Webエンジニア向けプログラミング解説動画をYouTubeで配信中!
▶ チャンネル登録はこちら

【ITニュース解説】77%が標的に――医療機関を狙う攻撃の実態と、求められる対策

2025年09月26日に「TechTargetジャパン」が公開したITニュース「77%が標的に――医療機関を狙う攻撃の実態と、求められる対策」について初心者にもわかりやすく解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

医療機関の77%がサイバー攻撃の標的となり、半数以上が身代金を支払ったが、データ復旧や秘匿は保証されない。ID基盤侵害も深刻化しており、セキュリティ対策の強化が急務である。

ITニュース解説

医療機関がサイバー攻撃の大きな標的になっているという現状は、システムエンジニアを目指す皆さんにとって、非常に重要な問題意識を持つべきテーマだ。最新の調査によると、過去12カ月の間に医療機関の77パーセントが何らかのサイバー攻撃の標的になったという。これは驚くべき数字であり、医療という社会インフラがどれほど危険にさらされているかを示している。さらに、攻撃を受けた医療機関の半数以上が、身代金を支払ってしまったという事実も明らかになっている。

なぜ医療機関が狙われるのか。医療機関は、患者の個人情報や病歴、治療に関する機密性の高いデータを大量に扱っている。これらの情報は、サイバー犯罪者にとって非常に価値が高く、例えば他の犯罪に悪用されたり、闇市場で売買されたりする可能性がある。また、医療機関のシステムが停止すれば、患者の命に関わる事態に発展しかねないため、緊急性が高く、犯罪者が身代金を要求しやすいという側面もある。

攻撃の手法として特に目立つのは、ランサムウェアと呼ばれる身代金要求型ウイルスだ。これは、コンピュータシステムやデータを勝手に暗号化し、アクセスできない状態にしてしまう。そして、データを元に戻すことと引き換えに金銭(多くは仮想通貨)を要求する。ニュース記事が指摘するように、多くの医療機関がこの身代金を支払っているが、実は身代金を支払っても、必ずしもデータが復旧するとは限らないし、暗号化されたデータが犯罪者の手元から完全に消え、秘密が守られる保証もない。実際に、身代金を支払ったにもかかわらず、データが復元されなかったり、復元されても一部のデータが破損していたり、さらには別の場所にデータが流出していたりするケースも少なくない。犯罪者は約束を守る義理がないため、一度お金を払ってしまえば、それっきりになってしまう危険性が非常に高いのだ。

さらに深刻な問題として、ID基盤の侵害が挙げられている。ID基盤とは、簡単に言えば、ユーザーがシステムにログインする際に使うIDやパスワードを管理する仕組みのことだ。これは、多くのシステムやサービスへの「鍵」を集中管理する重要な部分であり、ここが破られると、犯罪者は正規のユーザーになりすまして、内部ネットワークに侵入したり、重要なデータにアクセスしたり、システムそのものを乗っ取ったりすることが可能になる。医療機関の場合、電子カルテシステムや予約システム、医療機器を制御するシステムなど、様々なシステムがID基盤によって保護されているため、ここが侵害されると、医療行為そのものが停止したり、患者データが大量に漏洩したりするリスクが極めて高い。たとえば、医師や看護師のIDが盗まれれば、その権限で医療記録が改ざんされたり、薬の処方が不正に行われたりする恐れもある。

このような攻撃から医療機関を守るためには、どのような対策が必要なのだろうか。まず、技術的な対策が不可欠だ。

一つは、システムの脆弱性を常にチェックし、最新の状態に保つこと。OSやアプリケーションには、セキュリティ上の弱点(脆弱性)が見つかることがあり、これを放置すると攻撃の入り口となってしまう。定期的なアップデートやパッチ適用は、その弱点を塞ぐ基本的な対策だ。

二つ目は、強力な認証の導入だ。ID基盤の侵害を防ぐためには、パスワードだけに頼るのではなく、多要素認証(MFA)の導入が非常に効果的だ。これは、パスワードに加えて、スマートフォンに送られるワンタイムパスワードや生体認証(指紋や顔認証)など、複数の方法を組み合わせて本人確認を行う仕組みだ。これによって、たとえパスワードが盗まれたとしても、不正なログインを防ぐことができる。

三つ目は、データのバックアップと復旧体制の確立。ランサムウェア攻撃を受けた際に、身代金を支払うことなくシステムを復旧させる最も確実な方法は、定期的にデータのバックアップを取り、それを使ってシステムを元に戻すことだ。バックアップデータは、ネットワークから隔離された場所に保存し、攻撃の影響を受けないようにすることが重要だ。また、バックアップデータが実際に復旧に使えるかどうかのテストも定期的に行うべきだ。

四つ目は、ネットワークの監視と異常検知。不審な通信や活動をリアルタイムで監視し、異常を早期に発見して対処する仕組みを導入することも重要だ。侵入検知システムや侵入防御システム、セキュリティ情報イベント管理(SIEM)ツールなどがこれにあたる。

しかし、技術的な対策だけでは不十分だ。組織的な対策も同様に重要となる。

従業員へのセキュリティ教育は非常に重要だ。多くのサイバー攻撃は、従業員の不注意や知識不足を狙って行われる。例えば、フィッシング詐欺メールにだまされてIDやパスワードを入力してしまったり、不審なリンクをクリックしてウイルスに感染してしまったりするケースだ。従業員一人ひとりがセキュリティ意識を高め、怪しいメールやウェブサイトに注意を払うように教育する必要がある。

また、医療機関全体でセキュリティポリシーを策定し、それに従ってシステム運用や情報管理を行うことも必須だ。誰がどのような情報にアクセスできるのか、どのように情報を扱うのかといったルールを明確にし、定期的に見直しを行う必要がある。万が一攻撃を受けた際のインシデント対応計画も事前に策定しておき、被害を最小限に抑えるための手順を確立しておくことも重要だ。

システムエンジニアを目指す皆さんにとって、このニュースは、IT技術が社会の重要なインフラを支える上で、セキュリティがいかに重要であるかを再認識する良い機会になるだろう。単にシステムを構築するだけでなく、そのシステムをいかに安全に運用し、情報資産を守るかという視点が、これからのシステムエンジニアには不可欠だ。医療分野に限らず、金融、交通、エネルギーなど、あらゆる分野でITが深く関わる現代社会において、セキュリティ対策は企業の信頼性や事業継続に直結する。

医療機関が抱える問題は、今後システムエンジニアとして働く上で直面するであろうセキュリティ課題の一例に過ぎない。サイバー攻撃の手法は常に進化しており、それに対抗するためのセキュリティ技術も進化し続けている。常に最新の情報を学び、セキュリティの知識とスキルを磨くことは、将来、社会の安全と安心を支えるシステムを構築・運用するために、非常に重要な能力となるだろう。セキュリティは、システム構築における「おまけ」ではなく、設計段階から組み込むべき必須要素であり、システムエンジニアが専門家として深く関わるべき分野なのだ。データの価値と、それを守る責任の重さを理解し、セキュリティを意識した設計、開発、運用ができるシステムエンジニアが、今、そして未来の社会から強く求められていると言える。

関連コンテンツ

関連IT用語