【ITニュース解説】Beyond the Monolith vs Microservices Debate: A Practical Guide to Deployment-Agnostic Services
2025年09月09日に「Dev.to」が公開したITニュース「Beyond the Monolith vs Microservices Debate: A Practical Guide to Deployment-Agnostic Services」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
モノリスかマイクロサービスかという二者択一は不要。設定変更だけで、一つの大きなシステムとしても、小さなサービスの集まりとしても配備できる設計手法がある。これにより、開発の容易さと将来の拡張性を両立させることが可能となる。
ITニュース解説
システム開発の世界では、アプリケーションをどのように設計・構築するかという「アーキテクチャ」に関する議論が絶えず行われている。その中でも特に大きなテーマが「モノリス」と「マイクロサービス」の選択である。モノリスとは、全ての機能が一つの大きな塊としてまとまったアプリケーションのことだ。開発を始めやすく、全体像を把握しやすいという利点がある一方で、システムが大規模化すると、一部の修正が全体に影響を与えたり、特定の機能だけを拡張したりすることが難しくなるという課題を抱えている。対照的に、マイクロサービスは、アプリケーションをユーザー管理、商品管理、注文管理といった小さな独立したサービスの集合体として構築する手法である。各サービスは独立して開発・デプロイできるため、変更が容易で、特定のサービスだけをスケールさせることも可能だ。しかし、サービス間の通信やデータ管理が複雑になり、運用コストが高くなるというデメリットがある。多くの開発チームは、この二つの極端な選択肢の間で、どちらが自社のプロジェクトにとって最適なのかという難しい判断を迫られてきた。
しかし、この「モノリスか、マイクロサービスか」という二者択一の議論そのものを見直すアプローチが存在する。それは、アーキテクチャレベルでどちらか一方を決め打ちするのではなく、同じソースコードを「設定」一つでモノリスとしてもマイクロサービスとしてもデプロイできるように設計するという考え方だ。この記事で紹介されているのは、まさにこの「デプロイメント・アグノスティック」、つまりデプロイ方法に依存しないサービスを構築するための実践的なガイドである。このアプローチの核心は、サービスのビジネスロジック(中核となる処理)とその呼び出し方を分離することにある。
この柔軟な設計を実現するための具体的なステップは、サービス間の連携方法を工夫することから始まる。例えば、あるアプリケーションがユーザー情報を扱う「ユーザーサービス」を呼び出す場面を考えてみよう。モノリス構成の場合、アプリケーションはユーザーサービスの機能をプログラム内部で直接呼び出す。一方、マイクロサービス構成では、アプリケーションはネットワークを通じて独立して稼働しているユーザーサービスに対してリクエストを送り、その結果を受け取る。この二つの異なる呼び出し方を、呼び出し元のアプリケーションからは同じように見えるように共通化するのが第一歩だ。具体的には、「ユーザーを作成する」「ユーザーを更新する」といった操作を定義した共通のインターフェース(仕様書や命令書のようなもの)を用意する。
次に、この共通インターフェースに基づいて、二種類の具体的な実装を用意する。一つは、モノリス構成のための「内部クライアント」で、これはサービスの機能を直接呼び出す処理を担う。もう一つは、マイクロサービス構成のための「RESTクライアント」で、これはHTTP通信を使ってネットワーク経由でサービスを呼び出す処理を担う。そして、呼び出される側のサービスには、ネットワークからのリクエストを受け付けるための窓口となるHTTPコントローラーを追加する。重要なのは、このコントローラーも、内部クライアントが呼び出すビジネスロジックと全く同じものを再利用する点だ。これにより、どちらの構成で動かしても、サービスの振る舞いは一貫性を保つことができる。
最後の仕上げとして、アプリケーション起動時に「内部クライアント」と「RESTクライアント」のどちらを使うかを、設定ファイルによって切り替える仕組みを導入する。例えば、設定ファイルに「clients.users.type=INTERNAL」と記述すればモノリスモードで動作し、「clients.users.type=REST」と記述すればマイクロサービスモードで動作する。デフォルトをRESTクライアントにしておけば、特別な設定をしなくてもマイクロサービスとして連携するようになる。
このアプローチがもたらすメリットは計り知れない。まず、開発者の体験が大幅に向上する。ローカル環境での開発やテストでは、全てのサービスを一つのモノリスとして起動できるため、複雑な環境構築が不要になり、起動時間も短縮され、デバッグも容易になる。そして、同じテストコードを使って、モノリス構成とマイクロサービス構成の両方のパターンでアプリケーションが正しく動作することを自動的に検証できるため、品質への信頼性が高まる。
さらに、デプロイ戦略において絶大な柔軟性が得られる。プロジェクトの初期段階では、全てのサービスをモノリスとしてデプロイし、シンプルに運用を開始できる。そして、ビジネスの成長に伴い、特定のサービスへの負荷が増大した際には、そのサービスだけを設定変更によってマイクロサービスとして分離し、独立してスケールさせることが可能になる。このように、必要に応じて一部のサービスだけを分離するハイブリッド構成も容易に実現できる。最終的には、全てのサービスをマイクロサービスとして独立させることも、同じコードベースのまま実現可能だ。
結論として、この手法は「モノリスかマイクロサービスか」という二元論的な議論を過去のものにする。システムのアーキテクチャを初期段階で固定するのではなく、ビジネスの要求やチームの成熟度に合わせて、実行時の設定としてデプロイ形態を選択できる柔軟性こそが重要である。開発者は、最初にシンプルなモノリスとして始め、必要性が生じたときにのみ、リスクを抑えながら段階的にマイクロサービスへと移行していくことができる。優れたアーキテクチャとは、選択肢を狭めるのではなく、将来の可能性を広げるものであるべきだという思想を、このアプローチは明確に示している。