【ITニュース解説】Why I Bet on FastAPI Over Django (After 10 Years of Using It)
2025年09月10日に「Dev.to」が公開したITニュース「Why I Bet on FastAPI Over Django (After 10 Years of Using It)」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
Web開発で人気のPythonフレームワーク比較。長年使われたDjangoに対し、新興のFastAPIが注目されている。FastAPIは非同期処理に強く高速で、型ヒント活用による自動検証やドキュメント生成で開発効率が高い。API中心の現代的な開発で支持を集める。
ITニュース解説
Webアプリケーションを開発するためのプログラミング言語として、Pythonは世界中で広く利用されている。そのPythonを使った開発を効率的に進めるためのツールが「Webフレームワーク」であり、その中でも特に有名なのが「Django」と「FastAPI」である。長年、DjangoはPythonのWeb開発における代表的な存在であったが、近年、FastAPIが急速に人気を高めている。ここでは、10年以上にわたりDjangoを使い続けてきた開発者が、なぜ新しいプロジェクトでFastAPIを選ぶようになったのか、その理由と両者の技術的な違いを解説する。
Djangoは、2005年に登場した歴史あるフレームワークであり、「バッテリー同梱(Batteries-Included)」という思想で設計されている。これは、Webアプリケーション開発に必要とされるであろう機能、例えばユーザー認証、管理画面、データベースとの連携機能(ORM)などが、最初から全て揃っていることを意味する。これにより、開発者は複雑な設定に時間を費やすことなく、迅速に開発を始めることができる。特に、データの登録や更新、削除を行うための管理画面を自動で生成する機能は非常に強力であり、多くの開発者に支持されてきた。長年の実績に裏打ちされた安定性と豊富なドキュメント、充実したコミュニティもDjangoの大きな強みである。
一方、2018年に登場したFastAPIは、より新しく、特定の目的に特化したフレームワークだ。その名の通り、高速なAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を構築することに主眼を置いている。Djangoが大規模なWebサイト全体を構築するための万能ツールであるとすれば、FastAPIは他のシステムとデータをやり取りする「窓口」となるAPIを作るための専門ツールと言える。FastAPIは最小限の機能で構成されており、データベース操作などの機能は開発者が自分で最適なライブラリを選んで組み合わせる「選択式」のアプローチを取る。この設計により、アプリケーションの構成をより柔軟に、そして軽量に保つことができる。
FastAPIが支持される最大の理由の一つが、そのパフォーマンスと「非同期処理」へのネイティブな対応である。現代のWebサービスは、外部のAPIを呼び出したり、データベースにアクセスしたりと、処理の完了を「待つ」時間が多く発生する。このような待ち時間が発生する処理を「I/Oバウンドな処理」と呼ぶ。従来の同期的処理では、一つの処理が終わるまで次の処理に進めないため、待ち時間がシステム全体の遅延につながっていた。しかし、非同期処理では、ある処理の待ち時間中に別の処理を進めることができるため、システム全体のリソースを効率的に活用し、より多くのリクエストを同時に捌くことが可能になる。FastAPIは、この非同期処理を前提として設計されているため、非常に自然かつ効率的なコードで高性能なAPIを実装できる。Djangoも後から非同期処理に対応したが、元々の設計が同期的であったため、FastAPIほどシンプルに扱うことが難しい場面がある。
もう一つのFastAPIの画期的な特徴は、Pythonの「型ヒント」を最大限に活用している点である。型ヒントとは、コード内で変数や関数の引数がどのようなデータ型(例えば文字列、数値など)を扱うべきかを明示的に示す機能だ。FastAPIは、この型ヒントを読み取り、APIが受け取るデータが正しい形式であるかを自動で検証してくれる。もし間違った形式のデータが送られてきた場合は、エラーを自動で返却する。これにより、開発者はデータ検証のためのコードを書く手間を大幅に削減でき、ヒューマンエラーによるバグを未然に防ぐことができる。さらに、この型ヒントを基にして、APIの仕様書(ドキュメント)を自動的に生成する機能も備わっている。これは、チーム開発や、APIを外部に公開する際に非常に役立つ。対照的に、Djangoで同様のことを実現するには、手動での検証ロジックや、ドキュメント生成のための追加設定が必要となる。
これらの違いは、開発体験やコードの量にも直結する。簡単なAPIエンドポイントを一つ作る場合、FastAPIは単一のファイルに十数行のコードを書くだけで完成する。しかし、Djangoで同じことをしようとすると、モデル、シリアライザ、ビュー、URL設定など、複数のファイルにまたがって規約に沿ったコードを記述する必要があり、全体のコード量は多くなる。このシンプルさと明快さが、特にAPI開発の速度と保守性を重視する開発者にとって、FastAPIの大きな魅力となっている。
ただし、これはDjangoが劣っているという意味ではない。プロジェクトの要件によっては、今でもDjangoが最適な選択肢となる場面は多い。前述の通り、強力な管理画面が求められる社内システムやコンテンツ管理システム(CMS)などでは、Djangoの「バッテリー同梱」思想が圧倒的な開発効率をもたらす。一方で、マイクロサービスアーキテクチャのように、小さく独立したサービスを複数連携させて一つの大きなシステムを構築する場合や、機械学習モデルをAPIとして提供するような高いパフォーマンスが求められる場面では、FastAPIの軽量さと非同期処理の強みが活きる。
結論として、DjangoとFastAPIは競合する技術でありながら、それぞれに得意な領域が存在する。Djangoは安定性と豊富な機能を備えたモノリシックなWebアプリケーション構築に強みを持ち、FastAPIはパフォーマンスとモダンな開発体験を重視したAPI中心のサービス開発に適している。技術のトレンドがAPIファーストへと移行する中でFastAPIが注目を集めているが、システムエンジニアを目指す者としては、どちらか一方を絶対視するのではなく、両者の特性を深く理解し、解決すべき課題に応じて最適なツールを選択できる能力を身につけることが重要である。