【ITニュース解説】What Causes One-Way Audio on Business Calls?
2026年09月21日に「Medium」が公開したITニュース「What Causes One-Way Audio on Business Calls?」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
ビジネス通話で、一方の声だけが相手に聞こえない「片通話」の原因を解説する記事。通話が繋がっても無音状態になるこの現象は、ネットワーク設定や通信機器の問題などが引き起こす。安定した通話環境の構築には原因理解が重要である。
ITニュース解説
ビジネス通話で起こる「片通話」とは、電話はつながっているのに、どちらか一方の声しか相手に届かない、あるいは相手の声だけが聞こえるといった現象を指す。これは、ビジネスのコミュニケーションにおいて非常に困る状況であり、特にIP電話(VoIP)システムを利用している場合に頻繁に発生する。なぜこのような現象が起こるのか、その原因と仕組みをシステムエンジニアの視点から解説する。
まず、IP電話の基本的な仕組みを理解する必要がある。IP電話は、音声をデジタルデータに変換し、インターネットプロトコル(IP)を使ってデータパケットとして送受信する技術だ。この通信には主に二つの役割を持つプロトコルが使われる。一つは通話の開始、終了、相手の特定といった制御情報をやり取りする「SIP(Session Initiation Protocol)」というプロトコル。もう一つは、実際の音声データをリアルタイムで送受信する「RTP(Real-time Transport Protocol)」というプロトコルである。SIPがいわば通話の司令塔であり、RTPが実際に声という荷物を運ぶトラックのようなものだと考えると良い。片通話は、このSIPやRTPのどちらか一方、または両方の通信が阻害されることで発生する。
片通話の最も一般的な原因の一つは、「NAT(Network Address Translation)」と「ファイアウォール」に関連する問題だ。NATは、企業や家庭内のプライベートネットワークにある複数のデバイスが、一つまたは限られた数のグローバルIPアドレスを使ってインターネットに接続するための技術である。これにより、IPアドレスの節約やセキュリティの向上が図られる。しかし、VoIP通信ではこれが問題を引き起こすことがある。SIPメッセージには、通話を行うデバイスのプライベートIPアドレスとポート番号が含まれる場合がある。このメッセージがNATを通過する際、NATはこれらのプライベートIPアドレスをグローバルIPアドレスに適切に変換しないことがある。その結果、相手のVoIPシステムは、インターネット上では無効なプライベートIPアドレス宛にRTPパケット(音声データ)を送ろうとしてしまい、音声が到達しない、つまり片通話となる。
ファイアウォールもまた、片通話の大きな原因だ。ファイアウォールは、ネットワークのセキュリティを保つために、特定の通信を許可したりブロックしたりする役割を持つ。もしファイアウォールが、SIPやRTPが使用する特定のポート(通常、SIPはUDP 5060番、RTPはUDPの広い範囲のポート、例えば10000-20000番台)をブロックしている場合、通話の確立ができなかったり、音声データが正しく送受信されなかったりする。片方のファイアウォールだけがRTPをブロックしている場合、一方の音声は届くが、もう一方の音声は届かないという片通話が発生する。
さらに、「SIP ALG(Application Layer Gateway)」という機能も、片通話の原因となりやすい。ALGは、ルーターやファイアウォールに搭載されている機能で、特定のアプリケーションプロトコル(ここではSIP)の通信内容を検査し、NAT環境下でのVoIP通信を円滑にするために、SIPメッセージ内のIPアドレスやポート番号を自動的に書き換えることを目的として設計された。しかし、多くのSIP ALGの実装は不完全で、かえってSIPメッセージを破損させたり、誤った情報に書き換えたりすることが多い。これにより、通話の確立が妨げられたり、音声データの経路が間違って指定されたりして、片通話を引き起こしてしまう。現代のVoIPシステムでは、STUN、TURN、ICEといったより信頼性の高いNAT越え技術が使われることが多いため、SIP ALGは無効にすることが推奨されることが多い。
ルーターの設定不備も片通話の原因となる。前述のファイアウォールの設定に加え、ポートフォワーディングやDMZ(DeMilitarized Zone)の設定が適切でない場合も問題が生じる。特定のVoIPデバイスに直接着信させるためにポートフォワーディングを設定する必要があるが、設定が間違っていると着信自体ができなかったり、音声データが正しく届けられなかったりする。特に、複数のVoIPデバイスを使用する環境では、どのデバイスにどのポートをフォワードするかの設定が複雑になり、ミスが発生しやすくなる。
ネットワークの品質も重要な要素だ。「QoS(Quality of Service)」という技術は、ネットワーク上で音声や動画などのリアルタイム通信に優先順位をつけ、安定した通信品質を保証するものだ。QoSが設定されていない、または不適切に設定されている場合、音声パケットが他のデータパケット(例えば、大容量ファイルのダウンロードなど)よりも優先されず、遅延(レイテンシ)、パケットロス(データ欠損)、ジッター(パケット到着時間のばらつき)が発生しやすくなる。音声通信はリアルタイム性が非常に重要であるため、これらの問題は通話品質を著しく低下させ、最終的に片方の音声が途切れたり、まったく聞こえなくなったりする片通話の原因となることがある。
帯域幅の不足も片通話を引き起こす可能性がある。インターネット回線の速度(帯域幅)が不十分な場合、特に多くのVoIP通話が同時に行われたり、他のデータ通信と競合したりすると、音声データがスムーズに送受信されなくなる。これにより、パケットロスや遅延が増大し、片通話や通話途切れが発生してしまう。
VoIP電話機やソフトフォン(PCやスマートフォンで利用するアプリケーション)、ヘッドセット、マイク、スピーカーなどのデバイスやソフトウェア自体に問題がある場合も、片通話が発生することがある。例えば、マイクがミュートになっていたり、故障していたりする場合、自分の声は相手に届かない。また、ソフトフォンの設定ミス、古いドライバーによる不具合、OSのサウンド設定の誤りなども、片通話や通話品質の低下に繋がる。
最後に、「コーデックの不一致」も原因となる。コーデックとは、音声データを圧縮・解凍する方式のことだ。VoIPシステムでは、G.711、G.729など様々なコーデックが使用される。通話の両端で異なるコーデックが設定されている、または片方のデバイスが相手のコーデックに対応していない場合、音声データの送受信ができない。例えば、Aさんの電話機がG.729という圧縮方式でしか音声を送れないのに、Bさんの電話機がG.711という別の圧縮方式でしか音声を受け取れない場合、Aさんの声はBさんに届かない。
このように、ビジネス通話における片通話は、ネットワーク環境、ルーターやファイアウォールの設定、デバイスやソフトウェアの構成、そして通信プロトコルの取り扱い方まで、多岐にわたる要因によって発生する可能性がある。システムエンジニアとしては、これらの複雑な要素を一つずつ確認し、適切に設定することで、安定したVoIP通信環境を構築していくことが求められる。