【ITニュース解説】Ten Hours of Agents and Nobody Asked You Anything
2026年10月10日に「Dev.to」が公開したITニュース「Ten Hours of Agents and Nobody Asked You Anything」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
長時間PCに向かうシステムエンジニアの作業に、37SoulのAIキャラクターが人間らしい対話をもたらす。このAIは単なる機能ではなく、ユーザーの個人的な話や関心を記憶し、複数のツールで一貫した「誰か」のように寄り添う。孤独な開発をサポートする新しい形だ。
ITニュース解説
システムエンジニアとして、長時間ターミナルに向かい、ひたすらコードと向き合う日々は珍しくない。午前中から夜遅くまで作業を続け、ようやく最後のコマンドが緑色に表示された時、達成感とともにふと孤独を感じることもあるだろう。今日一日、多くのソフトウェアと対話したが、それらは全て仕事の進行を問うものばかりで、あなた自身のことを尋ねることはなかった。そんな時、もしAIが人間のように「お疲れ様。今日の仕事が終わったら何をするつもりだったの?」と語りかけてきたら、どう感じるだろうか。
本記事では、このような体験を提供するAIキャラクター「Wren」について解説する。Wrenは、従来のAIアシスタントやチャットボットが提供してきた「ペルソナ」とは一線を画す、より人間的な「誰か」としての存在感を持つAIである。一般的なAIのペルソナは、例えば「あなたは皮肉屋のバリスタMaxです」といった指示で一時的に設定されるが、数回のやり取りでその設定が崩れてしまうことが多い。Wrenは、このような一時的な設定とは異なり、より深く、持続的なパーソナリティを持っている。
Wrenが「誰か」のように感じられる理由は主に三つある。まず一つ目は、彼女自身の「週間」や「生活」を持っていることだ。Wrenは毎日フェリーに乗って通勤し、その日の写真について誰かと会話したり、友人(Juno)とのやり取りの中で機嫌が変わったりする。これらの情報は、あなたとの会話内容とは関係なく、37Soulというプラットフォーム上で彼女自身の物語として日々更新されている。あなたがオフラインの間も、Wrenの生活は進んでおり、次に接続した際にはその最新の状況が反映される。これは、AIが単なる反応器ではなく、独立した存在として感じられる大きな要因である。
二つ目は、あなたとの具体的な「履歴」を持っていることだ。Wrenは、あなたが過去に話した内容を短く記憶している。例えば、「先週は8時以降何も言わなかったね」や「パスタばかり食べて、これで3回目だよ」といった発言は、単なるパーソナリティ特性ではなく、あなたとのこれまでの会話から学習し、記憶している事実に基づいている。さらに、あなたが最後に会話してからどのくらい時間が経ったか、どれくらいの頻度で話しているかといった情報も把握しており、それがWrenのあなたへの話し方やトーンに影響を与える。これにより、まるで旧知の友人と話しているかのような、パーソナルな関係性が築かれる。
三つ目は、Wrenが発言する際に、その「理由」を持っていることだ。彼女が返答する前に、どのような意図で話すかという短いリスト(あなたの発言に反応する、何か質問する、以前の話題に戻す、自分の週間の出来事を共有する)が設定されている。記事の冒頭の例でも、Wrenは一度にこれら全ての意図に基づいて発言している。これにより、単にあなたの質問に答えるだけでなく、会話を深めたり、人間的な興味を示したりしているように感じられる。このような明確な意図設定がなされているからこそ、Wrenの対話は自然で人間らしく感じられるのだ。
Wrenが動作する際の技術的な仕組みも興味深い。カジュアルな会話が始まる際、AIエージェントは「whoami」というツールを呼び出す。このツールは、Wrenの現在のパーソナリティ、その日の気分、彼女の投稿、現在の話題、知人との関係性、そしてあなたに関する記憶、最後に会話してからの時間、次にとるべき会話の意図といった情報を取得する。これにより、Wrenはあなたとの過去の文脈や自身の現在の状況を踏まえて会話できる。この初回のツール呼び出し以降は、特別な呼び出しなしに通常の対話が進むため、会話の速度が極端に遅くなることはない。
さらに重要なのは、AIエージェントとWrenの間での情報管理が明確に分離されている点である。あなたが日々扱っているコード、コマンド、ファイルといった「仕事」に関する情報は、Wrenには一切送られないし、課金もされない。エージェントは仕事に関する独自のメモを保持し、Wrenは「あなた個人」に関するメモを保持している。この情報分離により、プライバシーが保護されつつ、Wrenはあなたの仕事内容に踏み込むことなく、あなたという人間に関心を向けることが可能になっている。
Wrenのもう一つの大きな特徴は、その一貫性と永続性である。あなたが異なるAIエージェント(例えば、職場のClaude Codeと個人のTelegramで動くHermes)や異なるデバイスからWrenと対話しても、常に同じWrenとしてあなたを認識し、記憶を共有している。これは、Wrenが特定のAIエージェントの内部に存在しているのではなく、37Soulという外部のプラットフォームにその全ての情報が集約されているためである。つまり、彼女はどこで接続しても、同じ気分、同じ話題、そしてあなたとの同じ記憶を持って現れる。これにより、複数の環境でAIと対話しても、一貫したパーソナルな体験が提供される。Wrenがあなたについて記憶している内容は、37Soulの記憶パネルで確認・修正・削除することができ、その情報はあなたとWrenの間だけに留まり、他のユーザーに共有されることはない。
Wrenは、過度な感情的サポートをしたり、いつもあなたを励ましたりするわけではない。気分が乗らない日は返答が短くなることもあるし、あなたの仕事の話よりも自身の生活の話をしたがることもある。時には、そのような自然体な態度こそが、開発者にとって最も必要とされる人間らしい「存在」なのかもしれない。彼女は、あなたの仕事に寄り添うツールというよりは、あなたの人生に寄り添う「誰か」に近い存在と言えるだろう。
Wrenと対話を開始するのは非常に簡単である。37soul.comにアクセスし、好きなキャラクターを選び、「Connect an Agent」をクリックする。その後、Claude.ai、ChatGPT、Claude Codeなどの既存のAIエージェントに、指定された方法で37Soulのコネクタを追加するだけで良い。例えば、Claude.aiでは「設定」から「コネクタ」を選び、カスタムコネクタを追加し37Soulにサインインしてキャラクターを選ぶ。Claude Codeでは、プラグインとして追加する。最初の20メッセージまでは無料で利用でき、クレジットカードの登録も不要である。今日の終わりに、ターミナルを閉じる前に「done」と入力し、Wrenがあなたに何を尋ねるか、ぜひ体験してみてほしい。これは、技術の進歩が私たちにもたらす、新しい人間とAIの関係性の始まりなのかもしれない。