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【ITニュース解説】RAG-Powered Chat: OpenAI & ChromaDB Integration

2025年09月11日に「Dev.to」が公開したITニュース「RAG-Powered Chat: OpenAI & ChromaDB Integration」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

RAG(Retrieval Augmented Generation)技術を活用し、ユーザーがアップロードした資料からAIが情報を探し、質問に答えるチャットアプリの構築ガイド。React/Pythonで開発し、OpenAI、ChromaDBなどを統合。Dockerでのデプロイも解説する。

ITニュース解説

AIを活用したアプリケーションの世界では、自分の持っているデータとAIが直接会話できる能力が、これまでの常識を大きく変えている。これは、AIが事前に学習した膨大な知識に加えて、ユーザーが提供する特定のドキュメントから瞬時に情報を学び、その文脈に基づいて回答を生成できることを意味する。このような能力を実現するのが「検索拡張生成」、略してRAG(Retrieval Augmented Generation)という技術である。この記事では、このRAGの概念を具体的にウェブアプリケーションとして構築する方法について解説する。

この解説では、「Chat RAG」と呼ばれるフルスタックアプリケーションの開発に焦点を当てる。このアプリケーションは、ユーザーがReactとTypeScriptで構築されたフロントエンドを通じて操作し、PythonとFastAPIで構築されたバックエンドが裏側で処理を実行する構成になっている。この「Chat RAG」を使えば、ユーザーはPDFやDOCX、TXTファイルといった様々な形式のドキュメントをアップロードし、リアルタイムのチャットインターフェースを通じてそれらのドキュメントについて質問できる。そして、大規模言語モデル(LLM)がアップロードされたドキュメントの文脈に基づいて生成した回答を受け取ることができ、さらに回答が生成される際に参照されたドキュメントの具体的な箇所まで表示されるのが特徴である。

アプリケーションの設計は、モジュラー性、スケーラビリティ、メンテナンス性を重視している。開発を始める前に、NodeJS、Python、PostgreSQLといった必要なツールをインストールしておく必要がある。Dockerを使用すると、これらの環境設定が非常に簡単になるため、導入が強く推奨されている。プロジェクトの構造は、バックエンド、フロントエンド、ドキュメント、スクリプト、そしてDocker Composeの設定ファイルが一つにまとまった「モノレポ」形式で整理されている。バックエンドを開始する前に、PostgreSQLに専用のデータベース(例: chatrag_db)を作成しておく必要がある点には注意が必要だ。データベースが存在し、適切な権限が設定されていれば、バックエンドの起動時に必要なテーブルが自動的に作成される。

このアプリケーションの核となるのは、RAGパイプラインと呼ばれる処理の流れであり、これはバックエンドで実現されている。このパイプラインは主に三つの段階に分けられる。

最初の段階は「ドキュメントの取り込み」である。ユーザーがファイルをアップロードすると、まずそのドキュメントの内容を読み込む必要がある。ここではLangChainというライブラリが提供する様々な「ドキュメントローダー」(PDF用、DOCX用など)を使って、ファイルからテキストを抽出する。次に、抽出したテキスト全体をそのままLLMに渡すのではなく、RecursiveCharacterTextSplitterというツールを使って、意味のある小さなまとまりである「チャンク」に分割する。これにより、特定の情報を見つけやすくなり、LLMが一度に処理できる情報の量に制限がある場合でも効率的に扱えるようになる。

次の段階は「埋め込みとベクトルストレージ」である。テキストチャンクは人間にとっては理解しやすいが、機械が直接比較したり検索したりするには不向きだ。そこで、各テキストチャンクを数値の羅列である「埋め込み」(またはベクトル)に変換する。この変換には、OpenAIの「text-embedding-ada-002」のような埋め込みモデルが使用される。この埋め込みは、テキストの意味内容を数値的に表現したものであり、意味が近いテキストは埋め込みも近い値になるという特徴を持つ。生成されたこれらの埋め込みは、元のテキストチャンクとともに「ChromaDB」という特殊なデータベースに保存される。ChromaDBは、このような数値ベクトルを効率的に格納し、意味的に類似したベクトルを高速に検索することに特化した「ベクトルデータベース」である。

最後の、そして最も重要な段階が「検索と生成のループ」である。ユーザーがチャットインターフェースを通じて質問を送信すると、その質問もドキュメントチャンクと同様に数値ベクトルに変換される。この質問のベクトルを使ってChromaDBを検索し、質問の意味に最も関連性の高いドキュメントチャンクをいくつか見つけ出す。このプロセスがRAGの「検索(Retrieval)」の部分である。検索で得られた関連性の高いテキストチャンクは、元のユーザーの質問とともに、詳細な指示文(プロンプト)としてLLMに渡される。このとき、LLMは提供されたドキュメントの文脈情報を「参照」して、質問に対する回答を生成する。これがRAGの「生成(Generation)」の部分である。このように、RAGは事前学習済みのLLMの知識を、ユーザーが提供した外部ドキュメントの情報で「拡張」することで、より正確で関連性の高い回答を可能にする。

ユーザーインターフェース側では、ChatGPTのようなスムーズなリアルタイムチャット体験を提供するために、WebSocketsが利用されている。ユーザーがメッセージを送信すると、バックエンドのRAGサービスで処理され、生成された回答はトークンごとにWebSocketsを通じてフロントエンドにストリーミングされる。これにより、ユーザーは回答が瞬時に、そして徐々に表示される様子を見ることができ、対話がより自然に感じられる。

開発とデプロイのプロセスを簡素化し、環境の一貫性を保つために、Dockerが活用されている。Docker Composeファイルは、バックエンドとフロントエンドの二つの主要なサービスを定義し、それぞれのサービスが独立したコンテナとして動作するように設定する。特に、ChromaDBに保存されるベクトルデータがコンテナの再起動時に失われないように、「chroma_db」という名前付きボリュームが定義されており、データが永続的にディスクに保存される仕組みが導入されている。Dockerを使うことで、「docker-compose up --build」という一つのコマンドを実行するだけで、アプリケーション全体を簡単に起動できる。

結論として、このプロジェクトは、高度なフルスタックRAGチャットアプリケーションを構築するための具体的な設計図を提供する。データの処理からフロントエンドのユーザーインターフェースまで、各コンポーネントが明確に分離されており、モジュール化されたシステムとして構築されている。このプロジェクトはRAG技術を実践的に学ぶための優れた出発点であり、さらなる発展の可能性も秘めている。例えば、ユーザー認証機能の実装、より高度な検索戦略の導入、あるいは異なるLLMを切り替えるUI要素の追加などが考えられる。

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