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NBT(エヌビーティー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

NBT(エヌビーティー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

ネットワークバイオス (ネットワークバイオス)

英語表記

NetBIOS over TCP/IP (ネットバイオス オーバー ティーシーピー/アイピー)

用語解説

NBTとは、NetBIOS over TCP/IPの略称であり、TCP/IPネットワーク上でNetBIOSの機能を利用可能にするためのプロトコルである。NetBIOSは、古くからWindowsネットワークでコンピューター間の通信を可能にするためのAPI(Application Programming Interface)として広く使われてきた。NBTは、このNetBIOSの持つ名前解決やセッション確立、データグラム通信といった機能を、現代の基盤であるTCP/IPネットワーク上で実現するための重要な架け橋となる。

NetBIOSはもともと、IBMが開発したLAN Managerなどの初期のネットワークOSで利用され、小規模なローカルエリアネットワーク(LAN)内でコンピューター同士が互いを認識し、通信するための基本的な枠組みを提供していた。しかし、NetBIOS自体はルーティング機能を持たないため、大規模なネットワークやインターネットといったルーティングを伴う環境には適していなかった。そこで登場したのがNBTである。NBTは、NetBIOSの持つ機能をTCP/IPプロトコルスタックの「上」に乗せることで、NetBIOSアプリケーションがTCP/IPネットワークを介して通信できるようにした。これにより、NetBIOSを利用するWindowsのファイル共有やプリンター共有といったサービスが、TCP/IP環境でも利用可能になったのである。特に、Windows 95やWindows NTの時代には、NBTがWindowsネットワークの主要な通信プロトコルとして幅広く利用された。

NBTの提供する主要な機能は、大きく分けて「名前サービス」「セッションサービス」「データグラムサービス」の三つである。

まず「名前サービス」は、ネットワーク上のコンピューターをNetBIOS名(コンピューター名)で識別し、そのNetBIOS名を対応するIPアドレスに変換(名前解決)する役割を担う。TCP/IPネットワークでは、通信相手を識別するためにIPアドレスが必須だが、人間にとっては「MYPC」のようなコンピューター名の方が覚えやすい。名前サービスは、この人間が認識しやすいコンピューター名と、マシンが認識するIPアドレスを結びつける。この名前解決の方法には、主に二つある。一つは、ブロードキャストによる名前解決である。これは、特定のコンピューターが他のコンピューターのIPアドレスを知りたいときに、ネットワーク全体に「〇〇という名前のコンピューターはどこにいますか?」という問い合わせを送信し、該当するコンピューターが応答を返す方式である。しかし、ブロードキャストはネットワークの負荷を高めるため、大規模ネットワークには不向きだ。もう一つは、WINS(Windows Internet Name Service)と呼ばれるNetBIOS Name Server (NBNS) を利用した名前解決である。WINSサーバーは、ネットワーク上の各コンピューターのNetBIOS名とIPアドレスの対応表を管理し、クライアントからの問い合わせに応じてIPアドレスを教える。これにより、ブロードキャストに頼らずに効率的な名前解決が可能となる。WINSサーバーは、NBTが活用されていた時代のWindowsネットワークにおいて、非常に重要な役割を果たした。

次に「セッションサービス」は、信頼性のあるコネクション指向の通信を確立・維持するための機能である。これはTCPプロトコルを利用して実現され、データの送受信中にエラーが発生した場合の再送制御などを行い、信頼性の高いデータ転送を保証する。Windowsのファイル共有(SMB: Server Message Block)やプリンター共有といったサービスは、このセッションサービスの上で動作する。クライアントとサーバーが一度セッションを確立すれば、安定してファイルを転送したり、印刷ジョブを送ったりすることが可能となる。セッション確立にはTCPポート139が、名前サービスにはTCPポート137が使用される。

最後に「データグラムサービス」は、コネクションレス型の通信を提供する。これはUDPプロトコルを利用して実現され、主にネットワーク探索や、先述のブロードキャストによる名前解決などに使われる。データグラムは、送受信の信頼性を保証しないが、オーバーヘッドが少なく、多対多の通信に適している。データグラムサービスにはUDPポート138が、名前サービスにはUDPポート137が使用される。

これらのサービスは、NBTによってTCP/IPの特定のポート番号にマッピングされて利用される。NBTは、NetBIOSが持つアプリケーション層の機能を、TCP/IPのトランスポート層(TCPやUDP)を介してネットワーク層(IP)上に乗せることで、NetBIOSアプリケーションがインターネットのような大規模ネットワークでも機能することを可能にした。

現代のIT環境においては、NBTの重要性は以前と比べて低下している。特に、Windows Server 2000以降に主流となったActive Directory環境では、名前解決の主要な手段はDNS(Domain Name System)に移行している。DNSは、インターネットの根幹をなす名前解決システムであり、NetBIOS名よりも柔軟で階層的な名前空間を提供し、WINSよりも効率的でスケーラブルな運用が可能だ。そのため、多くの企業ネットワークではWINSサーバーの利用は減少し、Active Directoryドメインコントローラーが提供するDNSサーバーが名前解決の中心となっている。

しかし、NBTが完全に消滅したわけではない。古いシステムや、特定のレガシーアプリケーション、あるいは小規模なピアツーピアネットワーク環境などでは、依然としてNBTが利用されるケースがある。例えば、Windowsの「ネットワーク」や「ネットワークコンピュータ」といった機能は、内部的にNBTを利用してネットワーク上のコンピューターを検出することがある。また、NAS(Network Attached Storage)などの一部のネットワーク機器が、Windowsとの互換性維持のためにNBTをサポートしている場合もある。

一方で、NBTにはセキュリティ上の課題も存在する。ブロードキャストによる名前解決は、ネットワーク上のすべてのコンピューターに情報を公開するため、情報漏洩のリスクや、悪意のある攻撃者が偽の名前応答を送信する「スプーフィング」攻撃の可能性を秘めている。また、認証機構が比較的脆弱であるため、現代の厳格なセキュリティ要件を満たすのは難しい場合が多い。さらに、NBTはIPv4を前提としたプロトコルであり、IPv6環境では利用されない。

システムエンジニアを目指す上では、NBTがWindowsネットワークの歴史において果たした役割と、現代における位置づけを理解することが重要だ。現在はDNSが主流であるものの、既存のシステムや特定の条件下でNBTが稼働している可能性を認識し、トラブルシューティングやネットワーク設計の際に、その存在を考慮できる知識は有用である。NBTは、TCP/IPが普及する過渡期において、NetBIOSアプリケーションを延命させ、Windowsネットワークの発展に貢献したプロトコルと言える。

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