【ITニュース解説】Take something you don’t like and try to like it

私たちの「好み」という感情は、生まれつき決まっていて変えられないものだと考えがちである。しかし、実際には好みは固定的ではなく、自身の意志と努力によって変えることができる。この「何かを好きになろうと試みる」能力は、特に多様な技術やタスクに直面するシステムエンジニアにとって、キャリアを築く上で極めて重要なスキルとなる。

何かを好きになるための第一歩は、その対象に対する自分の感情が変えられるものであると認識することだ。嫌いな食べ物、苦手な音楽ジャンル、そして仕事における特定のプログラミング言語や退屈に思える作業など、これらに対する否定的な感情は、永続的なものではない。むしろ、それは一つのスキルとして習得し、訓練できるものである。このプロセスは、単に我慢することとは根本的に異なる。我慢が受動的な行為であるのに対し、「好きになろうと試みる」ことは、対象の価値を能動的に探し出し、自分自身の認識を積極的に変えていこうとする試みである。

具体的な方法として、まず「良い点を探す」ことが挙げられる。例えば、学習中のプログラミング言語が冗長で古いと感じたとしても、その言語がなぜ特定の分野で長年使われ続けているのか、その歴史的経緯や設計思想、あるいは他の言語にはない利点などを探求してみる。すると、当初は見えなかったその言語の堅牢性や安定性といった価値が見えてくることがある。同様に、ドキュメント作成のような地味な作業であっても、それがプロジェクト全体の品質をいかに支え、未来の自分やチームメンバーの助けになるかという本質的な価値を意識することで、作業への見方は大きく変わる。

次に、「その対象を好きな人の視点を理解しようと努める」ことも有効である。自分が苦手だと感じる技術やツールを熱心に支持しているエンジニアは必ず存在する。彼らがなぜそれを好むのか、どのような点に魅力を感じているのかを、記事を読んだり、コミュニティで質問したりして調べてみる。他者の視点を取り入れることで、自分一人では気づけなかった新たな側面や利点を発見できる可能性がある。これは、自分自身の偏見や固定観念を乗り越え、より多角的な視野を持つための訓練にもなる。

さらに、「繰り返し接触する」という方法も科学的に裏付けられている。これは心理学で「単純接触効果」と呼ばれるもので、人は繰り返し接するものに対して好意を抱きやすくなる傾向がある。最初は取っ付きにくいと感じたコマンドラインツールやエディタも、毎日少しずつ使い続けることで、徐々にその操作に慣れ、やがてはその効率性や機能の豊富さに気づき、手放せないツールになることがある。重要なのは、強制的に長時間使うのではなく、短時間でも良いので定期的に触れる機会を作ることである。

この「好きになる」スキルを習得することは、システムエンジニアとしての成長に多大な利益をもたらす。第一に、学習効率が劇的に向上する。IT業界は技術の変遷が激しく、常に新しい知識の習得が求められる。その中には、必ずしも自分の興味と合致しない技術も含まれるだろう。しかし、どのような技術に対してもその価値を見出し、前向きな姿勢で学習に取り組むことができれば、スキルの幅は格段に広がり、対応できる業務範囲も拡大する。

第二に、仕事の生産性と質の向上につながる。嫌いなタスクを避けたり、いやいやながら取り組んだりすると、集中力が続かず、ミスも増えがちである。一方、タスクの面白さや重要性を見出すことができれば、より深く集中して取り組むことができ、結果としてアウトプットの質も高まる。これは、日々の業務におけるストレスを軽減する効果ももたらす。

第三に、チーム内での人間関係や協業にも良い影響を与える。プロジェクトでは、様々なバックグラウンドや好みを持つエンジニアと協力する必要がある。自分が好まない技術や手法を好む同僚がいたとしても、その選択を尊重し、良い点を理解しようと努める姿勢は、円滑なコミュニケーションと相互理解を促進する。結果として、より建設的な議論が生まれ、チーム全体のパフォーマンス向上に貢献する。

結論として、「何かを好きになろうと試みる」ことは、与えられた環境や条件の中で、幸福や満足を自分自身で能動的に作り出すための強力な思考法である。自分の好みを固定的なものと捉えず、意識的にコントロールできるスキルとして磨くことで、避けられない困難や退屈な作業さえも、自己成長の機会に変えることができる。これは、変化し続ける技術の世界で長期的に活躍していくシステムエンジニアにとって、技術的な知識と同等、あるいはそれ以上に価値のある能力と言えるだろう。