【ITニュース解説】I Released My First iOS App at 60 — Here’s What I Learned as a Solo Developer
2026年09月16日に「Dev.to」が公開したITニュース「I Released My First iOS App at 60 — Here’s What I Learned as a Solo Developer」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
60歳の個人開発者が、ダンスの課題解決のためAIを活用したiOSアプリ「MoveMaster」をリリース。専門知識がなくても「自分はエンジニアではない」という壁をAIで乗り越え、100ダウンロードを達成した。全てを知らなくても、まずアイデアを形にすることの重要性を示している。
ITニュース解説
この記事は、60歳で初めてのiOSアプリをリリースした日本人ソロ開発者の体験談を紹介している。彼はプロのソフトウェアエンジニアではなく、普段は廃棄物回収会社の総務として給与計算や社会保険、社内システム管理といった業務に携わっている。しかし、長年にわたりVB6、Kotlin、Flutterといった様々な技術に興味を持ち、必要に応じて独学で習得してきた。そして、2026年8月、60歳という節目に自身のiOSアプリ「MoveMaster AI Dance Analyzer」をApp Storeで公開し、最近では100ダウンロードを達成した。この100という数字は、多くの開発者にとっては小さいかもしれないが、彼にとっては、自らが想像し、設計し、苦労し、作り上げたものが実際に100人の人々に届いたという大きな意味を持っていた。
MoveMasterを開発した動機は、彼自身の長年の趣味であるストリートダンスから来ている。ダンスの練習中に「インストラクターと同じ動きをしているはずなのに、なぜ自分の動きは違って見えるのか」という疑問を抱えていた。鏡を見たり、スマートフォンで録画して何度も見返したりしても、具体的に何が違うのかが分からないという経験は多くのダンサーにあるだろう。彼は、単に練習動画を見るだけでなく、ダンサーが動きの違いを客観的に視覚化し、分析できるツールがあれば、この問題を解決できると考えた。これがMoveMasterの出発点となった。
MoveMasterは、ダンスやスポーツのための動画分析および練習アプリとして設計されている。その主な機能には、二つの動画を並べて比較できるサイドバイサイド動画比較、AIを活用して人の姿勢や骨格を可視化するAIポーズ/スケルトン可視化、自動での動画同期、動きを細かく確認できるスローモーション再生、左右反転表示のミラーリング、体の動きの軌跡を表示するモーション軌跡、体の位置合わせを助けるガイド、特定区間を繰り返すA/Bリピート、音楽のタイミングを把握できる波形表示、振り付けを覚えるための練習ツール、そして動画上に直接テキストや線、矢印でメモを残せる注釈機能などがある。これらの機能は、漠然とした身体感覚を客観的なデータとして捉え、具体的な改善点を発見し、学習を深めるための手助けとなる。例えば、「何かおかしい」と感じる部分に直接「重心がここで変わる」といったメモを残せることで、次回の練習に活かせるようになる。
開発を進める上で、彼が最も大きな心理的障壁と感じたのは「自分は本物のエンジニアではない」という思いだった。コンピュータサイエンスの学位を持たず、ソフトウェア会社でのキャリアもないため、知らないことも多く、開発プロセスは決して洗練されたものではなかった。彼の開発は、アイデアを思いつき、実装を試みるも失敗し、その原因を調べてAIに質問し、再び試みては別の箇所を壊し、それを修正するという、試行錯誤の連続だった。しかし、このプロセスにおいてAIの存在が大きな変化をもたらした。AIは製品を魔法のように作り上げたわけではないが、「これはどうやってやるのかわからない」という状態から「まだどうやるかわからない」という前向きな姿勢へと変え、アイデアを実験に移すまでの距離を劇的に短縮した。開発者が何を構築するかを決め、問題を理解し、アイデアをテストし、バグを修正し、UIを再考し、アプリを提出し、App Storeの要件に対応し、困難に直面しても諦めずに続けるという基本的な部分は変わらない。
60歳という年齢は、日本において働く人生における重要な節目である。彼の雇用状況が変わり、収入が大幅に減少したことをきっかけに、彼はこれからの人生をどのように過ごしたいかを真剣に考えた。ただ徐々に縮小していく人生を受け入れるのではなく、その反対を行くことを決意した。何かを構築したい、学びたい、そして日本の一人の個人が作った小さなアプリが世界中の人々に届くか試したいという強い思いが彼を動かした。MoveMasterが18言語に対応しているのも、この世界へ向けた挑戦の一環である。どこまで進めるかはまだ分からないが、だからこそ挑戦する意味があると彼は感じている。
最初の100ダウンロードは、大々的なリリースイベントや大規模な広告キャンペーン、有名インフルエンサーの推薦があったわけではない。彼は知り合いにアプリを共有し、記事を書き、動画を投稿し、ダンサーやインストラクターと対話し、地道にアプリの改善を続けた。その結果、少しずつダウンロード数が増え、最終的に100という数字に達した。この経験から彼は、最初のユーザーはアプリが存在するだけで現れるわけではなく、アプリがなぜ作られたのか、誰の役に立つのかを伝え続ける努力が必要だと学んだ。今もその方法を模索中である。
彼は現在、RevenueCatが主催する国際的なアプリ開発コンペティション「Shipaton 2026」に挑戦している。60歳で国際コンペに参加するなど、数年前には想像もしなかったことだが、それがまた楽しいと語る。MoveMasterは既にリリースされ、実際に多くの人に使われている。彼は今もアプリの改善を続けながら、さらにどこまでアプリを成長させられるかを見極めようとしている。
これまで日本語での発信が主だったが、MoveMasterが18言語に対応していることに気づき、アプリを世界に届けたいなら、自分自身も日本の外に出て発信する必要があると感じ、DEVコミュニティに初めて投稿した。彼は、ソロアプリ開発、Flutter、AIアシスト開発、App Storeでのリリース、RevenueCatの活用、動画処理、自身の趣味からプロダクトを構築すること、そして60歳からの開発者としての新しい章について、学びを共有していきたいと考えている。彼はまだ学ぶべきことがたくさんあると謙虚に語るが、全てを知っていなくても開発は始められる。次に何が起こるか分からないからこそ、何かを構築する意味がある。そして60歳でそのような場所にいることは、非常にエキサイティングだと彼は感じている。