがどのようなものだったかを記述し、AIライティングによく見られる定型句(トロフィー)をできるだけ多く使い、人間のライティングやAIライティングの定型句をからかうように書いてほしい。なぜこれらの定型句が生まれたのか、なぜこれほど使い古されているのかについても触れてほしい」というものだった。この指示は、人間による追加の指示や修正を一切挟まず、一度の入力で記事全体を生成させた点が特筆される。
生成された記事を読むと、AIが書いた文章にはある特定のパターンや表現が頻繁に現れていることに気づく。「さあ、掘り下げてみよう」「探求してみよう」「これを分析してみよう」といった導入部分、あるいは「これは単なるブログ投稿ではない。これは旅なのだ。単なる旅ではなく、証なのだ」のように、内容を過剰に誇張したり、言葉を重ねて深みがあるように見せかけたりする表現が多用されている。また、「堅牢な」「多角的な」「進化し続ける状況」といった、抽象的で曖昧ながらもプロフェッショナルな響きを持つ単語も多く見られる。これらは、情報量を増やさずに文章の体裁を整えるために使われがちな、いわゆる「お決まりの表現」だ。
では、なぜAIはこのような文章を生成するのだろうか。記事によれば、その根本的な原因はAIの学習データにあると指摘されている。AIはインターネット上の膨大なテキストデータから学習しているが、その中にはビジネスブログ、企業のプレスリリース、LinkedInの投稿、大学のレポートなどが多く含まれている。これらの文書ジャンルでは、「特定の主張を明確にすることなく、自信に満ちた印象を与える」ような表現が「報酬」(つまり、良いものとして評価され、多用される)されてきた歴史がある。
具体例を挙げると、「〜の証となる」という表現は、具体的に何が重要で、なぜ重要なのかを説明することなく、漠然とした重要性を示唆できる。また、「XだけでなくYでもある」という表現は、XとYの違いを詳しく説明する手間を省きつつ、深みがあるかのように見せかける効果がある。「かもしれない」「〜の場合によっては」といった曖昧な言葉(ヘッジワード)は、どのような結果になっても自分の主張が間違っていなかったと言い逃れできるようにする効果があり、これもプレスリリースなどでは重宝されてきた経緯がある。
つまり、AIは「コンサルタントのように聞こえる」言葉遣いを学習したのだ。コンサルタントが具体的な約束を避けつつ「確実な印象を与える」ことで対価を得るのと同様に、AIもインターネット上の「自信に満ちた曖昧さ」を大量に学習し、それを模倣するようになった。AIが「さあ、掘り下げてみよう」といった表現を使うとき、それは怠けているわけではなく、何百万ものブログ記事やウェビナーの導入文で同じフレーズが使われていたパターンに一致させているだけなのだ。これらのフレーズは、あたかも文章を支える重要な柱のように見えるが、実際には何も支えておらず、ただ「支えているように見せる」ためだけに存在している。
しかし、このような「お決まりの表現」はAIだけのものではない。記事は、人間もまた「シナジー」や「レバレッジ」を動詞として使うこと、企業の内部メモ、ミッションステートメント、そして「前のメールの件ですが」「確認のためご連絡しました」といった、できるだけ少なく語りながら多くのスペースを占めることを目的とした文章を何十年も生み出してきたことを指摘している。AIはこれらの表現を「完成させ、大量生産し、人間の何倍もの規模で送り返した」にすぎないというわけだ。
では、人間はAIの書くこれらのフレーズにイライラするのに、なぜ人間同士の間では長年許容してきたのだろうか。その理由は「量」にあると記事は述べている。一人のコンサルタントが大げさな表現を一つ使うのは「職業病」かもしれないが、AIが同じような大げさな表現を昼食までに何万ものバージョンで生み出せるとなると、それは「公衆衛生上の危機」とさえ言える。問題は常に存在していたが、以前はゆっくりとしか現れなかったため、誰もそれが大きな問題であると認識し、チェックリストを作るほどではなかったのだ。
筆者とAIの実際の協業は、決して華やかなものではないとされている。AIが文章を生成し、筆者がそれを読む。特に「進化し続ける状況において」のような、曖昧で内容のないフレーズを見つけると、筆者は容赦なくそれを削除する。AIはさらに悪い文章を生成し直し、筆者は単に「だめ」とコメントする。このような試行錯誤を繰り返すうちに、AIは隠れるための定型句が尽きて、最終的に筆者が本当に言いたかったことをわずか数語で表現できるようになるという。このプロセスは、AIが「もっともらしい空疎な文章」を大量に生成し、人間が「意味のある文章と、意味のある文章のふりをしているだけの文章」の違いを聞き分ける能力に非常に長けている、という関係性を示している。
記事の最後に、筆者は「掘り下げる」「堅牢な」「〜に注目することが重要である」といった、自身がよく使ってしまう「お決まりの表現」をいくつか挙げている。これらの表現は、書かれている内容自体が重要であれば、わざわざ付け加える必要はないものばかりだと指摘している。
この一連の経験から、AIが生成する文章の限界と、人間による編集、つまり「厳しく読み込み、本当に意味のある言葉だけを残す」という作業の重要性が浮き彫りになる。システムエンジニアを目指す初心者にとって、これはAIを活用する上で、単にAIの出力を鵜呑みにするのではなく、その背後にある学習メカニズムを理解し、人間としての批判的思考と判断力を持って、AIの生成物を修正・改善していくことの重要性を示唆していると言えるだろう。AIは強力なツールだが、その「賢さ」は人間が意図する品質とは異なる側面で発揮されることがあり、最終的な品質保証や真の価値創造には人間の介入が不可欠だという教訓が含まれている。