Webエンジニア向けプログラミング解説動画をYouTubeで配信中!
▶ チャンネル登録はこちら

【ITニュース解説】THE UNCLAIMED: a digital archaeology field kit

2026年10月31日に「Dev.to」が公開したITニュース「THE UNCLAIMED: a digital archaeology field kit」について初心者にもわかりやすく解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

忘れ去られたウェブサイトの痕跡を調査する「THE UNCLAIMED」が開発された。これは、検索や過去アーカイブから証拠を集め、AIが分析してタイムラインやグラフで可視化するワークスペースだ。Next.jsやGemma AIを活用し、検証可能な知見を得る手助けをする。

ITニュース解説

ウェブサイトは日々生まれ、そして消えていく。そんな忘れ去られたウェブサイトが残した痕跡をデジタルで「発掘」し、調査するためのツールが「THE UNCLAIMED」というプロジェクトである。これは、まるで考古学者が古代遺跡を発掘するように、過去のインターネットの断片を紐解くためのデジタル版のフィールドキットだ。

このアプリケーションの主な目的は、消え去ったウェブサイトの「残り香」を徹底的に調査し、その証拠を体系的にまとめることにある。ユーザーは「ケース」と呼ばれる個別の調査を開始し、インターネット上に残された手がかりを集めていく。具体的には、まず検索エンジンを使って関連する情報を探し出し(これを「検索リード」と呼ぶ)、もしウェブサイトがまだ存在していれば、その現在のページを実際に「巡回」して調べる。さらに、Internet Archiveのような巨大なデジタル図書館に保存されている過去の記録を探し、ウェブサイトがどのように変化してきたかを辿ることもできる。これらの調査で得られた一つ一つの発見や観察結果は丁寧に保存され、最終的には時間軸に沿ったタイムライン、情報の関係性を示すグラフ、そして詳細なレポートとしてまとめられる。このツールは、意図的に少し不気味な雰囲気を漂わせるインターフェースを持っているが、提供される証拠はあくまで現実のデータに基づいた客観的なものである。

この「THE UNCLAIMED」を構築するために、様々な最新技術が組み合わされている。ウェブサイトの見た目や操作性を作るフロントエンドには、モダンなウェブ開発で広く使われている「Next.js」という技術と、プログラミング言語JavaScriptをより堅牢に扱うための「TypeScript」が採用されている。データの保存には「Drizzle」というツールを使ってデータベース(情報の倉庫)とのやり取りを効率化し、「Tiger Data Postgres」というサービスで高性能な「PostgreSQL」データベースが使われている。

外部の情報を利用するための連携も充実している。例えば、検索エンジンから必要な情報を自動的に取得するために「SerpApi」というサービスを利用し、これが調査の第一歩となる「検索リード」となる。過去のウェブサイトの姿を見るためには、その名の通りインターネットの歴史をアーカイブしている「Internet Archive」から古い記録を取り寄せる。また、現在稼働しているウェブサイトを一時的に安全な環境で開いて詳しく検査するために、「Browserbase」というサービスが活用されている。

このプロジェクトの特に特徴的な点は、人工知能(AI)である大規模言語モデル「Gemma 3 4B」が使われていることだ。調査で集められ、保存された証拠の断片は、サーバーからこのGemma 3 4Bモデルに送られる。すると、モデルはその情報を分析し、構造化された「所見」、つまり調査結果の要約や結論を生成して返す。この所見は、決められた形式(スキーマ)に沿っているかどうかが厳しくチェックされ、特に「検証済み」とマークされた所見は、必ず元となる証拠のテキストを引用することが求められる。こうして生成された信頼性の高い所見が、最終的なグラフ、タイムライン、そしてレポートの元となる情報となる。

このAIモデルの運用方法も特筆すべき点である。開発者が自分のパソコンで作業する際には、「Ollama」というツールを使ってGemma 3 4Bをローカル環境で動かすことができる。これにより、外部のクラウドサービスにデータを送ることなく、手元でAIの分析機能を試したり実験したりできる。実際にインターネット上で公開されているデモ版では、「Render」というクラウドサービス上でアプリケーションが動いているが、AIモデル(Ollama上のGemma 3 4B)はアプリケーション本体とは別の「プライベートなサービス」として隔離され、外部から直接アクセスできないようになっている。これにより、大切な調査データが不用意に外部のAIサービスに送られることなく、セキュリティが保たれた状態で高度な分析が行える。プロジェクトの核となる分析機能が、トークン課金型のクラウドLLM APIに依存しないため、コスト面でも持続可能な運用が可能になっている。また、アプリケーション内で流れる環境音や効果音は、事前に「ElevenLabs」というAIサービスを使って生成され、静的な音声ファイルとしてアプリケーションに組み込まれているため、実行時に追加でAIサービスを呼び出すことはない。

もしあなたがこの「THE UNCLAIMED」を自分のパソコンで動かしてみたいと考えるなら、いくつかの準備が必要となる。まず、ウェブアプリケーションを実行するための「Node.js」、そしてAIモデルを動かすための「Ollama」と「Gemma 3 4B」モデル、さらにデータを保存するための「PostgreSQL」データベースをインストールする必要がある。また、SerpApiやBrowserbaseといった外部サービスを利用するための認証情報も用意しなくてはならない。具体的な手順としては、プロジェクトのコードをインターネットからダウンロードし、必要なプログラムをインストールし、環境設定ファイルを適切に編集する。その後、Ollamaを起動し、データベースの初期設定を行ってから、アプリケーションを起動すれば、あなたのパソコン上で「THE UNCLAIMED」が動き出す。この際、セキュリティの観点から、AIモデル(Ollama)へのアクセスは、ローカル環境からのアクセスのみに限定されるよう設定されている。

このプロジェクトは「オープンイノベーション」の精神を非常に重視している。AIが生成する「所見」は、必ずアプリケーション内に保存された元の証拠テキストを引用し、遡って検証できる仕組みになっている。これは、AIが何かを「主張」する際に、その根拠を明確にすることが重要だという考えに基づいている。また、Gemmaモデルをローカルで利用できるようにすることで、誰もがその分析プロセスを検証したり、自由に試したりできる。全ての機能が完全にオフラインで動くわけではなく、検索、アーカイブされたページへのアクセス、リモートブラウザセッション、そしてデータベースはインターネット上のサービスを利用するが、中心となるAI分析部分はセルフホストされているため、プライバシーとコントロールが保たれている。

しかし、どんなツールにも限界は存在する。Internet Archiveからの情報取得は、大量のリクエストがあった場合に制限されることがあるし、検索エンジンの結果も常に完璧とは限らない。また、AIであるGemmaモデルも完璧ではなく、間違いを犯す可能性はある。そのために、生成された所見が元の証拠を引用しているか、決められた形式に沿っているかをチェックする仕組みが導入されているが、最終的な判断は人間の目と知識に委ねられる。このプロジェクトの目標は、AIに架空の物語を作らせることではなく、調査員が残された痕跡から、検証可能な、信頼できる主張へと辿り着くための明確な道筋を提供することなのである。

関連コンテンツ

関連IT用語