【ITニュース解説】Garbage Collection in Go: From Reference Counting to Tri-Color to Green Tea
2025年09月12日に「Dev.to」が公開したITニュース「Garbage Collection in Go: From Reference Counting to Tri-Color to Green Tea」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
Go言語のガベージコレクション(GC)の進化を扱う。GCはメモリ管理を自動化し、アプリ性能を左右する要素だ。Go 1.25では低遅延でマルチコアに強い「Green Tea」が導入された。Reference Counting、Tri-ColorからGreen Teaへの変遷を、実装例とベンチマークで解説する。
ITニュース解説
ガベージコレクション(GC)は、現代のプログラミング言語の実行環境において極めて重要な役割を果たす。これはメモリをいつ、どのように解放するかを決定し、アプリケーションの応答性やパフォーマンス、レイテンシに直接影響を及ぼす。Go言語は、CやC++のようにプログラマが手動でメモリ管理を行う言語とは異なり、高度なガベージコレクタを内蔵している。このコレクタは、マルチコアシステムでのスケーラビリティと低レイテンシの両立を目指して設計されてきた。特にGo 1.25では、ガベージコレクタが大幅に刷新され、それまで採用されていたスリーカラー・マーク・アンド・スイープ方式から、「Green Tea」と名付けられた新しいアルゴリズムに置き換えられた。この変更は、高並行性アプリケーションにおいて予測可能で一貫した低レイテンシのGCを提供しようとするGoの長期的な戦略において、非常に重要な進化だと言える。
ガベージコレクションの仕組みを理解するためには、まずメモリの「ヒープ」という領域と、そこに配置される「オブジェクト」というデータの塊、そしてオブジェクト同士の「参照」の概念を把握する必要がある。プログラムが動的にメモリを要求すると、そのデータはヒープに確保される。そして、どのオブジェクトがまだプログラムから使われているかを判断するのがGCの役割だ。プログラムの実行とGCの動作を深く理解するために、実際のGoランタイムの複雑なメモリ管理の詳細は一旦横に置き、オブジェクトが互いに参照し合う単純なヒープモデルを想像してみよう。
ガベージコレクションの歴史を振り返ると、その進化は大きく三つの段階で見ることができる。最初の比較的シンプルな方式が「参照カウンタ」である。この方式では、各オブジェクトが自分を指している参照の数を記録するカウンタを持つ。新しい参照が生成されるとカウンタが増加し、参照が消滅すると減少する。カウンタがゼロになったオブジェクトは、使われなくなったと判断され、直ちにメモリから解放される。この方法は実装が単純で、メモリが速やかに解放されるという利点があるものの、致命的な欠点として「循環参照」に対応できないという問題がある。例えば、二つのオブジェクトが互いに参照し合っている場合、外部からの参照がなくなったとしても、それぞれのカウンタはゼロにならないため、メモリから解放されずにリークしてしまうのだ。
参照カウンタの循環参照問題を解決するために広く採用されたのが、「スリーカラー・マーク・アンド・スイープ」というアルゴリズムである。この方式では、GCサイクル中にオブジェクトを「白(ガベージ候補)」「灰(到達可能だがまだ参照先をスキャンしていない)」「黒(到達可能で、参照先もすべてスキャン済み)」の三色に分類する。GCはまず、プログラムが常に利用する「ルートセット」と呼ばれるオブジェクト群を灰色にマークすることから始める。次に、灰色リストからオブジェクトを取り出し、そのオブジェクトが参照するすべてのオブジェクトを灰色にマークし、自身は黒にマークする。このプロセスを灰色リストが空になるまで繰り返す。最終的に白色のまま残ったオブジェクトは、ルートから到達不能であるため、不要なガベージとしてメモリから解放される(スイープ)。このアルゴリズムは循環参照を正確に検出して解放できるという大きな利点があるが、その一方で、マーキング処理中にプログラムの実行を一時的に停止させる「Stop-the-Worldポーズ」という課題も抱えていた。ヒープのサイズが大きくなると、この一時停止時間も長くなる傾向にあり、特に低レイテンシが求められるアプリケーションにとっては大きな問題となり得た。
このスリーカラー・マーク・アンド・スイープの限界を乗り越えるために、Go 1.25で導入されたのが「Green Tea」アルゴリズムである。Green Teaは、Goが目指す「サブミリ秒レベルの低レイテンシ」と「マルチコアシステムでの高スケーラビリティ」をさらに高いレベルで実現するために開発された。このアルゴリズムは、オブジェクト単体ではなく、「スパン」と呼ばれる、同じサイズのオブジェクトをまとめて含む連続したメモリブロックを単位としてGC処理を行う。これにより、GCワーカーは作業をより効率的に分散し、複数のコアで並行してマーキングやスイープを進めることが可能になる。Green Teaのスパンベースのアプローチは、スレッド間の同期オーバーヘッドを削減し、GC処理中のアプリケーションの一時停止時間を大幅に短縮する効果がある。これは、バースト的な負荷がかかる高並行性アプリケーションにおいても、より予測可能で一貫した低レイテンシを提供するというGoのGC設計目標に完全に合致する進化である。
これらのガベージコレクションアルゴリズムの理論的な側面に加えて、具体的な動作や性能特性を理解するためには、実際にGoで簡略化されたGCを実装し、ベンチマークを実行することが非常に有効だ。例えば、スリーカラーGCがプログラムのメイン処理をブロックする様子と、Green Teaが独立したゴルーチンで並行的に動作し、メインの処理が中断されずに進行する様子を比較するベンチマークは、Green Teaがアプリケーションの一時停止時間をいかに削減するかを実証的に示す。これらの実践的な実験は、GCの選択がアプリケーションの応答性に与える影響を深く理解する上で貴重な機会となるだろう。
GoがGreen Teaへ移行した主な理由は、多岐にわたる。一つには、重い並行処理下でもGoが長年追求してきた低レイテンシの保証を維持するためだ。マルチコアシステムの普及に伴い、従来のGCは同期コストが増大し、一時停止時間が予測しにくくなっていた。Green Teaはスパンレベルでの作業分散とより頻繁な協調的イールド(処理の譲り合い)によって、この問題に対処する。二つ目には、現代の多コアサーバーにおけるスケーラビリティの向上が挙げられる。スパンベースのアプローチにより、複数のワーカーが最小限の競合で並行してマーキングとスイープを行え、大規模なヒープでも効率的に動作する。三つ目には、生の処理能力よりも「予測可能なパフォーマンス」を重視するGoの哲学に適合するためだ。オブジェクトをスパンにグループ化し、インクリメンタルに処理することで、より安定したレイテンシを提供できる。最後に、内部実装は複雑になるものの、完全なオブジェクトレベルの並行マーキングと比較して、スレッド間の調整を減らすことでランタイムコードのシンプルさを保ち、微妙な競合状態を防ぐという利点もある。
結論として、ガベージコレクションの仕組みを理解することは、単なるプログラミング言語の知識に留まらず、プログラムのパフォーマンス、メモリの振る舞い、そして見えないコストについて深い洞察を与えてくれる。参照カウンタからスリーカラー・マーク・アンド・スイープ、そしてGo 1.25のGreen Teaへと進化してきたメモリ管理戦略の背景にあるトレードオフを学ぶことで、なぜGoが特定の設計を選択し、どのようにスケーラビリティ、予測可能性、低レイテンシのバランスを実現しているのかが明確になる。これらの知識は、メモリ割り当てパターン、並行処理、そしてパフォーマンス最適化について深く考察し、より堅牢で効率的なソフトウェアを設計するための貴重な基礎となるだろう。
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