【ITニュース解説】Fargate + Lambda are better together
2025年09月03日に「Dev.to」が公開したITニュース「Fargate + Lambda are better together」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
AWSのFargateとLambdaを同一コードで連携させるハイブリッド構成が注目されている。平常時の負荷はFargateで安価に処理し、急なアクセス増はLambdaで柔軟に対応。これにより、コストを最適化しつつ、システムの安定性と可用性を高めることができる。
ITニュース解説
クラウド上でアプリケーションを動かす方法として、サーバーの管理を意識せずに済む「サーバーレス」という考え方が普及している。Amazon Web Services (AWS)には、その代表的なサービスとして「AWS Lambda」と「AWS Fargate」が存在する。Lambdaは、プログラムコードをアップロードするだけで、リクエストが発生した時にのみ自動的に実行されるサービスである。手軽に利用開始できる一方で、実行時間や使用できるリソースに制限がある。一方、Fargateは「コンテナ」と呼ばれる技術を用いてアプリケーションを実行するサービスで、より多くのリソースを確保し、長時間の処理を行うことに向いている。これまで、開発者はアプリケーションの特性に応じて、この2つのサービスのうちどちらか一方を選択するのが一般的だった。例えば、アクセス数が不規則で突発的に増減するようなウェブサイトはLambda、常に一定の処理能力が求められるシステムはFargateといった具合に使い分けられてきた。しかし、この二者択一のアプローチには、1つのアプリケーションを両方の環境で動かすことが難しく、柔軟なシステム構成が取りにくいという課題があった。
この課題を解決し、FargateとLambdaの「良いとこ取り」を実現するアプローチが注目されている。具体的には、1つのアプリケーションコードを、FargateとLambdaの両方の環境で実行可能にするという考え方だ。これを実現するために、AWSは「aws-lambda-web-adapter」というツールを提供している。このツールを利用すると、通常はFargateのようなコンテナ環境で動かすことを前提に作られたWebアプリケーションを、ほとんど変更することなくLambda上でも実行できるようになる。これにより、開発者は実行環境の違いを大きく意識することなく、単一のコードベースで両方のサービスに対応したアプリケーションを開発できる。この技術的なブレークスルーが、FargateとLambdaを組み合わせた新しいシステムアーキテクチャの扉を開いた。
FargateとLambdaを併用するハイブリッド構成は、両サービスの長所を組み合わせることで、従来のアーキテクチャが抱えていたトレードオフを解消する。この構成では、Fargateをシステムの「ベース」として、Lambdaを「ブースター」として機能させることができる。つまり、平常時の安定的で予測可能なトラフィックは、常時稼働しているFargateが効率的に処理する。これはシステムの核となるエンジンとしての役割を担う。そして、キャンペーンやメディア掲載などで発生する予期せぬアクセスの急増や一時的な高負荷に対しては、瞬時に処理能力を拡張できるLambdaが対応する。これは、緊急時に作動する安全装置や追加エンジンのような役割だ。この相補的な関係により、コストとパフォーマンスの最適化が可能になる。Fargateのみでシステムを構築した場合、最大のアクセス数に備えてリソースを用意する必要があり、アクセスが少ない時間帯には無駄なコストが発生してしまう。逆にLambdaのみの場合、継続的に高いトラフィックがあると、Fargateよりもコストが割高になる可能性があった。ハイブリッド構成では、トラフィックの状況に応じてFargateとLambdaへの処理の割り振りを動的に変更することで、コストを抑えつつ、突発的な負荷にも耐えうる安定したシステムを構築できるのである。さらに、両方のサービスが同時に停止する可能性は極めて低いため、システムの耐障害性も向上する。
コスト面について、一見するとFargateの方が安価に思えるかもしれない。料金表上では、長時間稼働させる場合、Fargateのほうが時間あたりの単価が低く設定されているからだ。しかし、実際の運用を考えると、この見方は必ずしも正しくない。Fargateを最適に運用するためには、CPUやメモリのサイズ、負荷に応じたサーバー数の自動増減(オートスケーリング)など、専門的な知識を要する多くの設定を細かく調整する必要がある。このチューニングを誤ると、性能が不足してユーザー体験を損なったり、逆に過剰なリソースを確保してしまい無駄なコストを払い続けることになったりする。多くの場合、障害を避けるために安全策としてリソースを多めに確保するため、結果的にコストが増加する傾向がある。また、これらの設定や監視、障害対応には、エンジニアの時間と労力、つまり「人件費」という目に見えないコストも発生する。一方、Lambdaは単位あたりの料金はFargateより高く見えるかもしれないが、このような複雑な運用やチューニング作業の多くをAWSプラットフォーム側が吸収してくれる。開発者はインフラの管理から解放され、アプリケーションの開発そのものに集中できる。この運用コストの削減を考慮すると、トータルコストではLambdaに利点がある場面も多い。FargateとLambdaを組み合わせるアプローチは、それぞれのコスト特性を理解し、両者の利点を最大限に活用しようとする試みでもある。
結論として、FargateとLambdaを単一のコードベースで連携させるハイブリッドアーキテクチャは、これまでの「どちらか一方を選ぶ」という制約から開発者を解放する。このアプローチにより、コスト、パフォーマンス、耐障害性、そして開発の柔軟性といった、システム設計における多くの重要な要素を高いレベルで両立させることが可能になる。これは、より堅牢で効率的な次世代のサーバーレスアプリケーションを構築するための、強力な新しい選択肢と言えるだろう。システムエンジニアを目指す初心者にとっても、サービスの特性を深く理解し、それらを柔軟に組み合わせて最適な解を導き出すという、高度な設計思想を学ぶ上で非常に価値のある事例である。