【ITニュース解説】Why Kubernetes?

2025年09月08日に「Dev.to」が公開したITニュース「Why Kubernetes?」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

Kubernetesは、コンテナで動くアプリの管理を自動化するシステム。アクセス増減に応じたサーバーの自動調整や、障害時の自己修復機能などを持ち、手作業での運用負荷を大幅に削減。安定したサービス提供を実現する。

出典: Why Kubernetes? | Dev.to公開日:

ITニュース解説

Webサイトやアプリケーションは、キャンペーンやメディアでの紹介などをきっかけに、突如としてアクセスが集中することがある。この時、システムの処理能力を超えてしまうと、ページの表示が極端に遅くなったり、最悪の場合はサーバーがダウンしてサービスが停止したりする事態に陥る。このような課題に対応する能力は「スケーラビリティ」と呼ばれ、システムの成長可能性を示す重要な指標である。スケーラビリティとは、アクセス数の増減に応じて、システムを柔軟に拡大・縮小できる能力を指す。この能力が低いシステムは、ビジネスチャンスを逃すだけでなく、ユーザーの信頼を損なう原因にもなり得る。

このスケーラビリティの問題に対処する方法として、まず「手動スケーリング」が考えられる。手動スケーリングには二つの主要なアプローチがある。一つは「垂直スケーリング(スケールアップ)」と呼ばれ、サーバー自体の性能、例えばCPUやメモリをより高性能なものに交換・増設する方法である。これは比較的シンプルだが、一台のサーバーが持ちうる性能には物理的な限界が存在するという制約がある。もう一つのアプローチは「水平スケーリング(スケールアウト)」で、アプリケーションを稼働させるサーバーの台数を増やす方法である。これによりサーバー一台の性能限界は克服できるが、台数が増えるにつれて管理が複雑化し、コストも増加する。いずれの方法も、アクセス数の変化を予測し、人間が手作業で対応する必要があるため、突発的なアクセス増に迅速に対応するのは困難である。

こうした手動スケーリングの課題を解決するために登場したのが「自動スケーリング(オートスケーリング)」という考え方である。これは、システムの負荷状況をリアルタイムで監視し、事前に設定したルールに基づいて、必要に応じて計算リソースを自動的に増減させる仕組みである。アクセスが急増すればリソースを追加してパフォーマンスを維持し、アクセスが落ち着けばリソースを削減してコストを最適化する。この自動化により、人手を介さずに効率的かつ安定的なシステム運用が可能になる。

このオートスケーリングを実現するための、現代で最も広く利用されているシステムが「Kubernetes(クバネティス、K8sと略されることもある)」である。Kubernetesは、コンテナ化されたアプリケーションの配置、拡張、管理を自動化するためのオープンソースプラットフォームである。Kubernetesを理解するためには、まずその管理対象である「コンテナ」について知る必要がある。コンテナとは、アプリケーションの実行に必要なプログラムコード、ライブラリ、設定ファイルなどを一つにパッケージ化した、軽量な実行単位である。これにより、開発環境から本番環境まで、どのようなインフラ上でも同じようにアプリケーションを動作させることができ、環境差異による問題を解消する。このコンテナを作成・実行するツールとして最も有名なのが「Docker」である。

Kubernetesは、このコンテナを効率的に管理するための多彩な機能を提供する。例えば、アプリケーションを構成するコンテナを、指定した数だけ常に稼働させ続ける「デプロイメント管理」、アプリケーションのバージョンアップをダウンタイムなしで安全に行うための「ロールアウト管理」、コンテナをネットワークに公開し、他のコンテナや外部からアクセスできるようにする「サービスディスカバリー」、コンテナが停止してもデータを失わないように永続的な保存領域を割り当てる「ストレージ管理」などがある。

特にKubernetesの中核をなす強力な機能が、「ロードバランシング」と「オートスケーリング」である。ロードバランシングは、複数のコンテナにトラフィックを均等に分散させることで、特定のコンテナに負荷が集中するのを防ぎ、システム全体の安定性を高める。オートスケーリングは、CPU使用率などの負荷指標を監視し、負荷が高まれば自動的にコンテナの数を増やし(スケールアウト)、負荷が低くなれば数を減らす(スケールイン)ことで、常に最適なリソースでサービスを提供し続ける。さらに、Kubernetesには「自己修復(セルフヒーリング)」機能も備わっている。これは、稼働中のコンテナが何らかの理由で停止したり、正常に応答しなくなったりした場合、それを自動的に検知して再起動または新しいコンテナに置き換える機能であり、システムの可用性を大幅に向上させる。

Kubernetesを導入することで、これまで開発者やインフラ担当者が手作業で行っていた煩雑な運用管理タスクの多くを自動化でき、開発者は本来のアプリケーション開発に集中できるようになる。ただし、Kubernetes自体は非常に高機能で複雑なシステムであり、自前で環境を構築し、適切に運用・管理するには高度な専門知識が要求される。また、Kubernetesを機能させるには、ネットワーク、ストレージ、監視など、連携する多くの周辺技術についての理解も不可欠である。この複雑さを緩和するため、現在ではAmazon Web Services(AWS)などの主要なクラウドプロバイダーが、Kubernetesの管理を代行してくれる「マネージドKubernetesサービス」を提供しており、多くの企業がこれを活用して導入のハードルを下げている。Kubernetesは、現代のクラウドネイティブなアプリケーション開発において、高い拡張性と信頼性を実現するためのデファクトスタンダードな技術基盤となっている。

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